2022年12月01日更新
【質問】
POPs規制で制限される物質は規制値の表記が無ければ、含有していること自体、規制されるのでしょうか?
【回答】
ストックホルム条約の目的は人や環境への毒性が強い、環境中で分解し難い、生物蓄積性がある、大気・水及び移動性生物により地球規模で移動して環境を汚染する可能性があるといった性質を有するPOPs(Persistent Organic Pollutants、残留性有機汚染物質)から、人の健康及び環境の保護を図ることです。
POPs規制においては付属書Aに記載されている28物質は製造・使用・輸出入が禁止(廃絶)されています。 また、過去使用されていた製品としての製造を中止するだけでなく,その存在量を削減するために種々の分解技術が適用されています。そして適切な分解を実現するために,技術ガイドラインが策定され、十分に分解されたことを確認するための基準として低POP 含有量(LPC : Low POP Content)を定められています。
付属書B記載されている2物質が規制値の表記が関係してきます。 しかし、附属書Bに掲げる化学物質の生産及び使用を、適用可能な許容可能な目的及び/又は附属書に掲げる特定の免除に照らして制限するための措置をとらなければならないとされています。
付属書Cの記載されている7物質は非意図的生成として意図せず生成されてしまいますので、規制値の管理は難しいと考えられます。 BAT の定義に記載されている「排出制限値 (releaselimitations)」は,POPs 条約の締約国が自主的に設定するものと解されます。 なお、POPs 条約における「利用可能な最良の技術 (BAT :Best Available Techniques)」、また「環境のための最良の慣行(BEP : Best Environmental Practices)」は以下で定義されます。
POPs条約は、本文改正と附属書改正があり、それぞれ手順が決まっています。附属書の改正は、COPで採択し、国連事務総長が締約国に採択を通知します。
締約国は、通知により1年以内に国内法を整備します。
締約国は国連事務総長の通知に対して、POPs条約第22条により、受諾拒否を書面で通知できます。 また、1年後に自動発効でなく、第25条により締約国が受諾書を提出した時点から効力を発生させることもできます。
条約では、
1.アルドリンなどの28物質は、製造・使用・輸出入を原則禁止。
2. DDTなどの2物質は、マラリア予防(DDT)、工業製品製造(PFOS等)など特定の目的・用途での製造・使用に制限。
3.意図せず生成してしまうダイオキシン類などの7物質はできる限り廃絶することを目標として削減。
4.POPsを含むストックパイル(在庫)や廃棄物の適正な管理及び処理。
5.上記項目のPOPs対策に関する国内実施計画の策定。
6.条約に記載されている30物質と同様の性質を持つ他の有機汚染物質の製造や使用を予防するための措置、POPsに関する調査研究・モニタリング・情報提供・教育、及び途上国に対する技術・資金援助の実施など。
が求められています。
POPsには、大きく分けて農薬や殺虫剤、工業化学品として製造され、使用される化学物質と、意図せずに生成されてしまう化学物質とがあります。 現在、農薬や殺虫剤17物質、工業化学品11物質がPOPs条約の対象物質となっています。 また、意図せずに生成されてしまう化学物質としては7物質が条約の対象物質となっていますが、この中には農薬や殺虫剤、工業化学品として製造・使用されている化学物質も含まれています。
日本ではPOPs物質の製造・使用を既に法律で原則として禁止していますが、POPsの中には、製造しなくても意図せず生成してしまうものがあります。 また、海外では、現在もPOPsを使用している国や、POPsによる環境汚染について十分な対策を取っていない国があります。
最後に、ご質問の回答としては以下のように考えます。
POPs規制の理念は、POPs物質は理念としては”ゼロ“とすべきですが、特定用途の許容、非意図的副生成物の許容などで”ゼロ“にできません。
例えば、EUでは廃絶物質のPFOAは25ppbまで許容されますが、その理念から考えると25ppbまでなら含有させてよいのではなく、規制値以下の”ゼロ“にする努力(Due Diligence)が求められます。
1)ストックホルム条約本文
2)残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約とは(経済産業省)
3)ストックホルム条約に記載されているすべてのPOPs
4)POPs パンフレット(環境省)
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