2023年08月24日更新
【質問】
ストックホルム条約の締約国会議にて同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された物質は、その後どのくらいで化審法での規制がはじまるのでしょうか?
【回答】
残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants:以下POPs条約)の締約国会議にて、同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された物質は、POPs条約第22条に基づき国連事務総長から採択の通知がされた日から1年を経過した日(以下発効日)に発効し、締約国は国内法を整備することになっています1)。
但し、締約国は、第22条3項(b)で受諾拒否、又は受諾拒否後に第25条4項で受諾書を提出し90日後での発効の選択も可能です。
ご質問の、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)での規制開始の時期については、締約国会議での採択後に経済産業省、厚生労働省及び環境省の3省合同で規制に向けた手続きが行われますが、その手続き状況よって規制開始までの期間は変わっています。
POPs条約第7条に基づき、締約国は国内での実施計画を策定し実施します。日本での最初の国内実施計画は、2005年に策定されました。 その後の締約国会議での対象物質追加の採択を受けて、2012年、2016年及び2020年に国内実施計画の見直しを行い改定しています2)。 2020年の改定では、POPsに関する放出削減等の措置など諸施策に関して、2018年の改定以降の状況及び新規追加物質に対する取り組みについて追加記載しています。
POPs条約の附属書A(廃絶)に追加された物質に対する化審法の対応は、経済産業省、厚生労働省及び環境省の3省合同で手続きをしており、3省合同の審議会において、製造・使用等の原則禁止など以下の措置が検討されます。
(1)当該化学物質を第一種特定化学物質に指定すること。
(2)例外的に使用を認める第一種特定化学物質の特定用途を指定すること。
(3)取り扱う場合の技術上の基準を定める第一種特定化学物質が使用されている製品を指定すること。
(4)輸入を禁止する第一種特定化学物質が使用されている製品を指定すること。
3省合同の審議会での決定後、改正案のパブリックコメント(以下パブコメ)および世界貿易機構(WTO)の貿易の技術的障害に関する協定に基づく事前通報(以下TBT通報)を経て、化審法施行令の改正の公布と施行となります。
具体例として、ペルフルオロオクタン酸(以下PFOA)とその塩及びPFOA関連物質に関する化審法の規制状況を紹介します。
PFOAとその塩及びPFOA関連物質は、2019年5月のPOPs条約締約国会議(COP9)で附属書A(廃絶)への追加が決定されました。 締約国への通知は、2019年12月3日にありましたが、日本は受諾拒否をしています3)。
しかしながらCOP9での決定を受けて、2019年7月24日に3省合同の審議会が開催され、PFOAとその塩及び PFOA関連物質について第一種特定化学物質に指定することが適当とされました4)。
同年9月に必要な措置をまとめ、11月からパブコメを行った結果、エッセンシャルユースの指定等について追加の検討が必要であることがわかり、スケジュールが変更されました5)。 その後、見直しが進められて、2021年4月にPFOAとその塩については、第一種特定化学物質に指定する改正政令が公布され、同年10月22日に施行されました6)。 締約国会議での追加決定から約1年11カ月後にあたります。
なお、PFOA関連物質の化審法第一種特定化学物質への指定、エセンシャルユースの指定、及び輸入規制製品等にかかる措置に関しては、さらに検討が行われており、2023年春以降に改正政令の公布、2023年秋以降に施行との説明がありますが7)、現時点で公布はされていません。
以上のように、物質によって化審法の指定までの状況は変わりますが、3省合同審議会の審議状況を確認することで、化審法への反映時期をある程度予測することはできます。
1) POPs条約
2) POPs条約に基づく対象物質の国内実施計画
3) POPs条約附属書修正の受諾拒否
4) 3省合同審議会(PFOAとその塩及び PFOA関連物質について化審法第一種特定化学物質の指定について) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05849.html
5) 3省合同審議会(化審法第一種特定化学物質の指定時期の見直しについて)
6) 化審法施行令の改正政令(PFOAとその塩を第一種特定化学物質に指定)
7) 化学物質管理政策の最近の動向と今後の方向性について(p9)
Komentáře