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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q709.EUがポリマーを含むPFASを規制の対象にしていることについて

執筆者の写真: tkk-labtkk-lab

2025年02月28日更新

【質問】

EUでは、なぜポリマーを含むPFASが規制の対象に挙がっているのでしょうか?

_________________________________________


【回答】

ご質問の通り、EUではユニバーサルPFAS規制(*1)として、ポリマーを含む広範囲のPFASについてREACH規則における制限が提案されています(*2)。この制限案において、ポリマーを対象範囲に含めているのは、環境中へ放出された際などに分解がすすみ、人体などへの有害性が確認されている非ポリマーPFASが生成する可能性があるためとされています。以下に、ユニバーサルPFAS制限案の内容について記載します。


◆ユニバーサルPFAS制限案に関する報告書(*3)

ユニバーサルPFAS制限案では、ポリマーPFAS自体の有害性に関して、毒性情報を含む研究が少なく有害性の特定が困難としています。よって、ポリマーPFASに対する制限は、予防原則に応じた処置と考えられます。ポリマーPFASの分解プロセスは、フッ素化された構造と結合する非フッ素化部分から進行し、分子を小さくしながらフッ素化されていない炭素原子が酸化されることによりパーフルオロアルキルまたはパーフルオロアルキル (ポリ) エーテル酸に変換されていくと考えられています。ポリマーPFASはライフサイクルのどこかの時点(特に寿命末期)において、有害な非ポリマー PFASを生成する可能性が指摘されています。


上記の記載内容からポリマーPFASについて懸念されているのは、廃棄物段階またはリサイクル段階において環境へ放出され、分解プロセスを経て有害なPFASの発生源となることと考えられます。調査による推定ではフッ素ポリマー廃棄物の約 15% が埋め立てられ、80%がエネルギー回収を伴う焼却(都市廃棄物)によって処理されていることが示されています。焼却処理については、焼却中に非ポリマーPFASが生成され、放出される可能性があるとしています。また、使用後にリサイクルされることを意図した材料にポリマーPFASが含まれている場合、リサイクルプロセスなどにおいて環境へのPFASの排出源となる可能性があるとの指摘があります。

モニタリング調査ではフッ素ポリマーがマイクロプラスチックとして環境中に存在することが確認されており(*4)、ポリマーPFASを規制しない場合、現状の環境中への放出が継続するものと考えられます。

制限案では上記以外の間接的な要因として、フッ素ポリマーの製造に使用されるPFASベースの加工助剤の環境への放出も懸念しています。


ポリマーPFASを使用した製品はユニークな特性を示すため、その規制は産業界への影響も大きいと想定され、用途によっては代替が難しいとの意見も聞かれます。現在、この制限案はリスク管理委員会(RAC)、社会経済分析委員会(SEAC)で検討している状況です。2024年11月に公表された進捗状況では(*5)、ポリマーPFASに関して懸念事項となる使用用途や代替品の利用可能性、制限することによる社会的影響などについて知見が深まったとしており、規制するのが適切なのか判断するための情報収集をしている段階のようです。今後、検討がさらに進みポリマーPFASの制限が特定されるのか注目されるところです。


(*1)EUのユニバーサルPFAS規制案の検討状況について

(*2) ECHA PFAS類の制限提案

(*3) ECHA PFAS類の制限提案 報告書

(*4) ECHA PFAS類の制限提案 報告書 ANNEX B

(*5) PFASの規制プロセスの進捗状況(2024年11月20日)

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