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Q588.RoHS(II)指令分析データ提出の代替手段について
2020年11月27日更新
【質問】
当社は電気電子機器を製造業者です。 弊社製品への含有制限物質 (RoHS) 非含有証明のため、取引先より分析データ提出を要望されるのですが、どこまで対応するべきなのか、アドバイスを頂ければと思います。
【回答】
製品およびその部品がRoHS(II)指令の特定有害化学物質を含有していないことを製品の製造者の分析によって証明することは現実的ではなく整合規格(1)(EN50581:2012(2021年11月18日に撤回予定)、EN IEC 63000:2018(2020年5月15日発効))の序文でも以下のように記されています。
「均質材料のレベルで適用される制限に関して、複雑な製品の製造者にとっては、最終組立製品に含まれるすべての材料について独自の試験を実施することは非現実的である。代替手段として、製造者は適合遵守を管理するために、サプライヤーと連携し適業順守の証拠として技術文書を作成する。このアプローチは、業界と執行当局の両方で認識されている。」
この整合規格では、製品がRoHS(II)指令に適合していることを示す技術文書として以下が示されており、これらの技術文書の中で何を採用するかは特定有害化学物質含有の可能性とサプライヤーの信頼性格付けを掛け合わせたリスクの大小により自社の責任で判断できます。 しかし、貴社の取引先は3.以外についての信憑性に疑義を持ち、より直接的である分析試験結果を求めている可能性があります。
1.サプライヤーによる自己宣言および、または契約上の合意
2.材料宣言
3.分析試験結果
対応としては、取引先の理解を得るべく、1.、2.の技術文書を採用している部品・材料について、貴社がそれらの技術文書で問題ないと判断した理由を丁寧に説明することをお勧めします。 具体的には匿名で構わないので、部品・材料毎のサプライヤー信頼性格付けリストを示し、信頼できるサプライヤーからの調達であることを説明します。 また、部品・材料毎の対象物質の含有リスクを示し、サプライヤーの信頼性との掛け合わせで分析の必要がないことを説明します。
サプライヤーの信頼性格付けは、整合規格では「サプライヤーの過去の経験」や「サプライヤーの出荷試験や検査の結果」から評価するとしています。 この評価は製造者が行う必要があり、ISO9001などの品質マネジメントシステムの一つとして社内手順に従って行われているはずです。 手順としては、取引開始にあたっての、取引契約書、図面や要求仕様書に特定有害化学物質の非含有の要求の明記、適用除外がある場合の明記、取引開始時及びその後の評価では、「調達する部品や材料の特定有害化学物質の含有の可能性」評価などで、こうした手順も取引先に開示することにより取引先の疑念を払拭することが出来るかも知れません。
その上で取引先が納得できない部品・材料が残る場合、それらに絞ってサプライヤーに分析データを要求します。 すでに社内的に試験データを持っている可能性もありますし、要求に応じて試験してくれる可能性もあります。 それでも取引先の分析データが集まらない部品・材料について自社での分析を検討するのが良いでしょう。
RoHS施行ガイダンス(2)では、技術文書整備のフローチャートとして1及び2による適合証明を進め、それで不足なところを自社の分析試験によること、また分析のサンプリングは高懸念材料や用途(歴史的に特定有害物質が使用されてきた用途)にポイントを置くこと等の考え方が示されています。 これも参考にしていただくと良いでしょう。
(参考リンク)