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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

米国TSCAに基づくPFASの報告および記録管理規則

2023年11月24日更新

米国環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)は、2023年10月11日に、有害物質規制法( Toxic Substances Control Act :TSCA)第8条(a)(7)に基づく1)「ペルフルオロアルキル及びポリフルオルアルキル物質に関する報告と記録保管要件規則(Reporting and recordkeeping requirements for Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) )」(本規則)2)を公示し、2023年11月13日から適用することを発表しました。3)


1.本規則の概要

1.1.本規則制定の背景

本規則は、TSCA第8条(a)(7)(第8条(a)(7))に基づいて細則を規定したものです。

第8条(a)(7)では、PFAS類に関して「2023年1月1日までに、EPA長官は、2011年1月1日以降のいずれかの年にPFAS類を製造した者に対し、2011年1月1日以降の各年について、第(2)項第(A)号から第(G)号に記載された情報を含む報告書をEPA長官に提出することを義務付ける規則を本項に従って公布しなければならない。」と規定されています。

これに基づきEPAは、2021年6月に原案を作成・公開(Notice of Proposed Rulemaking:NPRM)4)し、2022年11月25日から同年12月27日までの間でパブリックコメント5)を得て一部修正後に本規則を制定公示しました。


その間に、2022年4月には中小企業支援検討会パネル(Small Business Advocacy Review Panel:SBAR)6)を実施し、中小企業庁(Small Business Administration :SBA)や中小企業業界団体等の助言と提言を取り入れてきました。

また、2022年11月にはパブリックコメントのための初期規制柔軟性分析及び経済分析(Initial Regulatory Flexibility Analysis and Updated Economic Analysis:IRFA)7)を発表しています。


EPAは本規則のその他の目的として、米国内で製造されたPFAS類の供給源と数量をEPAがより適切に把握し、今後の研究と管理に役立てることを挙げています。


1.2.概要

対象は、前項のとおり2011年1月1日以降にPFAS類、その混合物、および成形品を製造(輸入を含む)したすべての事業者(小規模事業体を含む)で、企業情報とPFAS類の物質名、用途、生産(輸入)量、副産物情報、環境・健康リスク、職場におけるばく露情報、及び廃棄方法などを、電子的に報告する必要があります。

対象事業者は、本規則発効日から18カ月以内に報告することが求められています。

成形品の輸入のみである小規模製造業者(40 CFR 704.3で定義)は、24カ月以内に報告することが義務づけられています。


2.内容詳細

本規則は,以下の12章で構成されています。

第1章(705.1)適用範囲、コンプライアンス、執行

第2章(705.3)定義

第3章(705.5)報告が必要な物質

第4章(705.10)報告を要する者

第5章(705.12)報告を要しない活動

第6章(705.15)報告する情報

第7章(705.18)成形品の輸入者及び研究開発用物質の報告オプション

第8章(705.20)報告時期

第9章(705.22)重複する報告

第10章(705.25)記録保存要件

第11章(705.30)秘密保持の主張

第12章(705.35)電子的報告


2.1.適用範囲(第1章)(第4章)(第5章)

2011年1月1日から2023年11月13日より前の最後の暦年の終わり(2022年12月31日)までのいずれかの期間に第2章で定義されたすべてのPFAS及びPFAS混合物(成形品を含む)を商業目的(テストマーケティング、研究開発目的、及び中間体としての使用を含む)で製造(輸入も含む)した事業者が対象です。

ただし、第5章で示された、廃棄物の処分又は滅却を目的とした都市固形廃棄物(municipal solid wastes :MSW)の流れに伴う輸入や、連邦政府機関による商業的利益のためではない輸入は対象外です。


2.2.報告が必要な物質(第3章)

報告が必要な物質は第2章で定義されており、次の3つの部分構造の少なくとも 1 つを構造的に含む化学物質または化学物質を含む混合物を意味します。


(1) R-(CF 2 )-CF(R')R'' (CF 2 部分とCF部分は両方とも飽和炭素)

(2) R-CF2 OCF2-R’ (RおよびR’は、F、O、または飽和炭素のいずれか)

(3) CF 3 C(CF 3 )R'R''(R'およびR''は、Fまたは飽和炭素のいずれか)


EPAはこの定義に基づく既知の物質として、インベントリ及び少量免除(Low-Volume Exemption:LVE)届出物質から1,462種の物質を特定しています。


