top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

GPSDからGPSRへ 消費者保護強化の潮流 (その1)

2023年12月01日更新

一般製品安全指令((EC)2001/95 General Product Safety Directive: GPSD)が、2023年5月23日に一般製品安全規則((EU)2023/988 General Product Safety Regulation: :GPSR)に置き換える告示がされました。


指令から規則への変更以上に、企業への要求が変わってきており、今後のEUの規制の潮流が見えており、複数回に分けてご説明します。

 第1回:消費者保護法強化の動向

     GPSRの前文に見る本質(その1)

 第2回:GPSRの前文に見る本質(その2)

     GPSRの規制条項

 第3回:RAPEX(Safety Gate)とRAFSS


§1 EUの消費者の権利の保護と拡大政策ノ潮流

1.1 消費者保護政策

世界の国々は国内の産業保護育成と共に消費者の権利の保護と拡大政策を強化しています。ことに、ネット販売の普及でサプライチェーンの国境がなくなり新たな規制が始まってきています。

このような消費者保護の潮流のなかで、先駆的な取り組みをしているEUでは、消費者がグリーンおよびデジタルへの移行において積極的な役割を果たすことができるように、「消費者の権限強化とより良い保護の確保のための新しい消費者アジェンダ」(*1)を立ち上げました。


各国の国家機関は、EUの消費者保護法の施行に責任を持っており、国境を越えての買い物時の消費者保護を目的として、公的執行者のネットワーク(*2)を設立しました。

対策として、消費者保護規則((EU)2017/2394) (*3)が規則(EC)2006/2004の改定法として2017年12月27日に官報(Official Journal of the European Union)で告示されまたした。規則(EU)2017/2394では、国境を超えたネット販売から消費者保護が強化されています。

昨今増加しているネット販売で消費者の利益にならない選択を消費者に強いるように設計されたインターフェース“dark patterns”を” sweeps”(*4)という取り組みでチェックしています。

” sweeps”は、2ステップのアクションプロセスで動作します。

i:特定のオンライン市場で消費者法の違反を特定するためのウェブサイトのスクリーニング

ii:国家当局がトレーダーに是正措置を講じるよう求める執行


1.2 消費者の施策

また、消費者の権利の拡大ノ取り組み面でも対応が強化されています。

(i)消費者の修理権

電子ディスプレイのエコデザイン要件(規則 (EU) 2019/2021)(*5)でANNEX II(Ecodesign requirements)の5項( 修理と再利用のための設計)で、電子ディスプレイの製造業者、輸入業者、または認定代理店は、プロの修理業者に対して、内部電源、外部機器を接続するコネクタ等についてモデルの最後のユニットが市場に出されてから最低7年間予備部品を提供する義務を課しています。


(ii)肥料のCEマーキング

ニューアプローチ指令対象製品のブルーガイドは、最近の法律の変更、特に市場監視に関する新しい規則の採択を反映しています。

ブルーガイド2022版(*6)で、対象製品に「肥料(EU) 2019/1009」と「ドローン((EU) 2019/945)」が追加されました。


ドローンは従来の考え方で理解できますが、肥料は戸惑います。背景は、2019 年から 2024 年までの EU の優先事項の取り組みの安全な食品を確保する「Farm to Fork(農場から食卓まで戦略 」(*7)と思われます。


CEマーキングは「人間、動物、植物の健康、安全、環境などの公共の利益を高レベルで保護する要件を満たすことを保証する」仕組みですから該当しますが、ここまで拡大するのかとの思いは残ります。


(iii)食の安全

消費者保護では食の安全が大きな課題で、「加工済み、部分加工済み、未加工のいずれであるかを問わず、人間が摂取することを意図している、または合理的に予想される物質または製品」を食品として、飲料、チューインガム、および製造、準備、または処理中に食品に意図的に組み込まれた水を含むあらゆる物質が含めて、食品規則((EC) 178/2002)(*8)で規制をしています。

食品規則によりEU食品安全機関(Food Safety Authority)と、EU食品・飼料緊急警告システム(Rapid Alert System for Food and Feed :RAFSS)が設立されました。

RASFFは、食品安全当局が食品や飼料に由来する健康リスクに関する情報を迅速に交換し、リスクを回避するための迅速な行動をとることができるようにするために設立されました。


RASFFはRAPEXと同様に食品関連の情報伝達ツールです。


通知された情報は“RASFF Window”(*9)で検索でき、“CONSUMERS PORTAL”(*10)で国別の通知情報が確認できます。

(iv)GPSR(消費者保護法)

このような消費者保護の強化の潮流で、消費者保護法である一般製品安全指令((EC)2001/95 General Product Safety Directive: GPSD)(*11)が、2023年5月23日に一般製品安全規則((EU)2023/988 General Product Safety Regulation: :GPSR)(*12)に置き換える告示がされ、2024年12月13日に発効します。

この置き換え法のGPSR対象製品は、「内部リスク分析」と 「製品の一般的な説明とその安全性の評価に関連する技術資料」が必要されるなどの義務が強化されました。


§2 GPSRの改定ポイント

食品以外の消費者向け製品は、GPSRが広く適用されます。指令から規則へ改定されたことを含めて、留意すべき事項を整理してみます。


GPSRは前文が108文節、条項が52条、1つの附属書で構成されています。 GPSRの主旨が前文に記述されています。 GPSRの本質を理解するために、条項解説の前に前文の解説をします。


