当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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順法説明としての技術文書(Technical Documentation)のための規格

2019年4月19日更新

1. ニューアプローチ指令とは

 EU RoHS(II)指令はニューアプローチ指令(群)の一つです。ニューアプローチ指令の運用手順は、2003年11月10日のEU委員会の「ニューアプローチ指令の実施の強化」*1を受けて、2008年8月13日のOJ(Official Journal of the European Union)L218*2にCEマーキングの基本となる規則765/2008/EC(製品のマーケティングに関する認定および市場監視の要件)及び決定 768/2008/EC(製品のマーケティングのための共通の枠組み)が告示されました。NLF(New Legislative Framework)といわれる新法令の枠組みです。


 ニューアプローチ指令の基本的な考え方は、「The Blue Guide 2016」*3 1.1.3項で次のように説明しています。


(1)法的整合化は、EU内の自由な移動による利益を受ける場合には、EUに上市する製品が満たさなければならない必須要件(好ましくは性能又は機能的要件)に制限されるべきである。

(2)法律に定められた必須要件を満たす製品の技術的仕様は、法律に沿って適用されることができる整合規格に定められるべきである。

(3)整合規格に準拠して製造された製品は、適用される法律の対応する必須要件に準拠すると推定されることから利益を受け、場合によっては、製造業者は、簡略化された適合性評価手順 (多くの場合、製造業者の適合性宣言は、製造業者責任法の存在により公的機関により容易に受け入れられるようにされる) から利益を受けることができる。

(4) 整合規格又は他の規格の適用は、依然として自主的であり、製造業者は、他の技術的仕様を要求に合致するように常に適用することができる。


しかし、第三者適合性評価機関が関与する手続きにより、これらの技術仕様が必須要件の要求に応えることを証明するという負担を負うことが多い。


 決定 768/2008/ECは適合宣言を「モジュール」により行うことを求めています。

 適合宣言は、「The Blue Guide 2016」5.1.5項では、

「製品の見本または設計の適合性の調査」

「製造された製品の認可のされた見本への適合性の確認」

の2段階で行われます。


 前段がモジュールBとなります。後段はモジュールC、D、E、Fから選択されます。


 製造者がすべてのチェックを実施して、製品の適合性を確保することが十分できる場合は、立法者はモジュールAが選択されます。モジュールAは、製品が複雑でなく(単純な設計及び生産メカニズム)ことと、公衆の利益に対するリスクが低い場合に可能とされて

います。

 適合宣言はモジュールBが基本であることは認識しておくことが重要です。


 モジュールによる適合性確認は、第三者認証機関(Notified Body NB)が関与するモジュールと不要なモジュールがありますが、「設計と製造プロセスに関する詳細な知識を持っている製造者は、完全な適合性評価手順を実行するのに最適」ということを踏まえています。


2. EU RoHS(II)指令(2011/65/EU)の要求

 EU RoHS(II)指令の必須要件は、第4条「特定有害物質の非含有」と第7条「製造者の義務」です。

 整合規格としてEN50581:2012が告示*4されました。

モジュールはAが指定されています。

しかし、EUに製品を上市するには、EU RoHS(II)指令の必須要件を満たすだけでは不足です。


決定 768/2008/ECの第1条で「EU市場に上市する製品は、適用されるすべての法律を満たさなくてはならない」としています。「The Blue Guide 2016」では、ニューアプローチ指令の対象は27指令としています。


規則 765/2008/ECの前文第6文節で「一般製品の安全性に関する欧州議会および理事会の指令 (General Product Safety Directive :GPSD 2001/95 / EC 2001年12月3日)は、消費者製品の安全性を確保するための規則を定めている。市場監視当局は、その指令の下で利用可能なより具体的な措置を講じる可能性を持つべきである。」としています。


すべての製品はGPSDを基本とし、ニューアプローチ指令が上乗せされることになります。GPSDの目標は「上市する製品が安全であることを保証する」ことです。


「安全な商品」とは、「 耐用年数を含めて、通常の状態又は合理的に予測可能な使用条件で使用した場合、または、常識的に予想し得る状態で使用した場合に商品の使用に適合するリスク又は最小限のリスクのみで、許容可能であり、かつ、人の安全及び健康のための高レベルの保護と一致すると考えられる商品」としています。

