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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q618.カドミウム等の含有制限の根拠法について

2022年04月15日更新

【質問】

弊社は絹布を染色、刺繍などを施したアクセサリーを製造しています。 顧客からカドミウム、六価クロム、鉛、砒素は1ppm未満、フタル酸エステル類は合計1,000ppm未満との要求を受けました。 他の顧客はカドミウムが100ppm未満で他は1,000ppm未満です。 EU向け製品の場合のカドミウム等の1ppm未満の根拠法を教えてください。

 

【回答】

ご質問のカドミウム、六価クロム、鉛、砒素、フタル酸エステル類は、EUではREACH規制(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)の制限対象物質となっています。 制限対象物質はREACH規則附属書ⅩVIIに収載されており、物質ごとに制限用途や濃度基準、制限適用除外用途などの条件が定められています。


【カドミウム等1ppm未満の根拠】

附属書ⅩVIIのエントリーNo.72 1) に制限対象物質として、33種類のCMR物質(Carcinogenic、Mutagenic、Reprotoxic:発がん性、変異原性、生殖毒性物質)がAppendix12 2) に収載されています。エントリーNo.72の物質が、(ⅰ)衣料品(及び付属品)、(ⅱ)履物類、(ⅲ)衣料品以外で通常または合理的に予見可能な使用条件下で衣類と同様の程度で人の皮膚に接触する繊維製品、に使用されることが制限されています。 この33物質の中に、カドミウム、六価クロム(化合物)、鉛、砒素(化合物)、フタル酸エステル類も含まれており、濃度基準値はカドミウム、六価クロム、鉛、砒素が金属換算で1ppm、フタル酸エステル類が合計1,000ppmとなっています。 これが顧客要求の根拠であると想定されます。


このエントリーNo.72によって、貴社製品が、EUへの衣料品、履物、又は皮膚に接触する繊維製品の場合、上記基準値以上の対象物質を含有する製品はEUで製造、上市、使用ができません。 ただし、適用除外用途として、(ⅰ)天然皮革、毛皮のみで作られた衣料品、履物、(ⅱ)古着、(ⅲ)床に敷き詰めるカーペット、室内用繊維床材、ラグなどが定められおり、これらは制限対象外となります。


エントリーNo.72は、2018年10月に欧州委員会から公示され、2020年11月から施行されています。 これより古い時期の仕様書等を、そのまま使用している場合は、最新の規則に適合しているか確認が必要です。


【カドミウム100ppm未満の制限用途】

次に他顧客の要求として、カドミウム含有100ppm未満を例に挙げると、カドミウムは附属書ⅩVIIのエントリーNo.23で、(ⅰ)プラスチック材料から製造される成形品・混合物、(ⅱ)塗料、(ⅲ)食品生産などに使用される機械や家具のメッキ、(ⅳ)ブレスレッド、ネックレス、カフス、ブローチなどの宝飾品、などに0.01重量パーセント(100ppm)以上含有することが制限されています。 貴社の製品が上記の用途に使用される場合は、カドミウム濃度は、0.01重量パーセント(100ppm)未満とする必要があります。


【その他の義務】

以上、REACH規制で規定されている制限について述べましたが、認可が必要な物質は附属書ⅩIVに収載されています。 また、その前段階である認可対象候補物質はCandidate Listに収載され、成形品に含まれる認可対象候補物質が、0.1重量パーセント(1,000ppm)超の場合は届出、情報伝達の義務があります。 これらの附属書やリストに収載の物質は順次追加・更新されますので、新しい情報を収集し、事業への影響を確認することが肝要です。


1) 附属書ⅩⅦのエントリーNo.72


2) 附属書ⅩⅦのAppendix12

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