当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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EUの混合物の化学式識別子および欧州製品分類システムについて

2020年09月25日更新

欧州化学物質庁(以下ECHA)は、現在危険有害性を有する混合物による緊急時の健康対応を目的とした仕組みの整備を進めています。

今回は仕組みの情報である化学式識別子(Unique Formula Identifier、以下UFI)および欧州製品分類システム(the European product categorization system、以下EuPCS)を採りあげ、その概要をご紹介します。

1.CLP規則と毒物センター

EUの化学物質および混合物の危険有害性の分類、表示および包装に関する規則であるCLP規則は2009年1月に施行されました。 その第45条第1項で「各加盟国は、特に予防措置や救済措置を策定するために、特に緊急時の健康対応が必要な事態において、混合物を上市する輸入者および川下使用者から必要な情報を受理する責任を有する単一または複数の機関を任命しなければならない。 この情報には、上市され、健康への影響または物理化学的影響に基づいて、有害性と分類された混合物の化学組成を含むものとする。」と定めています。 この目的で各加盟国で指定されている機関が毒物センター(Poison Centres:「中毒センター」と訳されている場合があります。)です1)。

そして同条第2項に定められていますが、毒物センターに提供された秘密性の高い情報は、以下の様な場合にのみ使用されます。


(1) 特に緊急の場合において予防的および治療的対策を策定するための医学的要求に対応する場合。

(2) リスク管理手段の更なる改善の必要性の可能性確認のため、統計的解析を行うことを目的として加盟国から要求のあった場合。

2.毒物センターへ提供義務のある情報

CLP規則は2017年3月に改正され、附属書Ⅷが追加されました(COMMISSION REGULATION、(EU) 2017/542 of 22 March 2017 )2)。附属書Ⅷでは第45条で要求されている緊急時の健康対応に関する情報の提供と内容の詳細を定めるものです。

加盟国毎に設置された毒物センターに提供される混合物に関する情報は、その内容にはばらつきがあるため、医師等により他国の情報を利用する必要のある場合にはそれが統一した基準に基づいていること(これを「調和化された情報」といいます)が必要であることがその背景にあります。

附属書ⅧはA,BおよびCの3つのPartより構成されています。提出すべき情報はPart Bに具体的に定められていますが、その概要は以下の通りです:


(1) 混合物のUFI

(2) 提出者に関する情報:名称、住所、電話番号、メールアドレス

(3) 混合物のCLP規則やREACH規則に則った危険有害性情報

(4) 追加情報:混合物のEuCPS、上市における包装のタイプとサイズ、色と物理的状態、pH(該当する場合)、用途(消費者向け、専門家向け、工業向け、あるいはこれらの組合せ)

(5) 混合成分に関する情報

以下UFIおよびEuCPSについて説明します。

3.UFIの概要

UFIは混合物あるいは混合物群に対し、一意的に割り当てられる4文字毎にハイフンで区切られた計16文字の大文字アルファベットおよび英数字より成る識別子です。


これは情報提供者がECHAの専用サイト(UFI Generator 3))にアクセスし、VAT番号(Value Added Tax, 企業が政府に登録している付加価値税の登録番号。)および製剤番号(formulation number、0~268,435,455の範囲内の整数より設定)を入力することにより取得します。この両者を反映したUFIにより特定企業の特定混合物が一意的に指定されることになります。詳細な手順はUFI Generatorのユーザー用ガイドに解説されています。4)

取得したUFIは毒物センターに提出すると共に、CLP規則で規定されているラベルに表示せねばなりません。

混合物の成分濃度は正確なパーセンテージでなく数値範囲での届出が許容されています(附属書Ⅷ,Part B,section3.4,Table1)。 その範囲を超えて濃度を変更した場合、また新たな添加剤や代替成分の使用、一部の成分の使用停止等の場合には、新たなUFIを取得し、毒物センターへ届出なければなりません。   

4.EuPCSの概要

EuPCSは、CLP規則附属書Ⅷ Part A のsection 3.4「混合物の使用目的は、ECHAが提供する調和のとれた製品分類システムに従って記述されるものとする。」との規定をその法的根拠とします。すなわちEuPCSの目的は、混合物の「意図された用途」(intended use)を共通の基準で表示することです。REACH規則の物質の登録の用途分類に対応して、EuPCSのコードは整備されています。


2018年3月にver.1.0が公表されました。その後マイナーな改正がありましたが、今回ver.2.0への更新が公表されました5)。同時にその詳細を解説した実用ガイド(The European product categorization system:A practical guide July 2020)が公表されました6)。

EuPCSでは、混合物の意図された用途を以下の5水準の階層構造を組み合わせたコードによってその混合物の属するカテゴリーを表します。

1) 第1レベル:混合物が最終用途向けであればP(ProductのP)、更なる調合に供されるためのものであればF(FormulationのF)で表示します。

ここで最終用途向け(P)とは、使用後は成形品中に含まれる、または使用時(中間段階での使用を含む)に反応してプロセス中に消費される場合を意味します。 また更なる調合に供される(F)とは、上市のための混合物を製造するための特定の活動に使用されることを意味します。 供された混合物は調合の過程で移動され、他の混合物と混合されたりします。