考慮事項として「老人や子供の使用」などを求めています。


3.整合規格 EN50581:2012とは

 EN50581の表題は「有害物質の使用制限に関する電気電子製品の評価のための技術文書」です。電気電子製品の適合性(順法)を確認する技術文書の構成要素の規格です。

 EN50581の要求に適合していれば、RoHS指令の適合と見されるものです。

 4節に製造者の実施手順が示されています。


 適合性の確認は、「材料、部品、半組立品への特定有害化学物質の含有可能性」や「サプライヤーの信頼性格付け」を踏まえて、サプライヤーから購入する部品等に関する情報として、次のいずれかもしくは複数を入手することを求めています。


(1)プライヤーによる自己宣言、および/または (and/or) 契約上の合意

(2)材料宣言 (and/or)

(3)分析試験結果 


 上記の適合性の確認の確証情報(エビデンス)は、RoHS(I)指令(2002/95/EC)の施行直前の2006年5月に執行当局のガイド(RoHS Enforcement Guidance Document May 2006)*5で、解釈が示されています。


 このガイドは、加盟国のRoHS指令の共通の市場監視方法を支援するために作られたものです。この考え方は、RoHS(II)指令でも同じです。ガイドでは、違反を発見した場合の製造者の取組みをRoute AとRoute Bの2つで評価するとしています。


(1) Route A:プロセスベースの技術文書の構成(RoHS準拠を確保するための生産者の内部システムに関する典型的な情報)

i:Compliance Assurance System (CAS)  順法保証システム


a.システムの目的、その本質的な要件と仕様の定義

この仕様は、企業内およびサプライチェーン内の両方のコンプライアンスをカバーする必要がある。

b.システムの要件を実装し、組織の品質管理システムに統合された正式に定義されたプロセス

c.プロセスとその適合性を保証するための措置を支援する技術文書システム(紙および/または電子)必要な訓練、ツール、インフラストラクチャーと一緒にシステムの要件

ii:確証(エビデンス)

d.CASおよび/またはプロセスを検証するための社内監査およびサプライヤー監査の結果(すなわちコンプライアンスを保証するための供給者の能力)

e.製品審査(RoHSの正当化を含む)などの項目を含む製品固有適合性評価の結果を含む、システムがフォローされていることの証拠、資材宣言、調達、在庫管理、生産管理、および必要に応じて物質分析

f.RoHS準拠データの管理に使用される内部データシステムの概要


(2) Route B:製品/部品ベースの技術資料(特定の製品のRoHS適合を保証する製品/部品の物理的属性に関する典型的な情報)

i:CAS

a.制限物質の使用が許可されたレベルにあることを宣言する生産者または供給者の保証/証明書

b.各部品の製造者または供給業者の完成品の宣言(改訂部品の改訂を含む)およびRoHSの分類と免除の使用の正当化

これらの宣言は、完全な物質宣言ではなく、RoHS物質のリストに限定される。

c.部品/部品の均質材料(生産者または供給業者が内部または外部の試験結果を所有する可能性がある)の分析レポート

試験結果は、部品/部品内の均質な材料を指すものとする。

ii: 確証(エビデンス)

d.中小企業は、彼らが信頼できるかどうかを判断するために材料宣言が評価されている。

施行当局はまた、文書化されたコンプライアンス手順を参照する。

 

 ガイドは、Route Aは組織の品質管理システムに統合したCASで順法を保証することを求めていますが、中小企業には、Route Bの製品単位のCASで順法を保証することを求めています。Route Bは製品単位の材料宣言でよいとしています。


 EUに輸出している製造者はRoute Aで順法保証を行い、サプライヤーはRoute Bで構成部品等の順法保証を行うのが一つの解釈です。


4. BS EN IEC 63000:2018の発行

 2018年12月7日にCENELEC(European Committee for Electrotechnical Standardization :欧州電気標準化委員会)EN IEC 63000:2018が配布(date of Availability(DAV))されました。


国家規格の告示(date of Announcement(DOA))が2019年3月7日、国家規格の発行(date of Publication(DOP))予定が2019年6月7日、EN規格と競合する国家規格の撤回(date of Withdrawal(DOW))予定が2023年12月7日です。


