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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

ブルーガイド2022年版が発行されました。

2022年11月17日更新

欧州委員会は「製品規則の実施に関するブルーガイド2022年版(The Blue Guide on the implementation of the product rules 2022)」(以降:ブルーガイド2022)が、6月29日に発行されたことを公表しました1)。 今回の改訂では、市場監視規制関連など、2016年以降の動向を盛り込んでいます。


2016年版からの主な変更点を中心に説明します。


1.ブルーガイドの概要

ブルーガイドはEU域内では法的拘束力のない文書であり、2000年に発行されました。 その後、2014年と2016年の2回にわたり更新されていますが、今回は実質的な改訂と言えます。 ブルーガイドは、EU製品規則をよりよく理解し、EU市場のあらゆる分野での均一な適用を促進することを目的としています。 ブルーガイドは新しい法的枠組み(New Legislative Framework)に沿ったもので、玩具、測定器、無線機器、低電圧電気機器、医療機器などを対象としています。 更に今回、

— 肥料の製品(規則(EU)2019/1009)

— 無人航空機システム(ドローン)(欧州委員会委任規則(EU)2019/945)

の2種類が追加されました。 また、欧州適合性評価制度、試験所の認定、CE マーキング、市場監視に関しても解説しています。


2.遠隔地のオンライン販売

2.4項として「遠隔販売およびオンライン販売の場合の利用可能性と上市について」が追加されました。 オンラインまたは他の遠隔販売手段を通じて販売用に提供される製品は、その提供がEU域内のエンドユーザーを対象としている場合、2021年7月16日から施行された市場監視規則(Regulation (EU)2019/1020)(以降:市場監視規則)の第6条により、EU市場で入手可能とみなされます。 これらの製品は、適用されるすべてのEU規則を遵守する必要があり、市場監視規則に従って市場監視当局の監視対象の対象となることを意味します。 製品がオンラインで販売されている場合、CEマーキングと適用法令に基づく必要な警告がウェブサイトに表示され、エンドユーザーが購入を実行する前に見えるようになっていることが必要になります。 EU域外に拠点を置くオンライン販売者から注文された製品が、フルフィルメントサービスプロバイダー(4項参照)を含め、EU域内のエンドユーザーに物理的に配達されれば、製品がEU市場に上市されたことを意味します。


3.Brexit関連

(1) 英国のEUからの離脱

2.9.5項として「英国のEUからの離脱」が追加されました。

2020年2月1日以降、英国は欧州連合から離脱し、「第三国」となりました。離脱協定では、2020年12月31日で終了する移行期間が規定されました。 離脱協定は、工業製品に関連する分離規定を定めています。 特に、離脱協定第41条は、移行期間終了前にEUまたは英国で合法的に市場に出された既存の個別識別可能な製品は、EUまたは英国の市場でさらに利用可能になり、最終消費者に届くまでこれら2つの市場間で流通することができると定めています。 EU法の適用規定に規定されている場合、当該製品は、EUまたは英国で使用開始することもできます。


(2)  EUの調和法の英国への適用場外

2021年1月1日付で、EUの調和法は英国に適用されなくなりました。 このことは、特に以下のような影響を及ぼします。

1) 経済事業者

英国で設立された製造業者または輸入業者は、もはやEUで設立された経済事業者とはみなされません。 移行期間終了前に英国から受領した製品のEU流通業者とみなされていたEU域内に設立された経済事業者は、2021年1月1日以降にEU市場に投入する製品に関して、EU製品法上の輸入業者となりました。 この 事業者は、特に製品の適合性の検証や、該当する場合は製品またはそのラベルへの連絡先の表示に関して、輸入業者に適用される義務を順守しなければなりません。


2) 適合性評価手続きとノーティファイドボディ

英国ノーティファイドボディは、EUノーティファイドボディとしての地位を失いました。 そのため、英国の機関は、EUの製品法令に基づく適合性評価業務を行うことができなくなりました。 適用される適合性評価手順が第三者の介入の可能性を要求または規定している場合、2021年1月1日以降にEU市場に投入される製品には、EUノーティファイドボディから交付された証明書が必要とされます。