なお第1レベルでFに分類された混合物は第2レベル以降の分類は行いません。


2) 第2レベル:第1レベルがPの場合、一般的化学製品はCとします。混合物が殺生物製品規則(Biocidal Products Regulation (EU)528/2012)または植物保護製品規則(Plant Protection Product Regulation (EC) 1107/2009)において規制対象とされる場合には第1レベルを含めてPPとします7), 8)。


3) 第3レベル:アルファベット3文字で主要な特定製品のカテゴリーを示します。現在18種が規定されていますが、このうちUNCはChemical products-uncategorizedを意味し、他の17種に該当しない場合にはこれに分類します。


またPPの場合には、BIO(殺菌性製品)およびPRD(植物保護製品)の2種です。


4) 第4および第5レベル:第3レベルの分類を更に細分化するもので、基本的には数字を附番しますが、これらのどれにも該当しない場合にはその他を意味するOTHを表示します。

第1レベルがFでない、すなわち第2レベルまでがPCまたはPPに分類される混合物は必ず第3レベルまでのコードを有します。一方、第4及び5レベルについては、現時点ではカテゴリーによっては設定されていないものもあります。


以上の様な基準に従い、例えばPC-CLN-10.4というコードは、最終用途向けで殺菌性製品あるいは植物保護製品以外の一般化学製品(PC)のうち、クリーニング、補修およびメンテナンス用製品(CLN)、その中の台所およびその関連の清掃用製品(10)でオーブン、グリルおよびバーベキュー用清掃剤(4)に分類されることを示しています。


混合物に関する情報提供者は、その意図された用途を、上記に基づいて規定されたコードの中から選択します。 但し選択できるコードは設定されている最も細かいレベルのものを選択することが要求されています。 例えば上記例ではPC-CLNやPC-CLN-10といった選択はできません。 今回公表されたver.2.0では、第1レベルのFを含め、計209通りが選択可能なコードとなっています。

混合物によっては意図された用途が複数に渡る場合もあります。 この場合には最も主要と考えられる用途に対応するカテゴリーのコードを1つ選択し、他は副次的用途とします。 これは意図された用途のうちの1つがFである場合や第3レベルまでは同一で複数の第4あるいは第5レベルに渡る様な場合でも同様です。


また意図された用途の1つが第2レベルまでがPPである場合には、主要用途としてはPPの方を選択します。

おわりに

EuPCSは、法改正や産業界のニーズ、EU加盟国の毒物センターや指定機関の要求を反映したものであるべきであり、このためには望ましい、或いは必要な変更はなされていくべきであるとしています6)。 今回公表されたver.2.0でも一部のカテゴリーの分割、統合や新たなカテゴリーの追加がなされました。


混合物は多種多様であり、今後共新たな用途のものが開発、上市されるに従い、更なる更新の必要が出てくることは当然予想されます。

その場合にはECHAのウエブサイト上において指定の様式によって更新の申し入れが可能です。提出された申し入れ内容は、EU加盟各国の毒物センター、指定機関、EuPCSのシステム開発に関与する業界の協会より構成されたグループ(EuPCS focus group)によるコンサルテーションおよび同意を経て採択、施行されます。


なおEuPCSの更新の申し入れをする場合には、予めその混合物の関連業界の協会と相談することが勧められています6)。

2020年1月にCLP規則附属書VIIIに関連する事項を改正する委員会委任規則((EU)2020/11)が官報公示されました9)。 これにより附属書Ⅷの混合物への適用は、今後変更の無い限り、2021年1月1日に消費者向け用途及び専門家向け用途に対して、2024年1月1日に工業向け用途に対して行われることが確定しました。従って各関係者はUFIの取得やEuPCSに基づく分類を含め、このための諸段取りを進める必要があります。

(福井 徹)

1)

https://poisoncentres.echa.europa.eu/appointed-bodies

2) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:32017R0542

3) https://ufi.echa.europa.eu/#/create

4) https://poisoncentres.echa.europa.eu/documents/22284544/22295820/ufi_user_guide_en.pdf/71d273a7-0bae-4a46-96bc-639e8fd23b0e

5) https://poisoncentres.echa.europa.eu/-/changes-in-product-categorisation-for-notifying-poison-centres

6) https://poisoncentres.echa.europa.eu/documents/22284544/22295820/eupcs_support_manual_en.pdf/273a4f57-cbb7-913d-4c99-2e76f784cbb6

7) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1599663087378&uri=CELEX:02012R0528-20191120

8) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?qid=1599663278956&uri=CELEX:02009R1107-20191214

9) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:32020R0011

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