BS EN IEC 63000:2018は、EN 50581:2012に取って代わるものとしていますが、EN 50581:2012が広く受け入れられていることを踏まえ、国際標準化の最新の状況を反映するために必要な最低限の変更に限定することとされています。

従って、BS EN IEC 63000:2018の構成は、EN50581:2012と同じで、4節に製造者の実施手順が示されています。


国際標準としては、次などが引用されています。

i: 材料宣言:IEC 62474:2012

 なお、chemSHERPAはIEC 62474を基本としています。

ii: 情報の評価:「サプライヤーによる自己宣言、および/または (and/or) 契約上の合意」「材料宣言」「分析試験結果」の情報の評価手順として、 IEC TR 62476を注記しています。

 分析試験結果はIEC62321シリーズに記載または参照方法としています。


 サプライヤーの信頼性評価は、EN50581:2012と同様に「評価およびそれに関連する手順は、品質管理システムまたは同等物の一部を形成することができる。」としています。


5. 関連情報

 中国RoHS(II)管理規則(電器電子製品有害物質制限使用管理弁法(令第32号))は、2018年3月15日に12製品について、特定有害物質の非含有要求を告示しました。第2段階ともいわれ、告示(中华人民共和国工业和信息化部公告 2018年 第15号)の1年後に発効するとしました。作成日が2018年3月12日、告示日2018年3月15日で、1年後は2019年3月12日、3月13日、3月15日、3月16日と様々な解釈がされていました。


 適合性評価は、中国RoHS(II)管理規則第18条で、「国は、電器電子製品含有有害物質制限適合性評価制度を確立する。電器電子製品の目標達成目録に収載された電器電子製品は有害物質の使用制限に関する国家基準または業界標準を遵守しなければならない。」とされていますが、「適合性評価制度」が明確でなく、第2段階の発効が疑問視されていました。


 ネット検索では、当局(工業情報技術部)の公式な情報ではないのですが、3月12日または3月15日に発効したようです。

 国家標準化管理委員会がGB / T 36560-2018 ( 电子电气产品有害物质限制使用符合性证明技术文档规范:Specifications for technical documentation for the conformity demonstration of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances)を2018年7月13日に発行し、2019年2月1日に実施しました。

 GB / T 36560-2018 は、IEC63000:2016の翻訳国家標準としています。IEC63000:2016はEN50581:2012と同じですので、中国RoHS(II)管理規則は特定12製品についてはEN50581:2012と同じリスク評価手順で適合性を確認することになります。

 RoHS管理規則の適合宣言の手順が「電子電気製品汚染防止企業適合宣言規範 电子电气产品污染控制企业符合性声明规范」*6が2012年5月に公布されています。

 企業適合宣言規範で適合宣言の方式が示され、その一つに「「リスクアセスメント報告書」+「汚染防止システム証明書」または「汚染防止プログラム文書」のを提出」があります。

 「リスクアセスメント報告書」がGB / T 36560-2018と思われます。

「汚染防止システム証明書」、「汚染防止プログラム文書」はISO9001にRoHS(II)管理規則を追加したGB/T 31274-2014(電子電気製品における使用制限物質の管理体系 要求事項)の認定書、または品質マニュアルと思われます。


 中国RoHS(II)管理規則の第2段階の対応及びGB / T 36560-2018 の詳細は稿を改めて解説します。


(松浦 徹也)


引用

*1:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=uriserv:OJ.C_.2003.282.01.0003.01.ENG&toc=OJ:C:2003:282:TOC

*2:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=OJ:L:2008:218:TOC

*3:https://ec.europa.eu/growth/content/%E2%80%98blue-guide%E2%80%99-implementation-eu-product-rules-0_en

*4:https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:C:2012:363:0006:0007:EN:PDF

*5:https://www.epa.ie/pubs/advice/waste/rohs/RoHS%20Enforcement%20Guidance%20Document%20-%20v%201%20May%2020061.pdf

*6:http://www.miit.gov.cn/n1146285/n1146352/n3054355/n3057542/n3057554/c5917276/part/5917278.doc


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