当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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続REACHにまつわる話

2022年11月25日更新

過去に、J-NET21にREACHにまつわる話を書かせていただいていました。読んでいただいていた方がおられるかもしれませんが、それからかなりの時間も経ちました。


今回は、改めて、新しく化学物質管理に携われた方にも理解していただけるように、少し基礎に立ち戻りながら、REACH、CLP規則における化学物質規制、特に人の健康、環境への悪影響の恐れがある化学物質を例として、物質の特定の仕方について、ご紹介したいと思います。


REACH制定以前の、人の健康、環境への悪影響の恐れがある、「特定の危険な物質と混合物の製造、上市と使用に関する制限」(1)は、REACHの付属書XVII に引き継がれています(2)。


これに加えて、REACHにおいては、法的義務の新たに 人の健康、環境への悪影響の恐れがある物質を「SVHC」として、認可の対象とする記載が設けられました。

「SVHC」は、Substances of Very High Concernの大文字部分を取った略語で、日本語に訳すと「高懸念物質」ですが、EUに化学品や製品を輸出しておられる皆様は特に気にしておられることと思います。


「SVHC」ついて、守られなければならない法的規制については、本HPのQ&Aやコラムで紹介されていますので、詳細は省略しますが、下記の3段階での対応が必要になります。


①認可のためのSVHC候補物質リスト(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation(3);以下、CLSとします。)の公表。

CLSに収載された物質をSVHCとして広く使われていますが」、ECHAのホームページの説明を訳しますと上記のようになります。本コラム執筆時点(2022年11月23日)では224件がリストされています。

②CLSから優先順位をつけて認可対象物質、すなわち、付属書XIVへの収載の公布(Authorisation List(4):認可物質リスト)

本コラム執筆時点(2022年11月23日)では、付属書XIVに 59件が収載されています。

収載時には、定められた日以降、認可が認められていなければEU域内ではその物質が使用できない日(日没日)が設定されています。 認可申請は、日没日の18か月前までに申請をしなければなりません。

③EU域内で、使用するための認可申請の提出


現在、REACHに関する情報な紹介記事では、「①のCLS」に収載された物質を「SVHC」が用いられていますが、本コラムではECHAの記述に倣って記載します。


ECHAのHPでは、下記のように有害性のある物質が、SVHC として特定される場合があるとしています(5)。(条文はREACHの第57条にあります。)


・CLP 規則に従って発がん性、変異原性または生殖毒性 (CMR) カテゴリー 1A または 1B として分類するための基準を満たす物質。

・REACH 附属書 XIII の基準により、難分解性、生物蓄積性および毒性 (PBT) または非常に難分解性かつ高生物蓄積性 (vPvB) である物質。

・CMR または PBT/vPvB 物質と同等レベルの懸念を引き起こす物質。

具体的な例としては、内分泌かく乱性の物質


EUにおける、認可、制限CLP規則の分類等、「懸念のある物質」へ対処方法が説明されています(6)。


その方法では、物質の構造が類似したものをグループ化し、登録情報から、それらの物質をどのように管理・規制するかが検討されています。(7)


現在のCLSや認可対象リストから、皆様に関心が大きいフタル酸エステルを取り上げ整理してみたいと思います。


CLSや認可物質リストに収載されているフタル酸エステルには、下記の物質があります。


(a)フタル酸エステルを表すphthalateの名称を用いたもの

(ⅰ)Bis(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)

(ⅱ)Benzyl butyl phthalate (BBP)

(ⅲ)Dibutyl phthalate (DBP)

(ⅳ) Diisobutyl phthalate (DIBP)

(ⅵ) Diisopentyl phthalate

(ⅶ)Bis(2-methoxyethyl) phthalate

(ⅷ)Dipentyl phthalate

(ⅸ)n-pentyl-isopentyl phthalate

(ⅹ)Dihexyl phthalate


(b)1,2-ベンゼンジカルボン酸のエステル名称を用いたもの

(ⅺ)1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C6-8-branched alkyl esters, C7-rich

(ⅻ)1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C7-11-branched and linear alkyl esters (xiii)1,2-Benzenedicarboxylic acid, dipentyl ester, branched and linear

(xiv)1,2-Benzenedicarboxylic acid, dihexyl ester, branched and linear

(xv) 1,2-benzenedicarboxylic acid, di-C6-10-alkyl esters or mixed decyl and hexyl and octyl diesters with ≥ 0.3% of dihexyl phthalate

