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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

執筆者の写真tkk-lab

Q617.電子機器の制限物質対応について

2022年02月25日更新

【質問】

弊社は電子機器(ユニット)を製造して国内の顧客の要求でRoHS対応しております。REACH対応について質問です。認可は対象外と認識していますが、制限物質についてはどのように対応すべきでしょうか。

 

【回答】

EUのRoHS指令(2011/65/EU)(*1) に対応済みということは、規制対象の鉛・水銀・カドミウム・六価クロム・ポリ臭化ビフェニール(PBB)・ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)・4種のフタル酸エステル類(DEHP・DBP・BBP・DIBP)の10成分が、製造している電子機器に非含有(もしくは最大許容濃度以下)であることを確認されているということです。 CEマーキングは最終製品でないユニットを供給されているのなら対応不要です。


次に、EUのREACH規則((EC)No 1907/2006)(*2) は、化学物質の登録・認可・制限について規制するもので、貴社が提供する電子機器(ユニット)に含まれる物質が規制されています。


1.REACH規則の制限

「制限」は、REACH規則第8編第67条で規定され、附属書XVII(*3)「製造、上市、および特定の危険物質、混合物、物品の使用に関する制限」にNo.76(2022年3月1日追加分)までの物質が挙げられ、物質ごとに制限条件が定められています。


直近では、2021年11月にNo.76として、N,N-ジメチルホルムアミドが追加されました。 ただしこの物質の制限条件では、同物質および同物質を0.3%以上含む混合物が対象となっているため、貴社が提供する電子機器(ユニット)は対象外となります。


一方、2021年8月にNo.68「C9-C14 PFCA類とその塩類および関連物質」が新たに制限対象となりました。 この物質の制限条件では、C9-C14 PFCA類とその塩類の合計が25ppb以上、またはC9-C14 PFCA関連物質が合計260ppb以上含有する物質・混合物・成形品の使用や上市が禁止されているため、適用除外用途に該当しない場合には貴社が提供する電子機器(ユニット)も含有制限に対応することが求められます。


2.REACH規則の認可およびCLS

「認可対象物質」は、REACH規則第7編「認可」第56条に規定されています。 第57条には認可対象物質の基準、第58条1(c)には「日没日」(認可を受けないと上市や使用ができなくなる日)を規定しています。 附属書XIV「認可の対象となる物質のリスト」(*4) に54物質(2020年5月5日改正)が挙げられています。


「認可対象候補物質」(CLS:Candidate list of Substances of Very High Concern for Authorisation)は、「認可対象物質」に指定する候補の物質で、認可候補物質リスト(Candidate List)に収載された物質です。 第59条に物質選定手順が定められていて、EU委員会の要請でEU加盟国またはECHAが「高懸念物質」(SVHC:substances of very high concern)を提案し、45日間の協議の結果、SVHCであると識別されるとCLSとしての認可候補物質リストに加えられます。 その後、さらなる検討を経てCLSから「認可対象物質」が指定されますが、その場合でも「認可対象候補物質」のリストに削除されず残ります。


CLSに指定されるとEU域内の供給者は直ちに次の義務(*5) を負います。

・安全データシート(SDS)の提供【化学品の場合】

・安全な使用に関するコミュニケーション(情報提供)【成形品の場合】

・消費者の要求に、45日以内に対応すること【成形品の場合】

・製造者(輸入者)あたり年間1トンを超える量が製品に含まれている場合や、製品に0.1%(w/w)を超える濃度で存在する場合は、ECHAに通知すること【成形品の場合】


認可候補物質リストは、欧州化学品庁(ECHA:European Chemicals Agency)のWebサイトで公表(*6) されていて、223物質が記載されています(2022年2月23日現在)。


3.貴社製品の製品含有化学物規制への対応

ご質問のとおり貴社が提供する電子機器(ユニット)のようなEU域外で製造された輸入成形品は、REACH規則の認可規制対象外です。 また、CLSには、RoHS指令やREACH規則の制限のような含有制限が課せられていないので、含有していること自体は問題ありません。


REACH規則の制限物質については、それぞれ物質ごとの制限条件を確認し、貴社が提供する電子機器(ユニット)が対象となる物質を特定する必要があります。 その上でRoHS指令への対応と同様に、貴社製品中の含有状況を確認し、制限を順守することが求められます。


また、貴社の製品中にCLSが0.1wt%超含まれている場合には、EU域内の輸入者が第33条「成形品中の物質に関する情報伝達義務」等に対応するため、貴社が提供する電子機器(ユニット)中の含有情報を顧客に伝達することが求められます。


このようにRoHS指令やREACH規則の製品含有化学物質規制に対応するためには、規制対象化学物質が、貴社製品の部品や原材料に存在するかどうかを細かく確認する必要があります。 そのためにはサプライチェーンを通じた製品含有化学物質情報の伝達が必要不可欠であり、貴社においても、貴社製品を構成する購入品の供給者に情報提供を求め、得られた情報を統合して貴社製品中の含有状況を管理することが必要になります。 そのためのツールとして、アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)のchemSHERPA(ケムシェルパ)(R)などのツール(*7) が提供されています。サプライチェーン上のすべての事業者が利用することで、情報交換が容易になります。


4.化学品を対象としたREACH規則の主要義務

貴社が提供する電子機器(ユニット)は成形品であるため、規制対象とはなりませんが、化学品(物質や混合物)をEUに輸出するような場合には、成形品に適用される義務以外にも考量すべき事項がいくつかあります。

・物質および混合物中の物質の登録

・CLSや危険有害性を有する物質・混合物の情報伝達

・物質・混合物の使用や上市に対する認可 など


特に、「登録」はREACH規則の最も大きな義務といえ、登録されていない物質(免除された物質や製造・輸入量が年間1トン未満の物質を除く)は、第5条「データなければ、上市なし」によって、物質の製造者又は輸入者がEU域内で販売できません。 なお、すでに登録された登録物質リストは、ECHAのWebサイトで公表(*8) されていて、2020年12月公表データには23,272物質が記載されています。


(*1) EU RoHS指令 Directive 2011/65/EU


(*2) EU REACH規則 Regulation (EC) No 1907/2006


(*3) ECHAの制限物質リスト Substances restricted under REACH


(*4) ECHA: 認可物質リスト Authorisation List

List of substances included in Annex XIV of REACH.


(*5) ECHA:Substances of very high concern (SVHCs)の識別


(*6) ECHA: 候補物質リストCandidate List


(*7) JAMP:chemSHERPA(ケムシェルパ)(R)


(*8) ECHA: 登録物質の世界(REACH規則で登録された全物質リストは、ページ末尾の「I have read the disclaimer」にチェックを入れるとダウンロードリンクが現れます。)

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