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二つのDoC“DECLARATION of CONFORMITYとDECLARATION of COMPLIANCE”の使い分け
2019年9月13日更新
顧客あるいは規制当局から、特定化学物質の非含有要求がされて、順法証明、順法宣言をどのように対応するかを、悩んでいる順法担当者は多いと思います。
順法宣言の要求内容を整理し、対応を検討してみます。
1.EU RoHS(II)指令が求めるDoC(DECLARATION of CONFORMITY)
EU RoHS(II)指令は第7条(製造者の義務)c項で次のようにDoCを要求しています。
「電気電子機器 の適切な要求への準拠が(b)に言及される手順より証明される場合、製造者は、EU 適合宣言書(DoC)を作成し完成品にCE マーキングを貼付すること。 他の共同体法令が少なくとも厳重な適合性評価手順の適用を要求する場合、製造者はこの指令の第4 条(1)の要求への準拠はその手順の文脈に含めて証明することができる。
単一の技術文書(TD:Technical Documentation)が作成することができる。」
DoCは第13条(EU 適合宣言書)で、附属書VI(EU適合宣言書)ひな形で第4条(予防:附属書IIの特定有害物質の非含有)を満たしていることを明示することが要求されています。
TDは、第7条b項で、決定768/2008/ECの附属書II モジュールAに従って内部生産管理手順の実施が要求されています。
EU RoHS(II)指令などのニューアプローチ指令(複数の指令の総称)は、NLF(NEW LEGISLATIVE FRAMEWORK)により、CEマーキングの信頼性を高める目的もあり、市場監視が強化されました。NLFとしては、規則765/2008/EC 1)や決定768/2008/EC 2)などがあります。
従って、EU RoHS(II)指令への対応は、規則765/2008/ECや決定768/2008/ECを確認して行う必要があります。
例えば、規則765/2008/ECの第30条(CEマーキングの一般原則)で、次のような規定をしています。
(1) CEマーキングは、製造者またはその認定代理人によってのみ貼付されるものとする。
(輸入者はCEマーキングを貼付できません。)
(2)附属書Ⅱに提示するCEマーキングは、特定の共同体整合法により貼付が規定されている製品にのみ貼付され、他の製品には貼付されないものとする。
(規定されていない製品には貼付が禁止されています。)
(3)CEマーキングを貼付するまたは貼付させたことによって、製造業者は、その貼付を規定する関連する共同体整合法に規定されたすべての適用可能な要件に製品が適合することについて責任を負うことを示す。
(CEマーキングを規定するすべての整合法に適合している場合にのみCEマーキングを貼付できます。CEマーキングを規定するすべての整合法は、「ブルーガイド2016」 3)では、29の整合法を示しています。)
(4)CEマーキングは、製品が、その貼付を規定する関連する共同体調和法の適用要件に適合していることを証明する唯一のマーキングでなければならない。
(5)CEマーキングの意味又は形態に関して第三者を誤認させるおそれのあるマーキング、標識又は刻印の製品への貼付は、禁止されるものとする。
CEマーキングの視認性、判読性および意味がそれによって損なわれないならば、他のマーキングを製品に貼付してもよい。
(6)加盟国は、第41条(罰則)を損ねることなく、CEマーキングを規制する制度の正しい実施を確保し、マークの不適切な使用の場合には適切な措置を講じなければならない。
加盟国はまた、重大な侵害に対する刑事制裁を含む侵害に対する罰則を規定する。
これらの罰則は、犯罪の重大性に比例し、不正使用に対する効果的な抑止力を構成する。
決定768/2008/EC 第R8条(適合性の推定)では、「EU官報で参照番号が公示された整合規格またはその一部を満たす製品は、その規格または一部でカバーされ、法令で該当する部分(RoHS(II)指令第16条2項)で規定される要求事項を満たすものとみなされる。」としています。
RoHS(II)指令第16条2項は、「EU官報で通達された整合規格に則り、第4条の規定の順守(特定有害物質の非含有)を確認するための試験もしくは対応がされた、もしくは評価がされた原料については、本指令に適合しているものとみなすこととする。」となっています。
EU官報で通達された整合規格は、“EN50581:2012”です。RoHS(II)指令の適合宣言(DoC)は、EN50581:2012により行うことになります。
しかし、法規制では、要求事項は明確にされていますが、対応策は規定されていなく、企業が具体化しなくてはなりません。
RoHS(II)指令の解釈についてはFAQ 4)が参考になります。
企業対応のために、TD及びDoCについて、「ブルーガイド2016)」の4.3項及び4.4項で解説があります。
これまで、企業対応事例として「CAS構築シリーズ その1」5)や2019年7月6日のコラム「NIAS(Non-Intentionally Added Substance:非意図的添加物質)や Contamination(混入物)の企業対応」を紹介してきておりますので、ご参考にしていただければ幸いです。
なお、当局からDoCやTDの提示要求がされた場合は、規則764/2008/EC 6) 第10条(業務)2項により、15日営業日以内に提出しなくてはなりません。
2.中国RoHS(II)管理規則の第2段階の順法証明
中国RoHS(II)管理規則(电器电子产品有害物质限制使用管理办法)7)は、2段階で施行されます。
第1段階は、すべての電器電子機器が対象に特定化学物質(6物質)の含有または非含有の表示が義務化されています。
第2段階は、目録に収載された製品(2019年9月時点で12品目)について、非含有とし、電器電子機器に非含有のロゴの貼付が義務化されています。
第2段階の解説は、2019年6月13日のコラム「2019年11月1日施行の中国RoHS(II)管理規則の第2段階の概要」をご参照ください。
上記コラムの解説のように12品目はロゴを貼付することがDoCになります。12品目の構成部品は「国家推進自発的認証」以外に、「サプライヤ適合ロゴ(マーク)」で適合宣言が適用できます。
「サプライヤ適合ロゴ」は、7月3日に市場管理総局がグリーン商品識別管理規則(绿色产品标识使用管理办法)により告示しました。
また、7月10日に中国電子技術標準化協会(CESI)が、「合格評定制度の実施要領」を告示し、パブコメを開始しました。
この関連は、「中国RoHS(II)管理規則 合格評定制度に関する動き」8)として解説をしていますので、ご参照ください。
