当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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規則765/2008/ECが規則2019/1020により改定されます

2019年10月11日更新


1. 規則2019/1020の目的

2019年6月25日のEU 官報(Official Journal of the European Union L169 P1)1)で、CEマーキングでお馴染みの規則765/2008/EC等を改定する規則 2019/1020が公布されました。


2021年7月16日から適用されます。

規則765/2008/ECは税関や市場監視当局の執行法で、日本企業にとっては気になる改定です。


目的は第1条で「本規則の目的は、一般的な健康と安全、消費者の保護、環境及び公共の安全の保護、並びにそれら法律により保護されるその他の公共の利益の高水準の保護を提供する要件を満たす適合製品のみが、EU市場において利用可能とされることを確保することで、第2条にいうEU調和法により対象とされる製品の市場監視を強化することにより、EU市場の機能を改善することである。」としています。


この背景は、前文(全68文節)に詳述されていますが、EU市場に上市する製品の安全の保証が大きな目的であることが強調されています。


・第1文節

EU内での製品の自由な移動を保証するために、製品がEU調和法(EU域内全体で適用される法律)に準拠し、これにより、一般的な安全衛生、職場における安全衛生、消費者の保護、環境の保護、公共の安全、およびその法律によって保護される他の公益の保護など、公益の高水準の保護を提供する要件を満たすことを保証することが必要である。


これらの要件を強力に実施することは、これらの利益を適切に保護するために、また、商品のためのEU市場における公正な競争が繁栄する条件を作り出すために不可欠である。

したがって、製品がオフラインまたはオンライン手段を介して市場に出されるかどうかにかかわらず、また製品が連合で製造されるかどうかにかかわらず、この実施を確実にするための規則が必要である。


・第5文節

EU議会及び理事会の指令2001/95/EC(GPSD 一般製品安全指令)は、全ての消費者製品に対する一般的な安全要件を規定し、危険な製品に関する加盟国の特定の義務及び権限、並びに迅速情報交換システム(RAPEX)を通じたその効果に対する情報の交換を規定する。

市場サーベイランス当局は、その指令の下で利用可能なより具体的な措置をとる可能性を有するべきである。

消費者製品のより高い安全性を達成するためには、指令2001/95/ECに規定された情報交換及び迅速な介入状況のためのメカニズムがより効果的にされるべきである。


2. 規則2019/1020の対象

第2条で附属書IにリストされたEU調和法に適用するとしています。 附属書IにはRoHS(II)指令(2011/65/EU)、REACH規則(1907/2006)、CLP規則(1272/2008)、WEEE指令(2012/19/EU)やEMC指令(2014/30/EU)などのCEマーキング関連法など70のEU調和法がリストされています。


3. 765/2008/ECの改定ポイント

前文第7文節に規則765/2008の改定方針が示されています。

EU議会及び理事会の規則765/2008の第15条から第29条までは、EU市場監視の枠組み及びEU市場に参入する製品の管理を定めるものを削除し、それぞれの規定は、本規則に置き換えるべきである。


この枠組みは、規則765/2008 第27条、第28条及び第29条において、EU市場に参入する製品の管理に関する規定を含み、これは、市場監視の枠組みによってカバーされる製品だけでなく、他のEU法がEU市場に参入する製品の管理体制に関する特定の規定が含まれていない限り、全ての製品に適用される。


したがって、EU市場に参入する製品に関しては、本規則の規定の範囲がすべての製品に及ぶことが必要である。


第39条(規則765/2008/ECの修正)及び附属書IIIに規則765/2008と規則2019/1020の改定内容の関係が示されています。


(1) 規則2019/1020第14条(市場監視当局の権限)第4項 (規則765/2008 第19条1項 第2文節)

