当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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動いている? ブラジルRoHS&REACH

2020年05月08日更新

ブラジルの環境規制、化学物質規制の動向のご質問をいただくことがあります。 新型コロナの影響でテレワークが増えて、ネットでの情報調査が増えてのことと思います。


ご要望にお応えしてブラジルの状況を調べてみました。 ブラジルはポルトガル語ですので馴染みが薄く、RoHS法とREACH法を中心に情報を集めました。

情報は意訳ですので、解釈は原文をご確認ください。

1.ブラジルの化学物質規制

ブラジルといえば、1992年に国際連合の主催によりリオ・デ・ジャネイロで開催された環境と開発をテーマとする首脳レベルでの国際会議のリオサミットを思い出します。


その後も、ブラジルはホスト国として先進的な取り組みを行っています。リオ宣言、アジェンダ21の第19章と第20章及び2002年(リオ+10)のヨハネスブルクサミットを受けて化学物質管理への戦略的アプローチを「2004年6月3日法令第5098号(有害化学物質の環境緊急事態への予防、準備、迅速な対応のための国家計画の作成規定(P2R2:Plano Nacional de Prevenção, Preparação e Resposta Rápida))」として決定しています。(注1)

国家計画P2R2は国際整合を行っており、PIC条約、POPs条約やバーゼル条約も組み込んでいます。


国家計画P2R2は、次の指針で運用されています。

I 情報の原則

II 参加の原則

III 予防的アプローチ

IV 予防原則

V 賠償の原則

VI 汚染者負担の原則

ブラジルの化学物質管理は、2006年2月6日にドバイで採択された世界の化学物質の安全性を促進するための国際政策である「化学物質管理への国際戦略的アプローチ(SAICM)」を基本としています。(注2)


SAICMの一般的な目的は、2020年までのライフサイクル全体を通じて化学物質の適切な管理を達成し、人間の健康と環境への悪影響を大幅に最小限に抑える方法で製造および使用することです。

2020年のゴールの年ですが、新たな政策問題として次の5項目を掲げています。

(1)塗料中の鉛

(2)内分泌かく乱物質

(3)成形品中の化学物質

(4)ナノ物質

(5)電子機器のライフサイクル全体にわたる有害物質

SAICMのゴールを迎え、次の目標を「持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)」に次のように継承する取り組みをするとしています。 (注3)


化学物質と廃棄物の適切な管理は、SDGs No12「持続可能な生産と消費パターンの確保」の具体的な目標になっている。 責任ある消費と生産には、化学物質のライフサイクル全体にわたる体系的なアプローチと、生産者から最終消費者に至るサプライチェーン全体の関係者とセクター間の協力が必要である。 特に、目標12.4は2020年までに遵守するように設定されており、SAICM(国際化学物質管理のための戦略的アプローチ)の全体的な目標と一致している。

化学分野は重要な経済的要素であり、持続可能な開発を実現するための不可欠な要素である。 責任ある消費と生産に関するSDGsNo.12 は化学物質と廃棄物とは、将来の健康的な生活と健康的な地球の確保を意図している。 化学物質と廃棄物は開発のすべての側面に影響を与えることを考えると、化学物質と廃棄物の適切な管理は重要であり、SDGsのすべてではないにしても多くの実現をサポートする。

化学物質と廃棄物の適切な管理は、SDGsのすべての側面に関連しており、責任ある持続可能な消費と生産に加えて、健康に取り組むものを含む一連のSDGsに明確に反映されている。


さらに、それは暗黙のうちに貧困撲滅、農業、海洋、働きがいのある人間らしい仕事、気候変動の目的に関連しており、その貢献度はそれほど明白ではないが教育や男女共同参画などの分野でも重要である。

このように、ブラジルは、今後はSDGsで政策展開をするとしています。

2.ブラジルREACH

新たな政策目標の化学物質管理のREACHに関しては、一歩早く2016年6月に草案が出され、パブリックコメントが求められました。(注4)


パブコメ文書で制定意図などを記述しています。(注5)


パブコメ後の2018年9月に改定案が公開されています。(注6)(注7)


主要条項を確認してみます。

第1条

この法律は、国内における化学物質の生産、輸入及び使用から生ずる健康及び環境への悪影響を最小限にするため、既存物質、リスク評価及び管理について定める。

第5条

製造業者、輸入業者、および川下ユーザーは、上市する化学物質、混合物および成形品に責任がある。


化学物質自体の製造者および輸入者、または混合物の成分としての化学物質の使用者は、以下に対して責任がある。


I 化学物質の国家登録簿に情報を提供する。

II 必要に応じて、化学物質のリスク評価をサポートするために補足的な情報、研究、および安全データシートを提供する。

III 新しい化学物質に必要な情報を提示する。

IV データに変更があった場合、登録情報を更新する。

V適切で正確な情報を提供し、常に利用できるようにする。;

VI 化学物質審議委員会によって確立されたリスク管理措置を遵守する。

なお、国外事業者は専任代理人を指名し、これらの義務を果たすことができます。

3.ブラジルRoHS

ブラジルRoHSは検討中で、その紹介ページでRoHSの意図が示されています。(注8)

制定背景を次のように解説しています。(注9)


電気・電子機器は、企業や公的機関だけでなく、人々は多様な活動を行うために電気電子機器に依存している。


社会のあらゆる領域での使用を考えると、その使用に関して電気安全とエネルギー消費の観点からだけでなく、人の健康と環境に有害な可能性のある化学物質の存在を考慮して、そのコンポーネントの安全性に関しても消費者が情報を利用できるようにする必要がある。


