当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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RoHS指令の制限対象候補物質の検討状況

2019年11月1日更新


2019年7月からEU RoHS指令では4種のフタル酸エステル類に対する含有制限が開始され、EU RoHS指令の制限対象物質は10物質群となりました。 ただし、4種のフタル酸エステル類で制限対象物質の追加が終了したわけではなく、次なる制限対象候補物質の検討を含む調査プロジェクト(パック15)が2018年2月に開始されています。


パック15はまだ検討途中ではありますが、9月26日に第3回目の意見募集が開始されましたので、今回はこの内容を取り挙げます。


1.パック15の概要

パック15では、制限対象物質に関する内容と、適用除外用途に関する内容の大きく2つの内容が検討されています。 まず、制限対象物質については、過去に作成されていた制限対象物質の「評価マニュアル」の見直しとともに、新たな制限対象候補物質として、次の7物質群について、評価が行われています。


・三酸化二アンチモン:CAS番号1309-64-4

・2,2’-ビス(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブロモフェニル)プロパン(TBBP-A)

・中鎖塩素化パラフィン類(MCCPs)

・りん化インジウム

・ベリリウムおよびその化合物

・硫酸ニッケル(II)およびスルファミン酸ニッケル

・ジクロロコバルト(II)および硫酸コバルト(II)


一方、適用除外用途については、適用除外用途の新規追加や更新の申請に対する評価手続きの見直しを図るとともに、「LED半導体チップで使用される発光材料中のカドミウム」について、新たな評価手続きに基づく評価が実施されています。


2.これまでの検討状況(第1回~第3回の意見募集)

第1回の意見募集[1]は2018年4~6月にかけて実施されました。 上記の7物質群について、電気電子製品中の用途や使用量、廃棄時の排出可能性、代替可能性、含有制限による社会経済的影響等について意見が求められていました。


第2回の意見募集[2]は2018年10~12月にかけて実施されました。制限対象物質を特定する際の「評価マニュアル」の改訂案が示され、制限対象物質を検討する際のベースとなる法規制や業界基準等の物質リスト、評価基準等について意見が求められました。 また、制限対象物質の優先順位付け等の基礎資料となる制限対象候補物質インベントリー案も計815物質に更新され、これらの物質に対する使用量や電気電子製品中の含有状況、その他追加すべき物質等について意見が求められました。


これらの意見募集に続き、9月26日に第3回の意見募集[3]が開始され、11月7日まで意見が受け付けられています。 第3回の意見募集では、第2回意見募集の対象であった制限対象候補物質インベントリー案が再度更新され、収載された計853物質について、優先順位付けに関する情報等が追加されました。 この制限対象物質インベントリー案について、更なる見直しの必要性や優先順位付けの対象とする物質の絞り込みに関する意見が求められています。 また、制限対象候補物質として、評価対象となっている7物質群のうち、4物質群について評価文書案が公表され、その内容についても意見が求められています。


3.4物質群の評価結果案

今回公表された4物質群の評価結果案[4]は次のとおりであり、いずれの物質群もRoHS指令の制限対象物質への追加を提案しないとする結論が示されています。


なお、残りの3物質群についても、2019年中には、評価文書案に対する意見募集が実施される予定となっています。


りん化インジウム

ディスプレイや照明、太陽光発電等のりん化インジウムが使用される主要分野での使用量は100kg/年未満程度であることが予想される。 また、現状利用可能な代替物質はりん化インジウムよりも健康や環境への影響が小さいとは想定されず、一方、含有制限を実施した場合には、大きな社会経済的な悪影響が想定される。 そのため、りん化インジウムをRoHS指令の制限対象物質に追加することは提案しない。


ベリリウムおよびその化合物

合金中のベリリウムやセラミック中の酸化ベリリウム等は普遍的な構成要素であり、産業界等の利害関係者からも、最終製品中のベリリウムの技術的重要性が高い点が指摘された。確かにいくつかの代替物質が利用可能な状況ではあるが、医療や安全に関わる製品(特にカテゴリー8、9)など、全ての用途で代替が可能な状況ではない。 その結果、これらの物質の含有によるリスクよりも社会的な便益が上回ると判断し、ベリリウムおよびベリリウム化合物をRoHS指令の制限対象物質に追加することは提案しない。


硫酸ニッケル(II)およびスルファミン酸ニッケル

これらのニッケル塩は表面処理工程で使用されるが、同工程において、金属ニッケルやニッケルイオン等に変換されるため、電気電子製品や部品等の最終製品にはニッケル塩そのものとして含有することはない。 そのため、これらのニッケル塩をRoHS指令の制限対象物質に追加することは提案しない。 ただし、将来的に金属ニッケルやニッケルイオンによる影響を評価することを提案する。


ジクロロコバルト(II)および硫酸コバルト(II)

これらのコバルト塩は表面処理工程で使用されるが、同工程において、別のコバルト化合物等の反応生成物に変換されるため、電気電子製品や部品等の最終製品にはコバルト塩そのものとして含有することはない。 そのため、これらのコバルト塩をRoHS指令の制限対象物質に追加することは提案しない。


パック15は、当初予定では、18カ月間のプロジェクトでしたが、当初のスケジュールと比較すると、1年程度遅れているようです。


今後も、残りの3物質群の評価結果案や、最終報告書等が公表されることになりますので、情報が確認でき次第、本コラムで取り上げる予定です。


(井上 晋一)

[1] パック15の第1回意見募集

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=289


[2] パック15の第2回意見募集

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=302


[3] パック15の第3回意見募集

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=331


[4] 4物質群の評価文書案

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=340

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