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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q600.EU消費者保護法における製品へのマーキング対応について

【質問】

低電圧・EMCのCEマーキングを製品本体に表示するのが困難なため別途記載した紙を製品に同梱しております。 取引先からEUの消費者保護法で、輸入者の製品本体への表示が義務付けられていると言われました。 どのように対応すべきか教えてください。

 

【回答】

EUにおける消費者向け製品の基本法として、一般製品安全性指令(General Product Safety Directive)(Directive 2001/95/EC)(以下「GPSD」)があります。GPSDはEU市場に出される製品の安全性の確保を目的とし、生産者にEU市場に安全な製品を出すことを義務付けています。 生産者とは、製品の製造者(製造者がEU域内で設立されている場合)、製造者の代理人または輸入者(製造者がEU域内に設立されていない場合)、または製品の安全性に影響を及ぼすサプライチェーンにおけるその他の専門家であると第2条(e)において定められています。 また、第8条では、各加盟国の関係当局が必要に応じて製品の安全性の確保のための措置(例えば、使用または消費の最終段階までの安全性に関する適切な検査の実施、リスクのある製品に関しては製品が販売される加盟国の公用語による適切かつ明確な表現での理解しやすい警告の表示など)を講じることができると定めています。


次に、2008年に採択された新しい法的枠組み(New Legislation Framework)(以下「NLF」)があります。 NLFは、EU市場を改善し、幅広い製品のEU市場への上市の条件を強化することにより、市場監視を向上させ適合性評価の質を高めることが目的です。 NLFの枠組みにおけるCEマーキングを規定している法令として、一般的な原則および使用について規定しているRegulation (EC) No 765/2008と、CEマーキングの表示に関する詳細なルールを規定しているDecision No 768/2008/ECがあります。 Decision No. 768/2008/ECのR12条「CEマーキングを表示するためのルールと条件」の1項には、CEマーキング表示について以下の規定があります。


“The CE marking shall be affixed visibly, legibly and indelibly to the product or to its data plate. Where that is not possible or not warranted on account of the nature of the product, it shall be affixed to the packaging and to the accompanying documents, where the legislation concerned provides for such documents.”


【日本語訳(参考)】 CEマーキングは、製品またはそのデータプレートに、目に見え、読みやすく、かつ、消えないように表示しなければならない。 それが不可能な場合、あるいは製品の性質上それが保証されない場合にはパッケージ(包装)に、そして、関係法令で付属文書が定められている場合にはその付属文書にも表示しなければならない。


さらに、EUの製品ルールの実施のための手引書とされているブルーガイド(The ‘Blue Guide’ on the implementation of EU products rules 2016)にも、CEマーキングの表示について詳しく説明されています。 例えば、製品がある種の爆発物である場合やCEマーキングに定められている最小の寸法以上の大きさで表示できない場合など、合理的な理由でCEマーキングの製品本体への表示が不可能な場合の説明があります。


“In such cases, the CE marking can be affixed to the packaging, if it exists, and/or to the accompanying document, where the Union harmonisation legislation concerned provides for such documents. The CE marking on the product may neither be omitted nor be moved to the packaging or accompanying documents on purely aesthetic grounds.”


【日本語訳(参考)】 そのような(本体への表示が不可能な)場合には、パッケージ(包装)がある場合はそのパッケージ(包装)に、および/または、関連するEU整合法令で附属文書が定められている場合はその文書に、CEマーキングを表示することができる。 製品に表示されているCEマーキングを、単なる美観上の理由で、省略したり、パッケージ(包装)または付属文書に移動したりしてはならない。


結論としては、製品本体へのCEマーキングの表示がどうしても難しい場合には、製品が包装されている場合はそのパッケージ(包装)にCEマーキングを表示することが認められています。 パッケージ(包装)への表示に加え、関連法令が定める附属文書にCEマーキングを表示することも認められています。 そして、製品が包装されていない場合には、関連法令が定める付属文書にのみCEマーキングを表示することが認められると解釈できます。


今回のご質問では、CEマーキングの本体への表示が困難なため、別途記載した紙を製品に同梱されているということですが、製品本体への表示がどうしても難しいこととその理由を取引先に説明された上で、CEマーキングを製品パッケージ(包装)に表示すること、製品パッケージ(包装)がない場合は付属文書に、目に見え読みやすく消えにくいような形で表示させることを提案されたらいかがでしょうか。


また、取引先より「輸入者の製品本体への表示が義務付けられている」と指摘されたということですが、ご参考までに、どの事業者がCEマーキングを表示しなければならないかという点に関してブルーガイドには以下の解説があります。


・EU域内域外を問わず、製品が整合法令に適合していること、およびCEマーキングを表示することに関しては製造者が最終的な責任を負う主体です。 ただし、製造者はCEマーキングを表示する権限を有する代理人を任命することもできます。


・輸入業者、販売業者、その他の事業者が、自らの名前や商標で製品を市場に出したり、製品を改変したりする場合は、その事業者がCEマーキングを引き継ぐことになります。 改造した場合は、製造者の責任を引き継ぐことになります。 これには、製品の適合性に関する責任、およびCEマークの表示に関する責任も含まれます。


つまり、製品の改変などが輸入者により行われない場合は、CEマーキング表示の責任の主体は輸入者ではなく製造者にあります。


(引用)


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