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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q716.プロポジション65におけるセーフハーバーレベルのない物質の警告表示について

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 22 時間前
  • 読了時間: 4分

2025年05月23日更新

【質問】

プロポジション65に関してセーフハーバーレベルのない物質の警告表示は必要となるのでしょうか?

_________________________________________

【回答】

米国カリフォルニア州法Proposition65、正式名称「安全飲料水及び有害物質執行法」(以下Prop65法)*1)*2)には、発がん性や生殖毒性があると知られている化学物質リスト(the Proposition 65 list)*3)があります。このリストには、安全と考えられる濃度「セーフハーバーレベル(safe harbor levels)」が設定できる場合にはその濃度も掲載されています。しかし、リストの過半の化学物質にはセーフハーバーレベルがありません。

事業者がこのリストに掲載されている化学物質に個人をばく露させるとき、その化学物質のセーフハーバーレベルが設定されていない場合には、その事業者が予測するばく露レベルの値ががんや生殖への悪影響の重大なリスクをもたらさないことを証明できない限り、ばく露させる個人にプロポジション65の警告を提供する義務があります。*4)

その証明をするために、事業者が独自のレベルを算出するためのガイダンスとなる規則、カリフォルニア州規則集第27編第7条(Prop.65.重大なリスクレベルなし)*5)および第8条(Prop.65.観察可能な影響レベルなし)をカリフォルニア州環境保護庁(OEHHA)が制定しています。*4)

Prop65法の化学物質リスト*3)に掲載されている化学物質にばく露する量を予測することは非常に複雑です。事業者には警告が不要であることを証明する責任がありますが、不要な警告を出すことは推奨されません。セーフハーバーレベルが記載されていない物質について貴社が検討した結果、リストに掲載されている化学物質へのばく露がプロポジション65の警告を必要としない可能性があると考える場合は、資格のある専門家に相談することを検討してください。*4)


以下、Prop65法について補足をします。

Prop65法は、カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、発がん性や生殖毒性がある化学物質から保護することを目的に1986年11月に住民投票で制定されました。

この法の規制は以下の2つです。

① 飲料水の汚染禁止(第25249.5条*2))

  事業者は、発がん性や生殖毒性がある化学物質を、飲料水源に流入(可能性を含む)する水域や土地に、故意に排出・放出してはならない。

② ばく露前の警告義務(第25249.6条*2))

事業者は、発がん性や生殖毒性がある化学物質を、当該個人に対し明確かつ合理的な警告を与えることなく、故意にばく露させてはならない。


州知事が発がん性や生殖毒性があると知られている化学物質のリスト(the Proposition 65 list)*3)を毎年改訂し公表します。2025年1月3日に公表されたリストでは、1010種の化学物質が掲載され、うち25種が削除されているので、985種が該当します。

このリストには、化学物質名、CAS登録番号TMのほか、リストに登録された日、毒性の種類、登録理由、そして、安全と考えられる濃度「セーフハーバーレベル(safe harbor levels)」があればその値が単位(µg/day)で記載されています。具体的には、発がん性物質について、人がその物質に一生涯(通常は70年間)毎日ばく露したとしても、がんの発生リスクが10万人に1人(10⁻⁵)を超えないばく露レベルである有意リスクなしレベル(NSRL)、もしくは生殖毒性物質について、生涯にわたって毎日その物質に暴露されたとしても、有害な生殖影響が生じないと考えられる最大の許容摂取量レベル(MADL)です。ばく露させる化学物質がこれらの値以下であれば、カリフォルニア州の警告表示義務の対象外になります。

Prop65法では、警告の方法は表示だけに限られません。つまり、「警告」は、ばく露を受けた各個人に対して個別に提供する必要はなく、消費者製品へのラベルの貼付、水道利用者への郵送物への通知の添付、通知の掲示、公共の報道機関への通知の掲載など、その警告が明確かつ合理的であれば、一般的な方法で提供できます。食品を含む消費者製品の小売業者の負担を最小限に抑えるため、小売業者自身が責任を負う場合を除き、ラベルなどの警告資料の提供義務を小売業者ではなく製造業者または包装業者に課しています。(第25249.11条(f)*2))

同法の施行規則類*6)は、度々改正が加えられ最新の改正が2024年12月6日にもありました。化学物質へのばく露に関する警告(プロポジション65の警告)という公式サイト*7)で最新情報を得て対応してください。

Prop65法の最後の条文では、「米国食品医薬品局(FDA)やその他の連邦機関、州機関の認証を受けた製品であっても、カリフォルニア州の化学物質ばく露に関する警告の要件が必ずしも免除されるわけではない」としています。(第25249.14条*2))


【参考資料】

*1) 米国カリフォルニア州Proposition65、正式名称「安全飲料水及び有害物質執行法」

*2) 米国カリフォルニア州Proposition65 条文

*3) the Proposition 65 list

*4) プロポジション65に関する警告ウェブサイトのよくある質問(FAQ)

*5) 米国カリフォルニア州 規則集第27編第7条 Prop.65.重大なリスクレベルなし

*7) 化学物質へのばく露に関する警告(プロポジション65の警告)


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