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UAE RoHSの関連情報の整理
2019年12月7日更新
UAE RoHS規則(電気電子機器の制限有害物質の濃度管理の首長法に関する2017年閣僚決定第10号)は2017年4月15日に公布 1)されました。
UAE RoHS規則は、2020年1月1日から全ての電気電子機器について、EU RoHS指令の6物質が制限され、カテゴリ8、9及び11製品群を除く8製品群(以下製品群はCatと略記)は10物質の制限が開始されます。
UAE RoHS規則は、ESMA(Emirates Authority for Standardization and Metrology:エミレーツ認証局)による ECAS認証 2)が必要となります。
ECASの認証のガイド(英語版)3)も発行され、数は少ないのですが英語版のFAQ 4)もあります。
UAE情報は言語の壁や習慣の違いもあり、難解ですが、収集できた情報をご提供します。
1.UAE RoHSの要求事項
(1)対象製品
EU RoHS指令と同じ11製品群ですが、EU RoHS指令と異なり対象製品リストがあります。例えば、時計はCat2、電動工具はCat6などです。
(2)制限物質
(i) Cd、Pb、Hg、Cr(VI)、PBB、PBDE 最大許容濃度は、Cd 0.01wt% 他は0.1wt%
・Cat 1~7、及び10:2018年1月1日から適用
ケーブル、修理、再利用、アップグレードのスペアパーツは2022年1月1日に適用
・Cat8、9及び11:2020年1月1日から適用
但し、ケーブルとスペアパーツは 2022年1月1日に適用
(ii) DBP、DEHP、BBP、DIBP 最大許容濃度は0.1wt%
・Cat 1~7、及び10:2020年1月1日から適用
・Cat8、9及び11:2022年1月1日から適用
ケーブル及びスペアパーツを含める
(3)除外
附属書3:Cat 1~10に適用される37項目の除外事項があります。EU RoHS指令と順番が異なりますが、鋼材及び亜鉛めっき鋼中の鉛は0.35wt%、アルミニューム材の鉛は0.4wt%、銅合金中の鉛は0.4wt%などは同一内容になっています。
附属書4:Cat8及びCat9に適用される44項目(採番は46)
(4)製造者の義務
製造者は、ESMAによるECASの適合性を評価しなくてはなりません。製品の適合性評価は第5条(適合評価)に規定されています。
i. ESMAが認定した適合評価機関による適合評価手続
ii.適合確認フォームAによる申請。
iii.技術規格の要求事項、条件、規定、規格を満たす
iv.提出文書
a.製品の一般的な説明書
b.材料や製造する際に使用された物質のリストを含む詳細な設計説明書
c.適用標準規格リスト
d. ESMAに承認された試験場による製品の試験・検査の報告書
e.適合証明文書
適合証明書、物質許可証、物質又は部品の試験結果などの文書
適合確認フォームA(参考1)による製品が要求事項への適合証明文書
文書には、製品に含有する有害物質の濃度が附属書2を満たすことを明記
f.その他ESMAが必要とみなす適合評価に関する情報や文書
EU RoHS(II)指令に適用される決定768/2008/ECのモジュールAと同様の手順に見えますが、認定機関の関与などの差異があります。
2.Guideline
2017年11月28日に“UAE RoHS - Implementation Guidelines” 5)が発行されました。 内容的にはUAE RoHSの要旨と補説で、EU RoHS指令の概要を知っているとUAE RoHS対応が理解できます。
(1)適用規格
・IEC/TR 62476:2010
・IEC63000:2016
・IEC62321-1:2013~IEC6231-8:2017
・IEC62474:2012
・IEC TR 62474-1:2015
(2)適合性評価
適合性評価は2方式があります。
i.ECASによる強制適合性評価 6)
・RoHSの製品評価が全て終了していない場合にはRoHSに関するリスク評価を提出
・申請者は重要なコンポーネントのみを含む適合宣言書(附属書に様式提示)を発行
・申請者は、完全な製品の完全なRoHSテストレポートを提出(利用可能な場合)
または、CAB(Conformity Assessment Body:登録認証機関)から要求した場合は重要なコンポーネントのテストレポート
・ ESMAが設定された制限値への適合を検証し、証明書を発行する。
・証明書の有効期間は1年間
ii. 自発的なスキームEQM(エミレーツ品質マーク)のフォームHによる適合性評価 7)
・申請者は適合宣言書(前項と同じ附属書に様式提示)を発行
・申請者はIEC 63000およびIEC 62476に基づくリスクアセスメント文書を提出
・工場訪問審査
・ESMAは適合性を検証し、証明書とEQMの使用許可
・製品にEQMを貼付
・有効期間は3年間
IEC62476は、電気電子機器の物質の使用制限に対する製品の評価のためのガイダンスで、設計、購買、製造などの“ものつくり”全般を対象としています。 EN50581、IEC63000より広範囲、詳細ですが、基本的要求内容は同じです。
なお、フォームHは、EUの768/2008/ECのモジュールH(総合品質保証)に相当します。フォームHは、ISO9001の第三者認証が必須要件となっています。
3. GCC RoHS規則とUAE RoHS規則
2018年3月28日にGCC(Gulf Cooperation Council 湾岸協力会議) RoHS規則(Gulf Technical Regulation for Prohibition of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)がWTO 8)に通告されました。
