当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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RoHS指令の制限対象候補物質の検討状況(その2)

2019年12月26日更新


2019年11月1日に掲載した本コラムで、調査プロジェクト(パック15)でRoHS指令の制限対象候補物質として検討が行われている7物質のうち、4物質群の評価結果案をご紹介しました。 12月5日に残りの3物質の評価結果案が公表[i])され、意見募集が開始されましたので、今回はその内容を取り挙げます。


1.残り3物質の評価結果案

前回公表された4物質群はいずれもRoHS指令の制限対象物質への追加を提案しないとする結論でしたが、今回公表された3物質の評価結果案は次のとおりで、TBBP-AとMCCP類の2物質については追加提案するという結論が示されました。 一方、三酸化二アンチモンはハロゲン系難燃剤を含めた再評価が提案されています。


(i) 2,2’-ビス(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブロモフェニル)プロパン(TBBP-A)

TBBP-Aはエポキシ樹脂製造の反応成分やプラスチック成型部品の難燃剤として、一定量使用されており、特に難燃剤用途の場合において廃棄処理時の破砕によって生じる粉じんよるばく露や環境への放出が懸念される。 また、既に一部の企業では臭素系難燃剤を自主的に制限しており、代替物質も利用可能な状況である。


そのため、TBBP-Aについては、最大許容濃度を均質材料あたり0.1wt%として、RoHS指令の制限対象物質に追加することを提案する。 なお、エポキシ樹脂製造の反応成分については、TBBP-Aの代替物質は現状ないものの、反応後の残留濃度は0.1wt%に比べて非常に小さいため影響はない。


(ii) 中鎖塩素化パラフィン(MCCP)類

MCCP類は、主にケーブル等のポリ塩化ビニル(PVC)やゴムの難燃性を有する2次可塑剤として一定量使用されており、廃棄処理時の細断などによって生じる蒸気や粉じんによる労働者ばく露や環境への放出が懸念される。 また、MCCP類と同様の可塑化および難燃化の効果を有する万能な代替物質はない可能性があるが、異なる可塑剤や難燃剤を組み合わせることで代替が可能な状況である。


そのため、MCCP類については、最大許容濃度を均質材料あたり0.1wt%として、RoHS指令の制限対象物質に追加することを提案する。 また、MCCP類は名称やCAS番号が様々であるため、制限対象物質の範囲をCAS番号で示すのではなく、特定範囲の鎖長で定義する「C14-17(直鎖および分岐)の鎖長のパラフィンを含む塩素化パラフィン」といった説明を付記することを提案する。


(iii) 三酸化二アンチモン

三酸化二アンチモンは、主にハロゲン系難燃剤との併用により相乗的に難燃性を高める難燃助剤として筐体やケーブル、プリント基板等の様々な樹脂で使用されており、廃棄処理時おける労働者ばく露が懸念される。 また、難燃助剤としての三酸化二アンチモンの代替は入手可能な状況ではあるが、単純な代替は進んでおらず、むしろ産業界ではハロゲン系難燃剤の代替が自主的に進められている状況である。


そのため、三酸化二アンチモン自体を制限対象物質に指定する場合、結果としてハロゲン系難燃剤の使用量が増加することが予想され、健康や環境への悪影響が増加することが想定される。 このような事態を回避するため、三酸化二アンチモンのみを制限対象物質に指定するのではなく、三酸化二アンチモンとハロゲン系難燃剤を合わせた評価を優先的に実施することを提案する。


2.ハロゲン系難燃剤に対する新たな規制

今回評価結果案が公表された3物質はハロゲン系難燃剤およびその難燃助剤として用いられる物質でしたが、ハロゲン系難燃剤については、RoHS指令以外でも新たな規制の動きがあります。それがErP指令です。


ErP指令は、製品別のエコデザイン要件として、従来はエネルギー消費量等に関する要件が定められていました。 しかしながら製品別のエコデザイン要件の見直しが進められており、12月5日に6種の製品種(冷蔵機器、照明機器、ディスプレイ、家庭用食器洗浄器、家庭用洗濯機・洗濯乾燥機、商品販売・展示用冷蔵機器)のエコデザイン要件を定めた委員会規則[ii])が官報公示され、新たに資源効率等に関する要件が追加されました。


資源効率に関する要件としては、多くの製品種ではスペアパーツの提供期間や提供納期、修理・メンテナンス情報の提供、WEEE指に基づく解体等が設定されているのですが、今回官報公示された「ディスプレイ」のエコデザイン要件には、製品含有化学物質に関する次のような要件が新たに定められ、2021年3月1日から適用されます。


(i)カドミウムロゴマークの表示

ディスプレイはRoHS指令の対象であるため、原則0.01wt%を超過するカドミウムの含有は禁止されていますが、RoHS指令附属書IIIの適用除外用途に該当する場合には含有が認められます。 そこで、カドミウムの含有有無を表示することで適切な処理を促進するため、RoHS指令で定められた最大許容濃度0.01wt%を超過するカドミウムの含有有無を示す所定のロゴマークを製品に表示することが新たな要件として定められました。


(ii)筐体やスタンドへのハロゲン系難燃剤の使用禁止

RoHS指令によって臭素系難燃剤の一部は含有制限が課されているものの、多くのハロゲン系難燃剤は含有制限が課されておらず、また、再生プラスチック中のハロゲン系難燃剤の含有を管理することが困難であるため、結果として多くが焼却処理されている状況であり、ディスプレイで用いられるプラスチック材料のリサイクルにおいて、ハロゲン系難燃剤の含有が大きな問題として指摘されています。 そこで、既に代替物質があるディスプレイの筐体やスタンドについて、ハロゲン系難燃剤の使用を禁止する要件が新たに追加されました。


このようなErP指令における資源効率に関する新たな要件は、廃棄物枠組み指令(WFD)によるSCIPデータベースに関わる義務と同様に、EUが推進する循環型経済(Circular Economy)の実現に向けて、RoHS指令やErP指令のような製品規制、REACH規則のような化学物質規制、廃棄物枠組み指令(WFD)等の廃棄物規制の整合・連携を図る動きの1つとして位置づけられます。


個別の法規制の強化に加え、各法規制が連携して循環型経済の実現を図るような動きは今後も進められていき、製品含有化学物質に関する規制の動向は、今まで以上に複雑になっていくものと想定されます。


(井上 晋一)

[i] 3物質の評価結果案

https://rohs.exemptions.oeko.info/index.php?id=349


[ii] ディスプレイのエコデザイン要件を定めた委員会規則((EU)2019/2021)

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32019R2021&qid=1576558657752&from=EN

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