また、英国のEUからの離脱にともない、2.9.6項として「北アイルランド」が追加されました。 2021年1月1日以降は、アイルランド/北アイルランドに関する議定書(「IE/NI 議定書」)が適用されます。 IE/NI議定書は、EU法の特定の条項を、北アイルランドに関しても英国で適用できるようにするものです。


さらに9.3項として「英国との貿易・協力協定について」が追加されました。 2020年12月24日にEUと英国の間で貿易協力協定(TCA)が合意されました。 TCA では、貿易の技術的障害(TBT)に関する規定が設けられています。 適合性評価に関してEUと英国は、TCAの発効日において、それぞれの法律が第一者適合性評価の使用を予見している製品分野については、供給者の適合性宣言を自国の技術規則に適合していることの証明として受け入れることに合意しています。 またTCAは、EUと英国に対し、認定と適合性評価について関連する国際規格を使用し、両者が開発する規格の基礎として、関連する国際規格を使用するよう求めています。


4. 製品のサプライチェーンにおける関係者とその義務の追加(第3章関係)

3.5項として「フルフィルメントサービスプロバイダー」が追加されました。 市場監視規則では、フルフィルメントサービスプロバイダーを経済事業者の別のカテゴリーとしています。 フルフィルメントサービスプロバイダーとは、商業活動の過程で、倉庫保管、包装、宛名書き、発送の業務のうち、少なくとも2つのサービスを提供する自然人又は法人であり、関係する製品の所有権を有しない者と定義されています。 なお、郵便サービス、小包配達サービスおよびその他の郵便または貨物輸送サービスは含まれないとされています。 フルフィルメントサービスプロバイダーは、市場監視規則に基づく経済事業者とみなされ、取り扱う製品に関して市場監視当局に協力しなければなりません。


また、3.6項として「市場監視規則第4条で言及される経済事業者」が追加されました。 市場監視規則第4条では、EU市場に出された特定の製品について、要求に応じて当局に情報を提供したり、対応をとる経済事業者がEU内に存在しなければならないと定めています。これは2021年7月16日から適用されています。 実際には以下の4種類の経済事業者が市場監視規則第4条でいう経済事業者として活動することができます。

1) EU域内に設立された製造業者

2) EU域内に設立された輸入業者で、製造業者がEU域内に設立されていない場合

3) 製造者に代わって第 4 条(3)に定める業務を行うことを指定する製造者からの書面による委任を受けた公認代理人(EU域内に設立)

4) EU域内に製造者,輸入者又は公認代理人が設立されていない場合は、EU域内に設立された履行サービス提供者。


なお、これら経済事業者の名称、登録商号又は登録商標、及び郵便番号を含む連絡先の詳細は、製品、その包装、小包又は添付文書に表示されなければなりません。


5. 市場監視(マーケットサーベイランス)(第7章関係)

ブルーガイド2016年版では、第7章は規則(EC)No765/2008をもとにしていましたが、今回の改正で、市場監視規則をもとにした内容に全面的に見直されました。 市場監視規則に基づき、各国の市場監視当局はEU市場で入手可能となったEU調和法が対象とする製品をチェックし、各国レベルで組織化し、各国間の調整を確保し、EUレベルで協力する明確な義務を負うとしています。 また、経済事業者は、各国の市場監視当局に協力し、必要に応じて是正措置をとるという明確な義務を負っているとしています。 各国の市場監視当局は、立法要件に違反した場合、適切な制裁措置を講じる権限を有します。


6. 適合性評価に関するEU加盟国-カナダの包括的経済貿易協定(CETA)

9.2.4項として「適合性評価に関するCETA議定書」が追加されました。 CETAは、適合性評価結果の相互受け入れに関する議定書を規定しており、適合性評価証明書の相互承認を通じて、EU加盟国とカナダが互いの市場へ商品を輸出しやすくすることを目指しています。 CETA議定書は、適合性評価に関するEU加盟国とカナダ間の以前の相互認証協定(MRA)に代わるものです。 CETA議定書はEU加盟国とカナダの認定機関間のより緊密な協力に依存することで、MRAの機能を簡素化するものです。 この点で、CETA議定書は、適合性評価機関が、自国の認定機関から相手国の要求事項を満たす製品の試験・認証を受ける可能性を含めるという重要な新規性を導入しているといえます。


(中山 政明)


引用

1) ブルーガイド2022年版が発行されました

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