「サプライヤ適合ロゴ」は、自己適合宣言ですが、電気電子製品のサプライヤは、公共サービスプラットフォームを使用して、適合報告を技術支援文書としてアップロードしなくてはなりません。
適合報告により、製品が電気電子製品の有害物質限度要求に適合していることを証明できます。
適合報告は以下の2種類の方法から選択できます。
(1)サプライヤが委託した検証・検査測定機関により、関連標準に基づき宣言を行う製品中の有害物質に対して検査測定を実施し、製品の検査測定報告を作成する方法です。
検査測定機関は、生産者、生産企業などが自ら所有し、かつ、相応の技術力を有する実験室でも、資格を備えた第三者の検証・検査測定機関でもかまいません。
(2)すべてのアセンブリ、コンポーネントおよび部品、原材料の有害物質に対する判定を基礎として、サプライヤが適合報告を整理して作成する方法です。
適合宣言(DoC)適合となるロゴは2種類ですが、ともに第三者が関与しています。
3.DoCの基本となるIEC 63000
EU RoHS(II)指令の整合規格のEN50581:2012のタイトルは「Technical documentation for the assessment of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances:有害物質の使用制限に関する電気・電子製品の評価のための技術文書」で、TDの作成基準です。
EN50581:2012 4.3.1項で、特定有害物質の非含有の確証(エビデンス)は、次としています。
(1)サプライヤによる自己宣言または契約上の合意、およびまたは (and/or)
(2)材料宣言、およびまたは (and/or)
(3)分析試験結果
確証の決定は、4.3.2項で、次としています。
(a)材料、部品の中に制限物質が含有する可能性
(b)材料、部品のサプライヤの信頼性
材料、部品に含有の可能性が少なく、サプライヤの化学物質管理の信頼性が高ければ、「サプライヤによる自己宣言または契約上の合意」または「材料宣言」で良いと考えられます。
例えば鉄製の板金部品には、水銀やPBBやPBDEなどが含有している可能性はありません。軟質塩化ビニル(PVC)にはDEHPの含有の可能性が高く、サプライヤの信頼が低い場合は、自己宣言では不十分で「分析試験結果」が求めるなどです。
中国では、GB/T 36560:2018/ IEC 63000:2016(电子电气产品有害物质限制使用符合性证明技术文档规范: Specifications for technical documentation for the conformity demonstration of electrical and electronic products with respect to the restriction of hazardous substances)が、2018年7月13日に発行され、2019年2月1日に実施されました。
GB/T 36560:2018は IEC 63000:2016の翻訳規格で、適用範囲は「製品が対応する制限物質の要件を満たすことを宣言するために製造業者が要求する技術文書を指定している。」としています。
IEC 63000:2016はEN50581:2012と調和されていますので、EU RoHS(II)指令と中国RoHS(II)管理規則の第2段階は、同じ考え方で、TDを作成することになります。
TDで順法性を確認ができたら、DoCとなります。
EU RoHS(II)指令のDoCは、附属書VIによります。
中国RoHS(II)管理規則のDoCは、「電器電子製品に有害物質を使用するための適合性評価システム実施計画(电器电子产品有害物质限制使用合格评定制度实施安排:合格評定(評価)制度)」によります。
2018年12月に“EN IEC 63000:2018”が発行されました。この規格は、IEC 63000:2016をヨーロッパ標準(EN規格)としたものです。
EN50581:2012は、2023年12月7日にEN IEC 63000:2018に置き換えがされます。
EN50581:2012とIEC63000:2016との差異が気になりますが、順法確証は同じです。サプライヤとの情報伝達はIEC62474:2012を基本としています。IEC62474:2012とchemSHERPAは調和していますので、情報伝達をchemSHERPA CIやAIで実施することが増える可能性があります。
4.もう一つのDoC (DECLARATION of COMPLIANCE)
川中のサプライヤの困惑事例として、顧客から部品・ユニットに対してEU RoHS(II)指令の特定有害物質の非含有とCEマーキングを要求される場合があります。
規則765/2008/ECの第30条で、RoHS(II)指令の適用範囲の電気電子機器以外はCEマーキングの貼付は禁止されます。
EN50581:2012 4.3.1項のサプライヤ宣言以下の3分類4種類の確証を提供することになります。
中国RoHS(II)管理規則の第2段階は、合格評定制度により、
「電器電子製品の有害物質使用制限に関する自主的認証実施規則」 9)及び/または
「電器電子製品有害物質制限のための供給者適合宣言のための条件」 10)になります。
一方で、顧客からの非含有保証対象の化学物質は、EU RoHS(II)指令や中国 RoHS(II)管理規則対象ではない場合や、電気電子機器の構成部品ではない場合などが、対応に苦慮しているのが実情のようです。
顧客要望に合わせて対応することは重要ですが、サプライヤ側から順法宣言を行い、顧客に連絡することを考えたいと思います。これは「供給者宣言」で新しいものではないのですが、サプライヤの立場から使用用途(適用法令)を決めて、宣言するものです。
この場合の適合宣言は、“DECLARATION of COMPLIANCE”となります。
このDoCのひな型は以下にお示ししますが、顧客がこのDoCでは不足と思えば、追加要請をし、サプライヤも対応するものです。
DoCを開示し、満足していただければ新たな対応は不要となり、担当者の作業量が削減できます。
“DECLARATION of CONFORMITY”だけでなく“DECLARATION of COMPLIANCE”を利用することをお勧めします。
EUと中国の順法宣言は共通化する、二つのDoCを使い分けることで、業務の効率化が望めます。
なお、“DECLARATION of COMPLIANCE”は、1ページですが、その根拠となる文書(TD)は、決定768/2008/ECに規定されるほど厳格でなくても準備しておくことは必要です。
★★★★★★DECLARATION of COMPLIANCEのひな型★★★★★★★★★★
タイトル:DECLARATION of COMPLIANCE
Ref. No. ABC-01
Date of Issue on: Septenber, 13, 2019