2.3.報告する情報(第6章)(第7章)(第12章)

一回限りの報告の場合、報告者は、対象化学物質毎に取り扱っている各事業所について、把握している範囲又は合理的に把握可能な範囲で、以下の項目の報告を求められています。提出者が実データを知らないか合理的に把握できない場合には、合理的な推定値を提出することができます。

また、第7章で成形品の輸入者及び研究開発用物質(年間10Kg以下)の報告オプションとして、簡易的な報告オプションが用意されています。

なお、すべての報告はEPAの集中電子提出受付システム(Central Data Exchange:CDX)を使って行う必要があります。

報告項目

(a) 会社および工場のサイト情報

報告対象の化学物質が製造されるサイトごとに報告する必要があります。

(b) 化学物質固有の情報

2011 年 1 月 1 日以降毎年製造されたPFAS である化学物質(混合物を含む)ごとに報告する必要があります。

(1)報告が必要な各 PFAS の一般名または商品名、化学的同一性、および TSCA インベントリ (インベントリ) 上のクラス1物質である化学物質を除く、代表的な分子構造、ケミカル アブストラクト (CA) インデックス名、ケミカルアブストラクトサービス登録番号 (CASRN)、TSCA アクセッション番号、少量免除 (LVE) ケース番号等に報告する番号種類を指定するコードを付けて報告

(2) 各サイトから外に搬出される場合の物理的形態を、リストされている物理的形式の中から該当する数の物理的形式を報告(乾燥粉末、ペレット、湿った固体、その他の固体、ガス又は蒸気、液体)

(c) 用途カテゴリー

(1) 工業的加工および使用に関する情報

提出者サイトから直接的または間接的に PFASを受け取る各サイトでの産業加工または使用操作のタイプを示すコードを報告

(2) 対応するセクターコード

(3) 対応する機能カテゴリーコード

(4) 消費者及び商業利用に関する情報

消費者製品および商業製品のカテゴリーコードを報告

(5) 各商用製品および消費者製品に適用されるコード

(6) 商用又は消費者向け製品かの分類

(7) 消費者製品のカテゴリー

化学物質が子供による使用を目的とした消費者製品の内部または表面に使用されているか否か、又は不明かを報告

(8) PFASの濃度

各消費者製品および商業製品カテゴリーに含まれる代表的最大重量濃度の推定値をコードで報告

(d) 製造量

(e) 副産物の報告

(f) 環境及び健康への影響

(g) 労働者へのばく露データ

(h) 廃棄データ


2.4.報告時期(第8章)

一般の報告対象者及び研究開発用用途の対象者は、本規則発効日の1年後である2024年11月12日から2025年5月8日までの 6 か月間に報告する必要があります。

成形品の輸入者及び小規模製造業者は、2024年11月12日から2025年11月10日までの12 か月間に報告する必要があります。


2.5.記録保存要件(第10章)

EPA に報告された情報を文書化した記録及び関連する記録は、提出期間の最終日から 5年間保存する必要があります。


3.まとめ

本規則の特徴として、対象とするPFAS類の定義を明確にしたことが挙げられます。EPAは、この定義に当てはまる既存化学物質としてインベントリ及びLVEから1,462種の物質を特定していますが、今後この数は増えていくことになります。このような網羅的な対象物質の定義は、EU/REACHで行われているグループ評価と繋がる考え方で、有害物質の代替品出現との「イタチゴッコ」を防ぐ効果的な管理方法と考えられます。

もう一つの特徴として、研究開発目的や小規模事業者にも報告義務を負わせ、不明点に関しては合理的な推測結果(又は不明)を報告することを認めていることがあります。これはEPAがPFAS類に関する市場での広がりを充分に把握できていない現状から、短時間でキャッチアップをしようとする意欲的な取り組みと考えられます。

このような取り組みは、今後世界各国の有害物質管理に取り入れられていくものと思われますが、事業者にとっては一層自己責任に委ねられることにもなります。


(杉浦 順)



参考文献:

1) TSCA


2)本規則


3) 本規則の公示


4)  Notice of Proposed Rulemaking:NPRM


5)  パブリックコメント募集


6)  Small Business Advocacy Review Panel:SBAR


7)Initial Regulatory Flexibility Analysis and Updated Economic Analysis:IRFA

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