当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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米国EPA(環境保護庁)のPFAS戦略ロードマップについて

2022年06月03日更新

近年、世界的にPFASの規制が強化されています。 米国でも2020年7月に長鎖パーフルオロアルキルカルボキシレートおよびパーフルオロアルキルスルホネート化合物に関する重要新規利用規則(SNUR) (*1)が公開され、TSCA(Toxic Substances Control Act: 有害物質規制法)によるPFAS規制が強化されました。 PFASとは、フッ素が含まれる有機化合物の総称で、パーフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(Per- and polyfluoroalkyl substances)の略称です。PFASの種類は数千種あり、1940年代からさまざまな製品に使用されてきた合成化学物質群です。 分解されにくいために体内に蓄積され、生殖への影響、子供の発達への影響、がんのリスク増加、免疫システムの能力低下、ホルモンへの影響、コレステロール値の上昇・肥満のリスク (*2) があります。 2021年10月には、EPA(環境保護庁)からPFAS戦略ロードマップ「PFAS Strategic Roadmap: EPA’s Commitments to Action 2021-2024」 (*3) が発表されました。


1. PFAS戦略ロードマップの概要

EPAのPFAS戦略ロードマップでは、2021年から2024年までの3年間にEPAがコミットする取り組みについて説明されています。 PFAS汚染の問題は簡単に解決できるものではありません。 PFASは現在でも流通されている製品に使われている物質であるため、製造から使用、廃棄までライフサイクル全体を通して、人の健康および環境への影響を考慮する必要があります。 PFAS汚染を修復するためには、川下側で排出されるものを除去すれば良いというものではなく、そもそもの大気、土壌、水への流入を防ぐことができるよう、川上側で問題の源を捉えなければなりません。 PFASの毒性やばく露経路を理解するため、PFAS汚染を修復するため、科学的な課題を追求することも必要です。 そして、PFAS汚染を発生させてしまった者に責任を負わせることや、不利な立場にある地域社会が解決策から公平な利益を得られることも重要です。 これらの考え方を反映した以下の5つのアプローチがこの戦略ロードマップでは取り上げられています。

・Consider the Lifecycle of PFAS(PFASのライフサイクルを考慮)

・Get Upstream of the Problem(問題の源を捉える)

・Hold the Polluters Accountable(汚染者の責任を追及)

・Ensure Science Based Decision Making(科学的根拠に基づく意思決定の確保)

・Prioritize Protection of Disadvantaged Communities(不利な立場にある地域社会の保護を優先)

また、PFAS戦略ロードマップにおける達成するゴールとして、RESEARCH(研究)、RESTRICT(制限)、REMEDIATE(修復)が挙げられています。 RESEARCHのゴールでは、研究、開発、イノベーションへの投資により、PFASのばく露と毒性、人間の健康と生態系への影響、および利用可能な最善の科学を取り入れた効果的な介入に関する理解を深めることが、RESTRICTのゴールでは、包括的なアプローチの追求により、人の健康や環境に悪影響を及ぼすレベルのPFASが大気、土壌、水に入り込むことを防止することが、REMEDIATEのゴールでは、PFAS汚染の浄化の拡大および加速により、人の健康と生態系を守ることが目指されます。


2. EPAによるPFASへの具体的な取り組み

PFAS戦略ロードマップには、EPA内の各組織(化学品安全・公害防止室、水質管理室、国土・災害対策室、大気・放射線管理室、研究開発室)によるアクションについても、数多く解説されています。 例えば、化学品安全・公害防止室が取り組むアクションとしては、国家PFAS試験戦略の公表(2021年10月発表済み)、TSCAに基づく新規PFASの審査プロセスの確保(継続中)、既存のPFASが懸念のない方法で使用されていることの確認および古くから使われているPFASの生産再開や新たな方法での使用防止のためのTSCAに基づく既存PFASの見直し(2022年夏予定、継続中)、有害物質放出目録(TRI)のもとでのPFAS報告の強化(2022年春予定)、TSCA第8条に基づく新しいPFAS報告に関する規則案の最終化(2022年冬予定)があります。

また、最新情報として、EPAより以下の発表 (*4) がなされており、PFASへの取り組みが継続して進められていることがわかります。

・2022年1月24日 PFBSを含む4種類のPFASを有害物質排出目録(TRI)に追加

・2022年3月16日 商取引におけるPFASに対処するためのアクションの継続

-フッ素化HDPE(高密度ポリエチレン)容器と同様のプラスチック(フッ素化ポリオレフィン)の製造(輸入)者、加工業者、流通業者、使用者、廃棄者に対して、これらの容器に、PFASが副産物として生成され存在する場合のTSCA違反の可能性を通知

-より安全な化学物質成分リスト(SCIL: Safer Chemical Ingredients List)から2種類のPFASを削除

・2022年4月28日 PFAS戦略ロードマップにおける水に関するコミットメント(水中のPFAS検出方法の改善、PFASの国内水域への排出削減、PFASからの魚類と水生生態系の保護)を発表


3. 最後に

米国ではEPAがPFASの規制に向けた取り組みを重点的に行ってきました。具体的なPFASに関する規制として、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)やPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)等は、TSCAのSNUR対象物質となっています。 PFAS戦略ロードマップに見られる通り、米国は今後もPFASの問題に注力していくでしょう。


PFASは残留性有機汚染物質(POPs)ですが、PFOAとその塩およびPFOA関連化合物はストックホルム条約(POPs条約)(*5)の附属書Aとして製造や使用が禁止され、PFOSは附属書Bとして製造や使用が制限されています。 米国はストックホルム条約を批准していませんので、米国におけるPFASに関する規制は、対象物質やエッセンシャルユースなど、ストックホルム条約とは異なる部分があります。 それ故、米国におけるPFAS規制は、EUのPOPs規則やREACH規則の制限、また、日本の化審法などとも微妙に違うため、戸惑うことがあります。


(岡本 麻代)


引用

*1長鎖パーフルオロアルキルカルボキシレートおよびパーフルオロアルキルスルホネート化合物に関する重要新規利用規則

https://www.federalregister.gov/documents/2020/07/27/2020-13738/long-chain-perfluoroalkyl-carboxylate-and-perfluoroalkyl-sulfonate-chemical-substances-significant


*2 PFASの人間の健康と環境リスクに関する現状の理解

https://www.epa.gov/pfas/our-current-understanding-human-health-and-environmental-risks-pfas


*3 PFAS Strategic Roadmap

https://www.epa.gov/pfas/pfas-strategic-roadmap-epas-commitments-action-2021-2024

*4 PFASに関するプレスリリース

https://www.epa.gov/pfas/press-releases-related-pfas


*5残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POP)

http://chm.pops.int/TheConvention/Overview/TextoftheConvention/tabid/2232/Default.aspx


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