当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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CEマーキングが求めるリスクアセスメント

2020年02月28日更新

RoHS(II)指令は決定768/2008/ECのモジュールAの適合性評価で“技術文書は関連する要求事項への適合性評価を可能にするものでなければならなく、適切なリスク解析とアセスメントを含めなければならない”としています。

リスクアセスメントは分かり難く、何をすればよいかを悩むとこころです。


日本の厚生労働省では、労働安全衛生法第28条の2第2項の規定に基づき、「化学物質等による危険性 又は有害性等の調査等に関する指針」を作成し、公表しています。(注1)

この指針で、「化学物質等により発生する負傷又は疾病の重篤度とその発生の可能性の度合(リスク)を見積 り(「リスクアセスメント」といいます。)、リスクに応じた対策を検討するものです。 事業者は、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて対策を講ずるよう努めてください。」としています。


この「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」のリスクアセスメント実施の流れは次です。


(1) 化学物質等による危険性又は有害性の特定

(2) (1)により特定された化学物質等による危険性又は有害性並びに当該化学物質等を取り扱う作業方法、設備等により業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又は当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度及び当該危険又は健康障害の程度(以下「リスク」という。)の見積り

(3) (2)の見積りに基づくリスク低減措置の内容の検討

(4) (3)のリスク低減措置の実施

(5) リスクアセスメント結果の労働者への周知


労働安全衛生法の指針ですが、RoHS指令などの特定化学物質の含有リスクに応用できるものです。


1.ブルーガイド2016の求めるリスクアセスメント

RoHS指令などのCEマーキング対応のガイドとしてブルーガイド2016(注1)があります。

ブルーガイド2016の2.3項(上市)で「上市はEU整合法令の適用に関する最も重要な時点である。」として、「適用される法規の必須要求事項に基づく設計は、リスクアセメント及び適合性評価、適合宣言書の発行、表示要求(CEマーク、製造者の名称、製造者の住所等)、技術文書の作成を経て、上市までに製造者によって完成されなければならない」としています。


「適用される法規の必須要求事項」に適合していることを「測定して確認しなければならない」であれば明確ですが、「リスクアセメント」が前提なっており、その手法が問われます。

ブルーガイド2016の1.2.1(概念)では、「製品に必須要求事項を適用するためには、十分に均質でなくてはならない」としています。

このため、対象製品と決定768/2008/ECのモジュールは、「製品の適合性手続き及び品質マネジメント評価」の両方を規定しています。

企業にとって顧客クレームやリコールなどは最も避けたい事項です。 ブルーガイド2016の1.4(製造物責任に関する法令)で指令85/374 / EEC(PL指令)(注3)を引用しています。


PL指令は、第1条で「生産者は、製品の欠陥に起因する損傷に対して責任を負う」とし、第4条で「負傷者(The injured person)は、損傷、欠陥、および欠陥と損傷の因果関係を証明する必要がある」としています。

しかし、第7条e項で「製品を流通させた時点での科学的および技術的知識の状態は、欠陥の存在を発見できるようなものではなかったこと」であれば責任を免除する「開発危険の抗弁」を認めています。


ブルーガイド2016の1.4では“the development risks defence”と記述していますが、直訳すれば「開発リスクの防御」となります。

新製品開発時点で、リスク評価をすることが、PL法対応になることを示唆しています。


2.RoHS指令(2011/65/EU) (注4)

RoHS指令ではリスクという用語は使用されていません。 第7条(製造者の義務)(b)項で「製造者は要求される技術文書(Technical Documentation:TD)を作成し、決定768/2008/ECの附属書IIのモジュールA(Internal production control:内部生産管理)により、内部生産管理手順の実施または実施させる。」としています。


モジュールAでは、次を要求しています。


1. 内部生産管理は、製造者が第2項、第3項及び第4項で規定された義務を果たし、対象製品に適用される法令の要求事項を満たすことを確実にし、製造者の責任で宣言する適合性評価手順(the conformity assessment procedure)である。


2.技術文書

技術文書は製品に関連する要求事項への適合性評価を可能にするものでなくてはならなく、適切なリスクの分析と評価を含まなければならい。(部分訳)


ブルーガイド2016の5.1.1(適合性評価とは)で「適合性評価とは、製造者が製品に対する特定要求事項が満たされていることを立証するプロセスである。 製品は設計及び製造段階の両方に適合性評価に従う」としています。

この適合性評価モジュールとしてRoHS指令では、モジュールAが特定されています。


RoHS指令などのNLF(New Legislative Framework)指令群は、ブルーガイド2016の4.1.2(整合規格)「整合規格がカバーする必須要求事項への見做し適合を与える」により整合規格により適合性評価をします。 端的には、整合規格に適合させれば法令に適合していると見做せることになります。

RoHS指令の必須要求事項は第4条(予防)による附属書IIの特定有害物質の非含有で、整合規格は官報で告示されたEN50581:2012です。


EN50581:2012は2023年12月7日にEN IEC 63000:2018に置き換わりますが、共に4.3.2項(必要な情報の決定)で、「材料、部品および/または組立品に必要な技術文書の種類は、製造業者による以下の適合性評価に基づくものとする。」とし、「(a)物質、部品、組立品に制限物質が存在する可能性)及び「(b)サプライヤの信頼性)」に基づくとしています。