We, ABC Co.,LTD, Postal Address, *********, Japan, declare under our sole responsibility that the product described below is in compliance with the following regulations and directives.
Uses: 用途
Product Name: ****
Model Name: *** 写真でも可
Trade Mark:
Confirmation of compliance:
It was confirmed that the product is compatible with the following laws and regulations by considering the General Product Safety Directive(2001/95/EC)and the related information because there is a possibility that the product will be brought in a general household.
消費者向け製品の場合は、玩具でなくても玩具指令の基準に適合しているとする方法もあります。
(1)Directive 2009/48/EC (safety of toys)
ANNEX II-III-3. Carcinogenic, Mutagenic or toxic for Reproduction: It is confirmed by using SDS (GHS 4th edition) that the substances are not included in the products.
ANNEX II-III-13. Migration limit: The contained element was measured by a fluorescent X ray analysis device.
Hexavalent chromium: It is confirmed by the in-house method* that the elution amount is lower than the maximum allowable concentration.
*: Measurement of an elution amount with diphenyl carbazide absorptiometry.
木製品の場合は木材規制を入れることもあります。
(2)Regulation (EU) No. 995/2010 (EU Timber Regulation)
The used paulownia wood is Chinese lumber that is cut and exported in a legal way as far as the confirmation by the importer.
Fire retardant, bleaching agent, etc. are not contained.
EUの場合は、REACH規則が適用される可能性が高いので、REACH規則の適合宣言を入れます。
(3) Regulation(EU)1907/2006(REACH)
Substances listed on the Annex XIV: It is confirmed using SDS (GHS 4th edition) that no substance is included.
Substances listed on the Annex XVII: It is confirmed using SDS (GHS 4th edition) that no substance is included.
Candidate List of substances of very high concern for authorisation: It is confirmed using SDS (GHS 4th edition) that no substance is included.
包装材にも配慮していることを宣言します。
(4)Directive 94/62/EC (packaging and packaging waste)
Certain heavy metals: It is confirmed by non-containing certificates of suppliers that no substance is included.
適合宣言のバックデータとなる技術文書を特定(ファイル名)しておきます。
The data for the compliance confirmation is listed in the Technical Documentation (File No. ****).
Signature:
Position/Title:
Address: Postal Address,
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
(松浦 徹也)
引用
1)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:32008R0765&locale=en
2)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/DE/TXT/?uri=CELEX:32008D0768
3)https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52016XC0726(02)&from=BG
4) https://ec.europa.eu/environment/waste/rohs_eee/pdf/faq.pdf
5) https://www.tkk-lab.jp/post/point20190506
6)https://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2008:218:0021:0029:en:PDF
7)http://www.miit.gov.cn/n1146295/n1652858/n1652930/n3757016/c5366660/content.html
8)https://www.tkk-lab.jp/post/whatsnew20190909
9)http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/rzjgs/201905/W020190517629494162304.docx
10)http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/rzjgs/201905/W020190517629494178562.docx