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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

プラスチック汚染の規制に関する最近の動きについて

2023年06月02日更新

プラスチックは、軽量かつ大量生産可能という特性をもち生活を豊かにした材料の一つです。 一方で、近年では海洋生物の体内で検出されプラスチックごみ問題として身近なニュースでも取り上げられるなど環境中における負の側面も指摘されています。 このような負の側面に対しナイロビで開催された国連環境総会(UNEA-5.2)の第5回会期においては、プラスチック汚染を終わらせ、2024年までに国際的な法的拘束力のある協定を締結するという決議が下されています(*1)。 今回のコラムではこのような状況下における各国の取り組みに関する動きについて取り上げてみます。


◆米国 プラスチック汚染を防止するための国家戦略草案(*2)

米国環境保護庁(EPA)は2023年4月21日に「プラスチック汚染を防止するための国家戦略草案」を公表しました。 この国家戦略草案を策定した目的は、陸上の発生源から環境中へのプラスチック廃棄物の放出を排除することであり、2040年までに米国内で実施する自主的な行動を規定することにあるとしています。 プラスチック汚染を防止するための国家戦略草案は、先に公表されているの国家リサイクル戦略と併せて、利害関係者と協力してプラスチック汚染を防止し、陸上発生源からプラスチックやその他の廃棄物を削減、再利用、リサイクル、収集、回収する方法を特定していくことを狙いとしています。 具体的な目標として次にあげるA~Cを設定しています。


目標A:プラスチック製造時の汚染を削減

目標Aとしてあげられているのはプラスチック製造時の汚染の削減です。 上流部分となるプラスチック製造時の管理を強化することでプラスチック製品のライフサイクル全体を通じた汚染の削減を狙いとしています。 使い捨て、リサイクル不可能、または頻繁にポイ捨てされるプラスチック製品の生産と消費の削減など2つのアクションをあげています。


目標B:使用後の材料管理を改善

使用後の材料管理について国家リサイクル戦略は、リサイクルを改善するための行動を特定しているのに対し、この戦略の目標Bでは、循環性のさらなる向上はリサイクル以外の方法を通じても達成できるとし、バーゼル条約へ批准の可能性を検討など6つのアクションをあげています。


目標C:プラスチックゴミやマイクロ/ナノプラスチックが水路に流入するのを防止し、流出したゴミを環境から除去

目標Cは環境中に流出するゴミやマイクロプラスチックに対処するための内容で水路や海洋におけるプラスチックやその他の廃棄物の長期的な削減について設定しています。 具体的なアクションとしては、水の管理を改善し水路や雨水/下水システムでのゴミ捕捉の強化など5つをあげています。


EPAは戦略の実施について時間の経過とともにリソースやニーズなどが変化することを踏まえ、状況により更新していくプロセスとなるだろうと予想しています。 したがって、今後更新されていく情報について引き続き注視しておく必要があるといえます。


◆EU 意図的に添加されるマイクロプラスチックを制限

EUは2018年1月にEUプラスチック戦略(*3)の公表し、プラスチック使用量の抑制や、回収・リサイクルなどによる環境中への流出防止などの方針を打ち出しています。 規制面においては、REACH規則において、意図的に添加されるマイクロプラスチックを制限(*4)に関する検討を進めています。 最近の動きとしては、2023年4月27日にREACH委員会による制限提案の可決がニュースリリースされており(*5)、今後、欧州議会と理事会による3カ月間の精査を受けた後、欧州委員会による採択に向かう見通しとなっています。 EUはこの規制により、20年間にわたって約50万トンのマイクロプラスチックの環境中への放出が防止されるとしています。


◆日本 環境に配慮した製品設計の促進

環境中に残留する海洋プラスチックごみ問題などへの対応として「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(*6)を2022年4月1日より施行しています。 この法律はプラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計やワンウェイプラスチックの使用の合理化などを求めています。 最近の取り組みとしては、プラスチックの発生抑制や適正な循環利用等の3R+Renewable(持続可能資源の利用)の取組を進めることが不可欠とし、2023年3月に「容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集」(*7)を取りまとめ、環境に配慮した製品設計の促進を図っています。


◆最後に

プラスチックごみ問題に関する取り組みについては、米国・EU・日本とも上流となる発生源を管理し、使用後はリサイクルや環境中での分解を促進させることでプラスチックの環境への流出・蓄積を防止するなど方向性は一致しているように思えます。 具体的な物質の規制については、REACH規則におけるマイクロプラスチックの制限案が最終段階にあるEUがやや先行している印象です。 今後、プラスチックごみ問題について国際的な法的拘束力のある協定を締結することに向けて各国がさらにどのような動きをしていくのか注目されるところです。


(*1) プラスチック汚染に関する政府間交渉委員会(INC)


(*2)プラスチック汚染を防止するための国家戦略草案


(*3) EUプラスチック戦略


(*4)マイクロプラスチックの制限提案


(*5)意図的に添加されるマイクロプラスチックの制限に関するREACH委員会の可決


(*6)プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律


(*7)容器包装のプラスチック資源循環等に資する取組事例集


(長野 知広)


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