さらに、「製造工程で添加される材料(はんだ、塗料、接着剤など)も、評価の一部とみなされるものとする。」の記述もあります。

RoHS指令は、上記(a)購入品、(b)サプライヤ及び製造工程が適合性評価の対象となります。 この3項目の組み合わせから適合性評価を行います。


3.低電圧指令やEMC指令の適合性評価

RoHS指令以外のNLF対象指令でのリスクアセメントを確認してみます。 RoHS指令は特定有害物質を含有させないことが必須要求事項で明快ですが、低電圧指令(2014/35/EU Directive LVD)(注5 )やEMC指令(2014/30/EU)(注6)などは、必須要求事項は明確ながらリスク要素は単純ではありません。

リスク要素をどのように特定し評価するかの考え方はRoHS指令の適合性評価に参考になります。


IEC61010-1(測定、制御、および実験用の電気機器の安全要件)では、「電撃に対する保護」「機械的危険に対する保護」「火災の広がりに対する保護」などが規定されています。 IEC61010-1の附属書Jに具体的な項目(例 機械的危険 巻き込まれ、押しつぶしなど)が示されています。

ブルーガイド2016の2.7項(意図した使用/誤使用)で、「製品の誤使用」について言及しています。 これは「合法的及び容易に予期できる人間の行為の結果である合理的に予見できる使用条件」が前提となっています。


予見する誤使用などをリストすると対象は非常に数多くなってきます。

リスクの見積は前記の労働安全衛生法の指針の「マトリクスを用いた方法」が利用できます。「マトリクスを用いた方法」はスクリーニング的ですが、中リスク(優先度)の場合は、他法で精査するなどをします。


4. BAT

化学物質規制での適合性評価の悩ましいのがコンタミです。最近ではPFOAが話題になっています。

PFOAはREACH規則の制限から移動して、POPs規則で2020年7月4日から規制されます。(注7)


PFOAの制限条件は次です。

(1) 2020年7月4日以降、自社で製造・販売してはならない。

(2)2020年7月4日以降、製造に使用してはならない、または市場に出荷してはならない:

(a) 別の物質の成分

(b) 混合物

(c) 成形品


基準は、「25ppb(parts per billion 1ppm=1,000ppb)以上の濃度のPFOA(その塩を含む)又は1, 000ppb以上のPFOA類物質の一つ又は組み合わせ)です。

除外要件に「6原子以下の炭素鎖を有するフッ素化合物の製造の不可避の副産物として生じる物質」があります。


「不可避の副産物」の解釈や対応に戸惑いがあります。

PFOAはPOPs条約の附属書A物質で、日本では化審法の第1種特定化学物質として規制されます。 POPs条約の附属書A物質は「廃絶物質」で、特定の要件のエッセンシャルユース以外は、濃度0%が要求されます。

しかし、現実は不純物、副生やコンタミでの混入がないことのどのように順法証明をするかが問題になります。 日本などのアジア圏の諸国は、企業の自主的対応より国が判定をする傾向があります。


化審法の第1種特定化学物質については、BAT(Best Available Technology/ Techniques利用可能な最良の技術」の原則により、その含有割合が工業技術的・経済的に可能なレベルまで低減していると認められるときは、当該副生成物を第一種特定化学物質として取り扱わないこととしています。

PFOAについては確認できませんが、審議会で検討されます。(注8)

経済産業省のホームページでは、「BATは、副生される第1種特定化学物質の低減方策と自主的に管理する上限値を設定し、厚生労働省、経済産業省、環境省に対して事前確認を受けた上で報告した場合、副生される第1種特定化学物質が上限値以下で管理されている限り、化審法の第1種特定化学物質として取り扱わないこととしております。」としています。(注9)


このホームページでは、BAT報告書に記載する事項の例として次項を示しています。

・副生第一種特定化学物質の名称とそれを含有する化学物質の名称

・自主管理上限値とその設定根拠

・管理方法(分析方法、分析頻度等)

・今後の更なる低減方策

・輸入元の国名と当該化学物質の製造社(輸入の場合)

・年間の製造・輸入(予定)量

・最終用途

・今後の検討課題

・副生のメカニズム


BATはEUと日本の考え方が違うように見えますが、根源の目的は同じですので、RoHS指令などの適合性評価も同様の厳しさが求められます。


適合性評価が最も厳格に要求されるのは、医療機器関係です。医療機器規則(Medical Device Regulation MDR 規則2017/745)や体外診断用医用機器規則(In Vitro Diagnostic Medical Devices IVDR 規則2017/746)では、適合性評価に加えて品質マネジメントシステムのISO13485(ISO9001のセクター規格)の運用が要求されています。

MDRについては、ISO14971(医療機器-リスクマネジメントの医療機器への適用)に手順が示されています。


MDRやIVDRはRoHS指令の対応にも参考になります。

「開発リスクの防御」の確証として、これらを参考にしたことなどが利用できると思えます。


なお、MDRやIVDRは2020年2月時点では、旧法との移行期間で未施行です。


(松浦 徹也)


注1:

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/0603-1.pdf

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000098259.pdf


注2:

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52016XC0726(02)


注3:

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/GA/TXT/?uri=CELEX:31985L0374


注4:

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:02011L0065-20190722


注5:

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32014L0035


注6:

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/TXT/?uri=CELEX%3A32014L0030 (1)LVD


注7:

https://www.tkk-lab.jp/post/reach20200110


注8:

http://www.env.go.jp/press/7039.html


注9:https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/about/class1specified_history.html#history8

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