市場監視当局に与えられる権限には、少なくとも次の事項を含まなければならない。

(a)その製品の適合性及び技術的側面に関する関連文書(relevant documents)、技術仕様書、データ又は情報を、その文書、技術仕様書、データ又は情報が保存されている記録媒体又は場所にかかわらず、いかなる様式、書式 であっても、その製品が適用されるEU調和法に適合しているかどうかを評価するためにアクセスが必要とする限り、製造者、輸入者、流通者等の経済オペレータにその製品の適合性及び技術的側面に関する関連文書、技術仕様書、データ又は情報を提供すること、並びにその文書、技術仕様書、データ又は情報の写しを取得することを要求する権限

(b)経済オペレータに対し、EU調和法に基づく適用される要件の遵守に関連する場合には、その製品と同一の技術的特徴を有するサプライチェーン、流通ネットワークの詳細、市場における製品の数量、及びその他の製品モデルに関する関連情報を提供することを要求する権限 (以下中略)

(e)経済オペレータが、不遵守を特定し、証拠を得るために、その経済オペレータの貿易、事業、製品又は職業に関連する目的のために使用する物件、土地又は運送手段に立ち入る権限 (以下中略)

(j)製品サンプル(同一種類含む)を入手し、それらのサンプルを検査し、それらをリバースエンジニアリング(製品の解体・分解して、製品の仕組みや構成部品、技術要素などを分析する)で不適合を識別し、証拠を得る権限。 (以下略)


規則765/2008/ECより、具体的な記述になっており、また、権限も強化されています。

順法証明としての技術文書(Documents)が重要となっています。

監視当局は、順法確認のために製品の適合性及び技術的側面に関する関連文書、技術仕様書、データ又は情報の提供命令の権限を持っています。

命令により、技術文書類を提出しますが、RoHS(II)指令では、例えば、受入検査記録、設計審査(DR)記録やその規定類を提出することになります。RoHS(II)指令では、検査やDRの妥当性は、その関連手順が重要となります。

関連手順がCAS(Compliance Assurance System)で、CEマーキングの技術文書(Technical Documentation)で順法を説明することになります。

CEマーキングが多くの場合にモジュールA(内部生産管理手順:通称自己宣言)なので、“Technical Documents”や“Technical Documentation”の根拠文書なしで、適合宣言をしている事例が懸念され、根拠文書の要求を厳しくしたとも言われています。


(2) 規則2019/1020第16条(市場監視方法)3項 (規則765/2008 第19条2項) 

経済オペレータがとるべき是正措置には次のものを含める。

(a) 製品を遵法させる、 該当するEU調和法で定義されている正式な不遵守の修正、または製品にリスクが生じないようにすること。

(b)製品が市販されないようにする。

(c)製品を直ちに撤回または回収し、公衆に提示されたリスクを警告すること。

(d)製品を破壊し、又はその他の方法で使用不能にすること。

(e)製品が市販されている加盟国によって決定された言語又は複数の言語で、製品に適切で明確に表現された、明確に理解しやすい危険性に関する警告を添付すること。

(f)製品を市販するための事前条件の設定すること。

(g)製品が市販されている加盟国によって決定された言語で特別な警告を発することを含む、即時かつ適切な形式でエンドユーザに警告すること。

RoHS(II)指令第7条(製造者の義務)(i)項の是正措置は上記が基本となります。CASの手順、例えば、不適合品管理規定に上記を手順化しておくことが必要となります。


(3) 規則2019/1020第20条(迅速な情報交換システム)(規則765/2008 第22条)

1. 市場監視当局が第19条(深刻なリスクをもたらす製品)の規定に基づく措置をとり、又はとろうとする場合において、その措置又は措置の効果を促した理由が加盟国の領域を超えると認めるときは、4項の規定に従い、直ちにその措置を委員会に通知しなければならない。 市場監視当局は、かかる措置の変更または撤回を遅滞なく委員会に通知するものとする。


2.重大なリスクを示す製品が市場で入手可能になった場合で、経済オペレータが任意の措置を講じて市場監視当局に伝達した場合は、市場監視当局は直ちにEU委員会に通知するものとする。