GCCは、アラブ首長国連邦(UAE)・バーレーン・クウェート・ オマーン・カタール・サウジアラビアの6か国で構成され、イラク・イエメン・ヨルダン・モロッコが加盟を希望しています。GCCは、加盟国間の「経済、金融、貿易、通関、観光、立法、行政における共通規制の確立」、「鉱工業、農業、水利用、畜産資源の科学技術的進歩」や「科学研究センターの設立」などを目的としている経済同盟です。
UAEはGCCの構成国でGCC技術規則が適用され、GCC RoHS規則で次の規定があります。
第32条:旧規則の削除
この文書は、電気電子機器における有害物質の禁止に関するGCC技術規則の初版であり、既存の電気電子機器への有害物質の使用禁止に関するGCCまたは国内の技術規則は、取り消されるものとする。
GCC RoHS規則が発効するとUAE RoHS規則はこれに調和する義務が生じます。 しかし、GCC RoHS規則は規則案の段階 9)ですので、当面は、UAE RoHS規則は有効が継続します。
4.論点
UAE RoHS規則はEU RoHS指令に準じていますが、幾つか点で違いがあります。
(1)ESMAの要求される重要なコンポーネント
何が「重要」であるかをどのように判断するかは明確になっていません。
「重要」の決定の考え方として、引用規格のIEC62321-2がありますので、附録Bに特定有害物質の6物質の含有リスク表の利用もあります。(現時点では、フタル酸エステル類は入っていません。)
しかし、重要の決定などは、CABによりますがCABの解釈が異なることを指摘 10)しているものもあります。
UAE RoHS規則は、自己宣言ながら認証が必要となり、EU RoHS指令と差異があります。
CAB/Notified BodiesはWebで公開11)されていますが、Scopeを確認する必要があります。
(2)技術文書
技術文書は、フォームAとIEC63000になります。IEC 63000は、EU RoHS指令の整合規格と調和していますので、内容的には流用できます。
しかし、フォームAは、技術文書を輸入者が10年間保管する義務を課しています。 従って、日本企業は、技術文書を輸入者に提供をする必要があります。
引用規格にIEC62476があります。 IEC62476はISO9001をベースにした有害物質のものつくり全プロセスの要求です。
技術文書はマネジメントシステムをベースとして記述する必要があります。
(松浦 徹也)
参考情報
GUIDE OF CONFORMITY ASSESSMENT FORMS
フォームA(内部生産管理):
1.手順
GCC諸国の製造者又は認定代理人は、フォームAによりパラグラフ2に規定するコミットメントを履行する、製品が湾岸技術規則の要件を満たしていることを確認し、認めるための手続を記載し説明する。
GCC諸国の製造業者または認定代理人は、すべての製品にGCC諸国の適合マークを付け、適合確認を提示するものとする。
2.製造業者は、以下のパラグラフ3で説明する技術文書を提出するものとし、GCC諸国の彼または彼の許可された代表者は、少なくとも最終製品を製造した後、各国当局が自由に検査するめに10年間保管するものとする。
また、製造業者またはその代理人がGCC諸国に居住していない場合、技術文書を保管して利用可能にするという責任は、GCC諸国の市場で製品を発売した人の責任となる。
3.前述の技術文書は、製品の関連湾岸技術規制への適合レベルを評価できるようにし、そのような評価の関連レベルまでの設計、製造、および運用を対象とするものとします。
4. GCC諸国の製造業者とその許可された代表者は、技術文書とともに適合確認書のコピーを保管するものとする。
5.製造業者は、製品製造プロセスが上記のパラグラフ2で提供される技術文書および湾岸技術規制の適用要件に準拠していることを確認するために必要なすべての手続きをとる。
引用
1)
https://www.esma.gov.ae/ar-ae/ESMA/Pages/Laws-and-Legislations.aspx
UAE
RoHS規則のURLは、アラビア語が入っていますので、コピーできなく 1)から入ってください。
2)
https://www.esma.gov.ae/en-us/Services/Pages/Products/ROHS.aspx
3)
https://members.wto.org/crnattachments/2018/TBT/ARE/18_0905_00_x.pdf
4)
https://www.esma.gov.ae/en-us/pages/faqs.aspx
5)
https://www.esma.gov.ae/Documents/Restriction%20on%20Hazardous%20Substances.pdf
6)
https://www.esma.gov.ae/en-us/Services/Pages/ECAS.aspx
7)
https://www.esma.gov.ae/en-us/Services/Pages/Emirates-Quality-Mark.aspx
8)
http://www.puntofocal.gov.ar/notific_otros_miembros/bhr518_t.pdf
9)
https://www.gso.org.sa/en/conformity/gcc-conformity-assessment-scheme/
10)
http://www.jmcti.org/mondai/pdf/s801.pdf
11)
https://www.esma.gov.ae/en-us/Services/Pages/Notified-Bodies.aspx