電子機器の構成品を、安全基準を遵守せずに分解した場合、環境への汚染や皮膚への常時接触や吸入による人へのばく露などの一連の問題を引き起こす。


多くの開発途上国で発生しているように、土壌や水の環境への影響の可能性がある不適切な処分や環境に配慮しない燃焼が原因の大気汚染を引き起こす可能性さえある。

ブラジルRoHSはEU RoHS指令と同様に環境法の位置づけです。

根拠法は2010年1月19日付規範的指示第01号です。 この指示は、物品の取得、行政によるサービス又は工事の請負その他の措置における環境の持続可能性の基準を規定するものです。(注10)


第5条で具体的な指針が示されています。

連邦政府の行政機関および団体は物品、サービスを購入する場合は次の環境持続可能性基準が必要になる場合がある。

 (中略)

III 輸送および保管中の最大限の保護を保証するために、商品は、リサイクル可能な材料を使用して、可能な限り最小の容量で適切な個別パッケージに梱包する必要がある。

IV 水銀(Hg)、鉛(Pb)、六価クロム(Cr(VI))、カドミウム(Cd)、ビフェニル-ポリ臭素(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)など、RoHS指令(特定の有害物質の制限)で推奨されている濃度を超える危険物質が商品に含まれていないこと。


この規定の証明は、公的機関または認定機関が発行した証明書を提示することにより、または供給された商品が通知の要件に準拠していることを証明するその他の証明手段により作成できる。

審議会での審議の方向では、EU RoHS(II)指令(2011/65/EU)に準拠した対応となっていて、6物質の非含有宣言は、EU RoHS(II)指令の附属書VIの「EU 適合宣言」を推奨しています。


施行に向けてアンケートが取られています。78社の回答が分析されていますが、EU RoHS(II)指令を意識した内容となっています。(注11)


アンケートでは、RoHS対応の必要期間として5年あれば過半が対応できる結果となっていますので、公布後数年間の移行期間が想定されます。

特定有害物質は、指示第01号では6物質ですが、審議会はEU RoHS(II)指令に言及しています。 このため、特定有害物質はフタル酸エステルを含めた10物質が想定されますが、EU RoHS(II)指令対応でブラジルRoHS対応ができると思えます。

4.関連規定

PFOA(Perfluorooctanoic acid)のPOPs条約の批准と国内法制定が気になります。


POPsの国内対応は、現時点(2020.5.1)では、2017年のCOP 8までで、2019年のCOP9は対応していなく、PFOAはリストに入っていません。(注12)


PFOAの非含有管理が悩ましいところですが、国家POPs実施計画のなかで、PFOS(PFOAでなく)のBAT( Best Available Technology:利用可能な良の技術)が示されています。(注13)


ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)を含む廃棄物のリサイクルと処分のBATやヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)の使用のために利用可能な最良の技術上のガイドラインとベストプラクティスも示されています。(注14)(注15)


PFOAについてもBATが望まれます。

ブラジルREACH&RoHSの動きは、遅いようにも見えます。 しかし、このようにリオサミットのホスト国に学ぶことが多々あります。

(松浦 徹也)

引用

注1:https://www.planalto.gov.br/ccivil_03/_Ato2004-2006/2004/Decreto/D5098.htm

注2:

https://www.mma.gov.br/seguranca-quimica/gestao-das-substancias-quimicas.html

注3:

https://www.mma.gov.br/seguranca-quimica/gestao-das-substancias-quimicas/ods-e-gest%C3%A3o-de-subst%C3%A2ncias-qu%C3%ADmicas.html

注4:

http://hotsite.mma.gov.br/consultasubstanciasquimicas/?page_id=206

注5:

https://www.mma.gov.br/images/Consultas_Publicas/Consulta%20P%C3%BAblica%20-%20Sub.%20Qu%C3%ADmicas/Conhe%C3%A7a%20a%20proposta%20Inicial/Fundamenta%C3%A7%C3%A3o-PL-subst%C3%A2ncias-qu%C3%ADmicas-industriais-2.pdf

注6:

http://hotsite.mma.gov.br/consultasubstanciasquimicas/wp-content/uploads/sites/32/2018/11/Draft-Brazil-Chemical-Control-bill_English-Revised_Version-CONASQ-meeting-September_-2018_MMA.pdf

注7:

https://www.mma.gov.br/images/Consultas_Publicas/Consulta%20P%C3%BAblica%20-%20Sub.%20Qu%C3%ADmicas/Resultado/AntePL-Vers%C3%A3o-final-endossada-pela-Conasq-05-09-18.pdf

注8:

https://www.mma.gov.br/seguranca-quimica/gestao-das-substancias-quimicas/rohs-brasileira.html

注9:

https://www.mma.gov.br/images/arquivo/80059/GT%20Chumbo%20em%20Tintas/TDR_GT_RoHS_Brasileira%20FINAL.pdf

注10:

https://www.comprasgovernamentais.gov.br/index.php/legislacao/instrucoes-normativas/407-instrucao-normativa-n-01-de-19-de-janeiro-de-2010

注11:

https://www.mma.gov.br/images/arquivo/analise_do_questionario_en.pdf

注12:

https://www.mma.gov.br/seguranca-quimica/convencao-de-estocolmo.html

注13:

https://www.mma.gov.br/images/arquivo/80059/Traducao%20-%20UNEP-POPS-BATBEP-GUID-PFOS-201701.En_final.pdf

注14:

https://www.mma.gov.br/images/arquivo/80059/Traducao%20-%20UNEP-POPS-BATBEP-GUID-PBDE-201701.En_final.pdf

注15:

https://www.mma.gov.br/images/arquivo/80059/Traducao%20-%20UNEP-POPS-BATBEP-GUID-HBCD-201701.En%20final.pdf

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