3.パラグラフ1および2に従って提供される情報には、利用可能なすべての詳細、特に製品の識別に必要なデータ、製品の起源とサプライチェーン、製品に関連するリスク、性質、実施された国内措置の期間および経済運営者が実施した任意の措置が含まれる。


4.本条の第1、2、3項の目的のために、GPSD第12条に規定されている迅速情報交換システム(RAPEX)を使用するものとする。GPSD第12条の2、3、4項が準用される。


5.委員会は、二重のデータ入力を回避するために、RAPEXと第34条に記載されている情報通信システムとのデータインターフェイスを提供および維持するものとする。


加盟国で発見された深刻なリスクをもたらす製品の情報を、EU域内で共有する仕組みが強化されました。

EUでは域内で自由に物品等を流通させるのが基本原則です。 例えば、CEマーキングが貼付されている製品の上市を制限することは、この原則に合致しないのですが、EUの基本条約である「EU 運営条約(Treaty on the Functioning of European Union TFEU)」第36条及び第114条でセーフガードが加盟国に認められています。


しかし、市場監視当局が流通を止めた場合は、直ちにEU委員会に通知しなくてはなりません。 この通知はICSMS(The Information and Communication System on Market Surveillance)により行われます。


通知後に、深刻なリスクをもたらす製品について、市場監視当局と経済オペレータが協議し、是正処置(例えば、リコール)の合意をします。この合意内容を含めてRAPEXの機能で、EU委員会に通知します。


EU委員会は通知内容を確認し、RAPEXの機能で加盟国、EEA加盟国(EU及びリヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェー)及びEFTA(EU、EEA加盟国及ぶスイス)に伝達します。


伝達を受けた加盟国は、自国の措置を決定し、EU委員会に通知します。


消費者にはEU委員会がWebサイトの“Safety Gate” 2)で概要を公開します。


情報伝達は、GPSDの要求によるRAPEX、セーフガード条項によるICSMSにより行われています。 これらの情報は共有化されていますが、規則2019/1020 第34条(情報通信システム)により、データの共有改善がされることになっています。


第34条の背景について、前文第56文節から第59文節で説明をしています。 前文ではICSMSからRAPEX、ICSMSによる税関と市場監視当局の情報共有などのインターフェースの整備が説明されています。


4.RAPEX ガイドライン

2019年3月15日の官報(Official Journal of the European Union L73 P121)でRAPEXガイド(決定 2019/417/EU)3)が告示され、決定 2010/15/EU(RAPEXガイドライン)が廃止されました。


目的は「通知メカニズムの合理化」「通知メカニズムの通知基準の設定」「リスク評価方法、深刻なリスクを特定するための基準の確立」などです。


RAPEXガイドの対象はGPSDと規則765/2008/ECです。


RAPEXの通知は、「加盟国は、全ての通知について、リスク評価を提出する」必要があります。


リスクは附属書に「消費者製品のリスク評価ガイドライン」があり、リスクの決定、リスク評価手順も示されています。


ただ、リスク評価をするまでもなく措置が明確な場合についての手順もあります。この手順に「化学的リスクのある製品の通知」では、「EU法で禁止されているか、定められた制限を超える濃度の化学物質を含む場合、製品のリスクレベルは深刻であると見なされる場合がある。 そのため、EU法規制の対象となる化学物質を含有する製品に対して措置を講じる場合には、詳細なリスクアセスメントを行うことなく届出を行うことができる。」としています。


規則765/2008/ECやRAPEXガイドの改定を見ますと、消費者保護が一段と強化されたと言えます。 企業は上市する製品の遵法性を保証する仕組みや文書を整備しておくことが重要になります。


(松浦 徹也)


引用

1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=celex:32019R1020

2) https://ec.europa.eu/consumers/consumers_safety/safety_products/rapex/alerts/repository/content/pages/rapex/index_en.htm

3) https://eur-lex.europa.eu/eli/dec/2019/417/oj

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