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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

REACH規則の登録要求変更に対する企業の対応

2022年04月01日更新

委員会規則 (EU) 2021/979 of 17 June 2021 (以降「委員会規則」と略称)  1) によりREACH規則附属書Ⅶ~ⅩおよびⅪが修正され2021年7月8日に発効し、2022年1月8日から施行されています。


上記、「委員会規則」の前文にはREACH規則附属書ⅦからⅩおよびⅪについての修正理由が以下のように記載されています。

(5) 金属および難溶性の金属化合物の表面張力および水溶性に関する情報要件についてREACH規則附属書Ⅶの物質の物理化学的特性に関する情報の特定を明確にする必要がある。

(6) REACH規則附属書Ⅶの毒性学的情報に関する特定の規定は眼刺激性に関する生体外 (in vitro) 試験実施における登録者の義務とECHAの責任の明確化の目的のために修正する必要がある。

(7) REACH規則附属書Ⅷの毒物学的情報に関する規定は、不明確であるため換言することが必要である。特に、皮膚または眼の刺激性に関する生体内 (in vivo) 試験および28日間反復投与毒性試験の実施に関するものである。

(8) 解離定数と粘度に適応するための新しい特定の規則を追加するためにREACH規則の附属書Ⅸの物質の物理化学的特性情報に関する規定を明確にする必要がある。

(9) REACH規則附属書Ⅹの毒性情報に関する規定で亜慢性毒性試験を実施する必要がない場合について、特定の説明が必要である。

(10) REACH規則附属書Ⅹのオクタノール水分配係数が適切でない場合にのみ環境中の運命と挙動に関する関連研究の実施を免除することを排除するために修正しなければならない。

(11) REACH規則ⅨおよびⅩにおいて分類に基づく免除オプションはCLP規則第3条

の用語と一致していなければならない。

(12) REACH規則附属書Ⅺの標準試験体制への適合の一般的な規則は、特に既存のデータ使用、証拠の重み、物質のグループ化に関連した適用の曖昧さを回避するために修正が必要である。

(13) REACH規則附属書Ⅺの既存データと見做すことができる場合に関する不確実性、附属書Ⅸサブセクション1.1で使用されている用語は、第13条 (3), (4) に合わせて明確にする必要がある。REACH規則の規定用語との整合性を確実にするために優良試験所への言及は削除する必要がある。

(14) REACH規則附属書Ⅺの「証拠の重み」の適用を特定の情報要件に適用する方法と文書化する方法を明確にする必要がある。

(15) 構造的類似性の確立に関しREACH規則附属書Ⅺに定められている規則の明確化、特に未知、可変の組成物質、複雑な反応生成物および生物学的物質を含むリードアクセスのための文書化要求については更に明確化が必要である。加えて、ガイダンスは既に公開されているため、このトピックにガイダンスを発行しているECHAへの参照は削除することが必要である。

(16) REACH規則附属書Ⅺの「物質に合わせた暴露駆動試験」のセクションの脚注はその視認性を高めるために本文に移動することが必要である。最後にそのセクションの規定は、法的文書を明確化し、毒物学的情報に関する変更と一致させるために修正しなければならない。

(18) 推奨された修正案は、特定の情報要件の明確化を提供し、ECHAにより既に適用されている評価慣行の法的確実性を高めることを目的としている。それにもかかわらず、修正された規定が登録書類 (ドシエ) の更新のトリガーとなる可能性があることを破棄することはできない。したがって、本規則の適用は延期されるべきである。


ECHAは、上記の「委員会規則」に対し、コメントやアドバイスを公開していますのでそれらを以下に紹介します。


1. 2021年6月29日付ニュース 「REACH情報要求に対する来るべき変化」(ECHA / NR /21 / 19) 2)


欧州委員会はREACHにおける登録化学物質の特定情報要求を変更しており、2022年の早期に適用が開始されます。それに対して企業は準備を開始する必要があります。 ECHAは2021年後半に更なる助言を公開するものと思われます。


REACH附属書の更新は企業が登録で届出る必要な情報を明確にし、ECHAの評価実施を更に透明で予測可能にしています。「委員会規則」は2021年7月8日に発効し2022年1月8日から施行されます。