(xvi) 1,2-Benzenedicarboxylic acid, mixed decyl and hexyl and octyl diesters

(xvii) 1,2-Benzenedicarboxylic acid, di-C6-10-alkyl esters


1,2-ベンゼンジカルボン酸は、ベンゼン-1,2-ジカルボン酸と言われますが、フタル酸の別の呼び方です。化学式はC6H4(COOH)2です。


(b)の1,2-ベンゼンジカルボン酸のエステルの名称としてリストされた理由は、登録情報や工業的に製造されCAS名称が登録されていることからからきているものと考えられます。

ちなみに、米国のTSCAインベントリーでは、phthalateではなく、1,2-Benzenedicarboxylic acid,が使われています。


これらの物質は、化学式でC₆H₄(COOR) (COOR‘)となります。


「R」と「R‘」の部分は、ROH、R’OHと記載される、アルコールからくるものです。同じある場合や異なる場合もあります。


(a)の物質で同じケースは、(ⅰ)Bis(2-ethylhexyl) phthalate (DEHP)、(ⅲ)Dibutyl phthalate (DBP)、(ⅳ) Diisobutyl phthalate (DIBP)、(ⅵ) Diisopentyl phthalate、(ⅶ)Bis(2-methoxyethyl) phthalate、(ⅷ)Dipentyl phthalate、(ⅹ)Dihexyl phthalateです。異なるケースは、(ⅱ)Benzyl butyl phthalate (BBP)、(ⅸ)n-pentyl-isopentyl phthalateが相当します。


例えば、(ⅲ)Dibutyl phthalate (DBP)は、R、R’ が同じで、炭素数が4個のブチルアルコールC4H9OHとフタル酸からなるエステルで化学式はC₆H₄(COOC4H9)2となります。


すべての物質は、親戚にあたります。 認可物質リストには、フタル酸エステルのいくつかをまとめて収載されています。


化学物質の有害性については、構造が類似した物質は、同じような有害性があることが知られています。 上記の物質がSVHCとして得された理由としては、生殖毒性があり、さらに、(ⅰ)~(ⅳ)については、人の内分泌かく乱性、(ⅳ)についてさらに環境生物の内分泌かく乱性を有害性が挙げられています。


(b)に挙げた物質については、少し付け加えますと、工業的に製造する場合、生成物がい一つの物質だけではないことが多いです。


REACHの登録やCLPの分類の届出は、大きく分けて次の3種に分類に従った命名をする必要があります(8)。


・一つの物質が80%以上ある場合は、単一物質としてその物質の名称を用いる。

・一つの物質10%~80%の間にある複数の物質から構成される場合は、これらの物質を使い多成分物質として命名

・構成成分の数が多く物質や組成が変動する、または、物質の同定が難しい反応生成物の場合、UVCB(Unknown or Variable composition, Complex reaction products or Biological materials)とする。


REACHやCLPの命名ルールに従いますと、(a)の物質は単一物質であり、(b)の物質はUVCBとなります。


また、(ⅳ) Diisobutyl phthalate (DIBP)の化学式は、C6H4(COOCH2CH(CH3)2)2です。 アルコール部分の炭素数は、先に説明しました(ⅲ)Dibutyl phthalate (DBP)のアルコール部分の炭素数は4個で同じです。 このようなケースは、異性体と呼ばれます。 (ⅲ)の物質のアルコール部分は直鎖ですが、(ⅳ)のアルコール部分の枝分かれしています。 (b)の物質群は、炭素数が6~11個までの、アルコール部分が直鎖や分岐しているものも含めて、工業的に製造されているフタル酸エステルの異性体を網羅的にカバーするリストになっているようです。


まとまりなく、書きましたが、EUの懸念のある化学物質規制の進め方は、幅広く検討されていると考えます。 このコラムが、これから化学物質の法規制に向かわれる方の参考になれば幸いです。


参考)

(1) https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:01976L0769-19950120&from=EN


(2) https://echa.europa.eu/substances-restricted-under-reach


(3) https://echa.europa.eu/candidate-list-table


(4) https://echa.europa.eu/authorisation-list


(5) https://echa.europa.eu/substances-of-very-high-concern-identification-explained


(6) https://echa.europa.eu/substances-of-potential-concern

https://echa.europa.eu/irs-infographic


(7) https://echa.europa.eu/working-with-groups


(8)https://echa.europa.eu/documents/10162/2324906/substance_id_en.pdf/ee696bad-49f6-4fec-b8b7-2c3706113c7d?t=1525879053278


(林  譲)


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