当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q560.フタル酸エステルの移行

2019年6月28日更新


【質問】

フタル酸エステルの移行のリスク管理をどこまで行えばいいのかを教えてください。 インドのニューデリー工場で加工部品を購入していますが輸送で利用する段ボールや治工具なども現地で調達しており、これらからの移行が心配です。

【回答】

RoHSⅡ指令により、2019年7月22日より新たに使用制限の対象となる4種のフタル酸エステル類は、従来の規制物質と異なり、梱包材や治工具からの接触による移行が懸念され、原材料のみならず、製造工程や、輸送・保管中の移行管理も必要になります。 一律に関連部材の含有量管理を行えば、製品への汚染、移行を完全に抑えることができますが、調達先への負担増やコスト増を招く可能性があります。 各部材のリスクの大きさを調査し、リスクが大きい場合についてのみ対策を検討するというのが合理的です。 その場合、実際の使用状況に応じたリスク判断が必要となります。対策検討判断に必要な情報が参考文献1に報告されています。要点を以下にまとめました。

(リスクが低く対象外あるいは対策保留とするもの)


リスクが低く対象外として良いもの、条件付きで追加的な対策を保留すると判断できるケースについてまとめました。

① 無機物

フタル酸エステルは樹脂の可塑剤として用いられますが、金属や無機物へは浸透・拡散しません。 したがって、移行元、移行先のいずれかが無機物の場合は対象外と考えられます。

② 段ボール

参考文献1には明示されていませんが、参考文献2に示される段ボール製造工程によると、段ボールそのものについては、フタル酸エステル類が高濃度に含有する可能性が低く、段ボールからの移行によるリスクも低いものと想定されます。 ただし、接着剤、印刷インキ等は含有の可能性があり、それらの部位に製品が密着しないことを確認する必要があります。

③ ゴム類

移行元がゴムの場合、可塑剤の添加量が少ないのでゴム製の治工具や搬送ベルトとの接触による移行は対策保留としてよいと考えられます。

④ 開放空間での非接触物

フタル酸エステル類の非接触による移行は相当に小さく無視できるものと考えられます。フタル酸エステル類は揮発性が低く、移行元から滲出したものが全て揮散するわけではないからです。 参考文献1に示された実験では、密閉した空間で樹脂シートへの移行が0.1wt%に到達するのは室温で40日を要しています。 開放空間であれば汚染経路として無視できるほど小さいと考えられることから、対象外としてよいと考えられます。

⑤ 移行先の形状、接触面積

フタル酸エステル類の移行は接触面からの拡散により進行し、また均質材料中の濃度として規制されますので、接触面積が大きいほど、移行先の体積が小さいほど濃度は高くなります。 参考文献1では参考文献3のデータを元に厚さの違いによる移行量の時間依存性を試算しています。 その結果、製造時、厚み0.5mmを超える成形品、輸送時2mmを超える成形品については対策保留とする管理の例が示されています。

(移行に影響を与える因子と管理対象の決定)

上記のいずれにも該当しない場合および、上記のうち対策保留としたものについては、実際の使用状況を考慮してリスク判断します。 移行を加速する因子として、接触時間、温度、圧力、摩擦、アルコールや油脂の存在があります。

ご質問のインド工場では輸送時にはかなりの高温になることが予想されます。 参考文献1では、参考文献3のデータを元に揮散量の温度依存性を示していますが、23℃を1としたとき47℃で42倍、55℃で101倍、61℃で220倍となっています。 揮散量がそのまま移行するわけではありませんが、温度依存性の目安になります。 例えば上述した成形品厚みの例では、根拠となる試算では25℃と仮定していますので、実際の温度でどのくらいの時間接触するかを考慮し、さらに圧力や摩擦、アルコールや油脂の影響なども考慮に入れてリスクを判断してください。


(対策例)

リスクが大きいと判断された部材については、現在の調達部材中の該当物質濃度がリスクのないレベルかどうか、そのレベルに維持できるかを確認します。 出来ない場合は代替品への置き換え、あるいは、接触時間や圧力・温度を引き下げる、直接の接触を防止するなどの運用方法の変更により、移行量がRoHS指令の閾値である0.1wt%を超えないよう管理することが必要となります。


(参考文献)

(1) 接触による移行汚染管理ガイダンス-RoHS指令対象フタル酸エステル対応の着眼点- アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)

(2) 製品含有化学物質の管理及び情報伝達・開示に関するガイダンス 輸送包装(第3版) JAMP

(3) 塩化ビニル樹脂における高分子系可塑剤の効率(第1報)

(4) Influence of Temperature on the Emission of Di-(2-ethylhexyl)phthalate (DEHP) from PVC Flooring in the Emission Cell FLEC

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