関連する主要変更内容は以下


・金属および微量溶解性金属化合物の表面張力および水溶性要求

・眼刺激性に対する体外テストまたは皮膚および眼に対する体内テスト要求

・28日および90日反復用量毒性研究に対する要求と適用

・再生毒性研究適用に対すると規定規則

・以下に基づき適用される一般規則

既存データの使用

証拠の重み

物質に合わせたばく露促進試験 および

物質のグループ化 特に、UVCB物質のグループ化

・低オクタメール-水分配係数に基づく環境中の運命および振舞に関する研究に適用するための新ルール

・解離定数および粘度に対する適用の新ルール  および

・適切な高用量レベルで実施される人の健康および環境テストに対する追加要求


ECHAは、ガイダンスを更新中で2021年に向け、登録者に対して更にアドバイスを公表ものと思われます。


2. 2022年1月18日付ニュース「毒性テストにおける用量レベル決定のためのアドバイス 」ECHA / NR / 22 / 02  3)


企業は、物質の安全に関する毒性テストの正しい物質用量を選択する必要があります。 そのことは、「委員会規則」で明確化されており2022年1月8日から適用されています。 関連するECHAのアドバイスは企業が反復の動物テストを回避しながら信頼できる結果を確実にすることを支援します。


企業が毒性テストから生成させたデータは、対象物質の有害性を特定し、リスク評価するために適切でなければなりません。 また企業は、動物テストを実行する場合対象動物の厳しい苦痛を回避しなければなりません。


毒性テストはOECDテストガイドライン (注1) 4) に対応し適切な高用量レベルで実施する必要があります。 このことは、化学物質が安全に使用され、テストが繰返される必要がないことを結論づけることを確実にします。


(注1)

OECDのガイドラインにおいては、高用量の動物ばく露試験結果をヒトの低用量ばく露に外挿することが妥当であるかを考慮することが求められています。


因みに、米国TSCAでは、フタル酸エステルのDEHPの試験において、動物試験では発がん性が認められたものの、ヒトには発がん性が認められなかったことでの論争が行われていました。


繰返し用量毒性および再生毒性に対する用量選択の適用に関するECHAのアドバイスはOECDのガイドラインおよびガイダンスドキュメントに一致しています。


3.2022年2月28日付ニュース「貴社の登録のREACH情報要求実現方法 」5 )

ECHAは、登録ドシエの遵法チェックを通じて、REACHの情報要求の変更に対し、登録者がうまく適合できるように改善勧告を行っています。


すなわち、その勧告は、リードアクロス (注2) および証拠の重みまたはその2つのアプローチの組合せをいかに適用するかという採択に関するルールに関連しています。


(注2)

リードアクロスとは、予測を行いたい物質 (ターゲット物質) に対して類似性のある物質 (ソース物質) のデータを用いてターゲット物質の毒性等のエンドポイントのデータギャップの穴埋めを行う方法です。


それらのアプローチは、もしそれらが評価するのに十分な情報を持っている頑強な方式で正当化されるならば、更なる動物テストを行うことなく法的要求を実施するために使用されるべきであるとしています。


また、その勧告は、UVCB物質間のリードアクロスの扱い方に関する提言を含んでおり、同時に毒性テストに対する用量設定について追加アドバイスを含んでいます。

登録者は、最近の勧告および「委員会規則」により修正されたREACHの附属書をチェックし、必要な場合にはドシエを情報要求に適合しなければならないとしています。


2021年にECHAは2,100以上の登録ドシエに対し341物質を指定し371の遵法チェックを実施しています。 チェック対象中の300物質は、所謂完全遵法 (フルコンプライアンス) チェックで、潜在懸念物資に該当するすべてのエンドポイントを取扱っています。


それらは人の健康または環境に関する長期間の効果を証明するために更なるデータを要求している企業に対し、280の決定草案を要求しています。


総体的にいえば、2009年~2021年においてECHAは2,500の登録物質のコンプライアンスチェックを実施していました。

ECHAはまた、2021年に潜在懸念物質の安全性を評価するための更なる情報要求に対する10物質の評価決定を採択しています。

それ等の中には、もしその物質が吸入されれば人の健康へのリスクの可能性のある二酸化チタンのナノ物質の毒性が含まれています。

2021年に評価された全物質リストには、企業に対する詳細な情報要求が含まれています。


まとめ

我国において化学物質を製造もしくはEUに輸出している事業者およびORを通じてREACH登録している事業者は、最近の勧告および修正されたREACH規則 (委員会規則) の附属書のチェック行い、必要な場合には登録文書 (ドシエ) の情報要求見直しを行い、REACH第22条 (登録者の追加の義務) に従い必要なドシエの修正情報を提出することが求められます。


(担当 : 瀧山 森雄)


引用

(Commission Regulation OJ)


(ECHA/NR/21/19)


( ECHA/NR/22/02)



(ECHA/NR/22/06)

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