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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q685.PTFEの成形加工部品におけるPFOAの残留可能性と化審法との関係について

2024年04月03日更新

【質問】

PTFEの成形加工部品を購入して、電子製品の組み立てをしています。 PFOAが残留していることはあるでしょうか。 この場合は、当社は化審法の使用者となるでしょうか。

ご教示ください。

 

【質問】

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)、第1条で「この法律は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、新規の化学物質の製造又は輸入に際し事前にその化学物質の性状に関して審査する制度を設けるとともに、その有する性状等に応じ、化学物質の製造、輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的とする。」とされています。


化審法の規制対象は「化学物質」になり、第2条(定義)で「化学物質」とは、「元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物(放射性物質及び次に掲げる物を除く。)をいう。」とされています。


通常、化合物とは単一の種類の物質を指しますが、化審法の「化合物」には、不純物、副生物等が混在している混合物も含まれます。


このような化審法の規制対象を考えますと、ご質問の PTFEの微粉末の製造工程で副生されるPFOAも「化合物」となり、化審法の対象となると考えられます。


この場合では、成形加工部品にPFOAが含有されている場合があります。


ただし、逐条解説2)によれば化審法の規制の対象になる行為は、PTFEの微粉末の製造工程であり、PTFEの微粉末を使用して成形加工部品を製造することは、化審法の使用者には該当しません。


化審法における、「第一種特定化学物質の使用」とは、第一種特定化学物質を機械、機器その他の製品に組み込んだり、混入させる場合をいいます。 第一種特定化学物質が既に組み込まれたり、混入された製品を使用することは、第一種特定化学物質が使用されている「製品の使用」であって、「第一種特定化学物質の使用」にはあたりません。例えば、絶縁油としてPCBを使用して、変圧器を製造する場合は、「第一種特定化学物質の使用」ですが、PCBが組み込まれている変圧器を使用することは、「第一種特定化学物質の使用」ではありません。


また、化審法による使用者の責任には、つぎのような義務があります。

・第一種特定化学物質は、経済産業大臣の許可なく、試験研究目的以外に製造・輸入が禁止されます。

・使用については、試験研究用途及び特に定める用途を除いて禁止され、使用する場合は、あらかじめ届出を行う必要があります。

・第一種特定化学物質等取扱事業者は、技術上の基準に従う必要があり、譲渡し、又は提供するときは、容器、包装又は送り状に当該第一種特定化学物質による環境の汚染を防止するための措置等に関し表示すべき事項を表示することとなっています。

・第一種特定化学物質等取扱事業者とは、第一種特定化学物質及びその含有製品の製造業者、使用者、運搬業者、貯蔵業者等に関係する事業者となります。

なお、EU域内で適用されるEU POPs規則3)の場合、非意図的に含有するPFOAは制限物質として、濃度基準が25ppbとなります。


PFOA は残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)4)に基づき、2019 年に規制の対象とすることが決められています。 そのためPOPs 条約を締結する日本でも、化審法に基づき2021 年から第一種特定化学物質に指定されています。


1) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律


2) 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の逐条解説


3) EU POPs規則


4)残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs 条約)

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