当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • tkk-lab

フタル酸エステル類を対象とした初めての適用除外用途案

2019年7月5日更新


RoHS指令に関する大きなマイルストーンである2019年7月22日が迫ってきました。 同日からはカテゴリー11の「その他の電気電子機器」にRoHS指令が適用されるとともに、4種のフタル酸エステル類の含有制限が開始されます。


フタル酸エステル類については、2015年に制限対象物質に追加することが決定された当時はフタル酸エステル類を対象とした適用除外用途が新たに設定されるか否かについて、ご質問を頂くことが多くありました。 4種のフタル酸エステル類は認可対象物質であり、また日没日(2015年2月21日)も経過しているため、EU域内では認可を受けていなければフタル酸エステル類そのものおよびそれらを含む混合物の使用や上市は禁止されている状況です。 そのため、フタル酸エステル類の適用除外用途は、EU域外からの輸入成形品のみを対象としたものとなり、このような適用除外用途が認められるとは考えづらい状況でした。


しかしながら、2019年4月にWTOに通知されたRoHS指令附属書III改正案では、4種のフタル酸エステル類の1つであるDEHPを対象とした適用除外用途を新設する内容が含まれています。


今回は、初めてのフタル酸エステル類の適用除外用途案をご紹介します。


1. DEHPの適用除外用途の検討経緯

公表された法案のきっかけは、2017年6月に欧州内燃機関製造協会(EUROMOT)の申請によるものです。 EUROMOTの申請では「消費者向け用途のみを意図していない機器で使用される排気装置やターボチャージャー等のエンジンシステムで使用されるOリングやシール、振動ダンパー、ガスケット、ホース、グロメット、キャッププラグなどのゴム部品中のDEHP」が適用除外用途として申請されていました。


適用除外用途は、RoHS指令の第5条1項(a)で定められているとおり、REACH規則による健康や環境の保護を弱めることなく、次の3つの基準のいずれかに合致する場合にのみ認められます。


① 設計変更等による排除や、代替が科学的、技術的に実行不可能である

② 代替品の信頼性が確実でない

③ 代替品に起因する総合的な環境、健康および消費者安全の負の影響がそれらの総合的な環境、健康および消費者安全の便益を上回る可能性がある


そのため、2017年9月に欧州委員会の委託を受けた調査会社によって、これらの条件に合致するか否かの調査が開始され、2018年10月に最終報告書[1]が公表されていました。


最終報告書では、エンジン中のゴム部品の適用除外用途について、次のような状況が示されています。


(i) REACH規則の認可対象物質で日没日も経過しており、提案用途に合致する認可申請もないことからEUのゴムメーカーは対応済と思われるが、提案用途のゴム部品は全てEU域外からゴムシート等の成形品として輸入している状況である

(ii) DEHPの代替となる可塑剤は入手可能な状況ではあるものの、長寿命や燃料・潤滑油・冷却材等の接触、温度や振動等への耐性といった用途固有の特性に対して十分なレベルの信頼性が保証できていない


これらの状況を踏まえ、最終報告書は、上記(i)のような状況であり、REACH規則に整合し、健康や環境の保護を弱めるものではないこと、また上記(ii)から、基準②に該当するものと判断し、一部適用除外用途の範囲等を限定した上で、適用除外用途とすることが妥当であると結論付けていました。


その後、2018年10月に専門家会議で最終報告書の結論が合意されました。


2. 提案されているDEHPの適用除外用途

提案されたRoHS指令附属書IIIの改正案[2]では、附属書IIIのエントリー43として新たに次の適用除外用途を追加する内容となっています。 ただし、この適用除外用途はカテゴリー11の「その他の電気電子製品」のみが使用可能であり、有効期限は2024年7月21日までとなっています。


<附属書III エントリー43>

「消費者向け用途のみおよび可塑化された材料が人の粘膜に接触したり、皮膚に長時間接触することを意図していない機器で使用されるエンジンシステムで用いられるゴム部品中に含まれ次の含有量を超過しないDEHP

(a) ゴム中の含有量が30wt%以下

(i) ガスケットコーティング

(ii) ソリッドゴム製ガスケット

(iii) エンジンに取り付けられ、3種以上の部品で組み立てられた、電気・機械・油圧で動作する部品に含まれるゴム部品

(b) 上記(a)以外でゴム中の含有量が10wt%以下

なお、ここで言う「皮膚への長時間接触」は1日当たり10分を超える継続接触、または30分を超える断続的な接触を意味する。」


このWTOへの通知に対して、6月25日まで意見募集が実施され、欧州委員会は2019年7月頃に採択する予定であることが示されており、近々フタル酸エステル類に関する初めての適用除外用途が追加されるものと思われます。


なお、現在進行中の調査プロジェクト(パック17)では、医療機器中の特定用途を対象としたDEHPおよびBBPに関する3種の適用除外用途も検討されています。


(井上 晋一)

[1] 最終報告書(パック14)

https://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/reports/RoHS_Pack-14_final_report_amended_20190305.pdf


[2] DEHPの適用除外用途に関するRoHS指令附属書III改正案

http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/nview.cfm?p=EU_652_EN

1,354回の閲覧

© 2011-2019  一般社団法人東京環境経営研究所

  • Facebook - White Circle
  • YouTube - White Circle
  • アマゾン - ホワイト丸