2.1 指令から規則への改定理由

消費者保護は消費者の健康、安全、経済的利益の保護のために、域内自由市場の達成のために、加盟国での差異の無い高度な取り組みが行なわれます。

GPSRは、規則となり基本的に加盟国による差異なく平準化基準で運用されます。


なお、前文第19文節で「世界保健機関は、「健康」を完全な身体的、精神的、社会的な健康状態であり、単に病気や虚弱がない状態ではないとの定義」を示しています。


規則は、加盟国による異なる移行の余地を残さない明確で詳細なルールを課すための適切な法的手段である。

指令ではなく規則を選択することで、EU調和法の範囲内にある製品に対する市場監視枠組みとの整合性を確保するという目的の達成がより良くなる。ここで適用される法的手段も規則であり、具体的には規則(EU)2019/1020 :規則(EC)765/2008の改定規則)である。(前文 第3文節)


2.2 GPSRの目的

GPSRは消費者保護が目的ですが、多面での保護がを目的としています。


本規則の目的は、EUの機能に関する条約(the Treaty on the Functioning of the European Union :TFEU)(*13)第169条に記す目的の達成に貢献することである。特に、消費者の健康及び安全並びに消費者を対象とする製品に関する国内市場の機能を確保することを目的とすべきである。(前文第4文節)

本規則は、消費者及びその安全を、EUの法的枠組みの基本原則の一つとして、かつ、EUの基本的権利憲章(「憲章」)に掲げられているとおり、保護することを目的とすべきである。危険な製品は、消費者や市民にとって非常に否定的な結果をもたらす可能性がある。子ども、高齢者、障害者など、最も弱い立場にある人々を含むすべての消費者は、安全な製品に対する権利を有している。消費者は、その権利を行使するための十分な手段を有するべきであり、また、加盟国は、本規則を実施するための十分な手段及び手段を自由に有するべきである。(前文第5文節)

特定の製品または製品のカテゴリーの安全面を扱った、分野別の統一法の策定にもかかわらず、既存または開発されるすべての消費者製品について、EU法を採択することは事実上不可能である。したがって、TFEU第114条及び第169条で要求されているように、特に消費者の健康及び安全の高いレベルの保護を達成する目的で、既存の又は将来の分野別のEU調和法において、ギャップを埋め、規定を補完し、また、その立法によって別途確保されない消費者保護を確保するために、水平的性質の広範な立法枠組みが必要である。

 (前文第6文節)

 

TFEU第114条(加盟国法の平準化)では、次の規定をしています。(部分意訳)

1. 条約で他に規定のある場合を除き、以下の規定は、TFEU第26条(物・人・サービス及び資本の域内市場における自由移動)で設定された目標を達成するために適用する。

EU議会と理事会は、通常の立法手続きに従い、経済社会委員会に相談した後、域内市場の設立と機能を目的とする各加盟国で法律、規則、または行政行為により定められた規定の近似のための措置を採択する。

2. 第1項は、税制規定、人の自由な移動に関連するもの、雇用者の権利と利益に関連するものには適用しない。

3. 委員会は、第1項で想定される提案において、健康、安全、環境保護、消費者保護に関して、科学的事実に基づく新たな発展を特に考慮に入れ、高い保護水準を基準とする。

それぞれの権限内で、EU議会と理事会もこの目標を達成しようと努める。


参考

TFEU 第169条(消費者保護)では、次の規定をしています。(部分意訳)

消費者の利益を推進し、消費者保護の高いレベルを確保するため、EUは消費者の健康、安全、経済的利益の保護、および情報提供、教育、自己の利益を保護するための組織化の権利の推進に寄与するものとする。

このため、EUは自由市場の完成のために加盟国の法規制の平準化(第114条)による措置をとるが、加盟国の追求する政策を支援するが加盟国のより厳格な保護措置を維持または導入することを妨げない。


紙数が多くなり過ぎましたので、次回にGPSRの前文に見る本質(その2)及び     GPSRの規制条項をご説明します。


(松浦 徹也)


引用

*1:消費者の権限強化とより良い保護の確保のための新しい消費者アジェンダ


*2:公的執行者のネットワーク


*3:消費者保護規則((EU)2017/2394)


*4:sweeps


*5:規則 (EU) 2019/2021


*6:ブルーガイド2022版


*7:Farm to Fork(農場から食卓まで戦略


*8:規則(EC) 178/2002


*9:RASFF Window


*10:CONSUMERS PORTAL


*11:指令(EC)2001/95(GPSD)


*12:規則(EU)2023/988(GPSR)


*13:TFEU

閲覧数:1,144回

最新記事

すべて表示

RoHS指令 附属書IIIが改正されました

2024年06月10日更新 欧州委員会はRoHS指令(2011/65/EU)の附属書III項目39を改正する欧州委員会委任指令(C/2024/1573)を5月21日に官報掲載しました1)。以降、その主な内容を説明します。 1. 対象物質 1.1 カドミウムに関する適用除外 RoHS指令附属書IIには、制限物質及び均質材料中の許容最大濃度値が掲載されていますが、カドミウムだけは1桁厳しく0.01wt

自動車に使用される物質のデータベースについて―IMDSとGADSL

2024年04月19日更新 はじめに 自動車産業は全世界的にも規模が非常に大きく、構成する部品点数も膨大で、使用される物質も多岐にわたります。 したがって、自動車に有害物質が使用されていると、その製造、使用から廃棄に至るまでのライフサイクルにおいて地球環境に重大な影響を与えます。 環境負荷低減のためには、物質の適切な選択と使用が重要です。 これを実現していくための全世界的な自動車業界側での取り組み

中国の環境・化学物質規制法の動向

2024年04月19日更新 中国の環境や化学物質関連規制法が最近急速に動いています。この動向を整理してみます。 1.中国の環境基本政策 中国の中長期計画は19部65章の構成される「国家経済社会開発第14次5カ年計画及び2035年ビジョン」(*1)があり、2021年3月12日に約150ページの概要が公表されています。 冒頭で、「第14次5カ年計画」期間は、我が国があらゆる面で小康社会(注:完全ではな

Comments


bottom of page