当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • tkk-lab

Q632.ベトナムに工業用洗浄剤を輸出する際の輸出手続きについて

2022年08月19日更新

【質問】

ベトナムの商社から工業用洗浄剤の引合いが来ています。 見本として500cc缶を10本送り、評価結果により、ロット100本を毎月輸出する計画です。輸出手続きを教えてください。

 

【回答】

ベトナムへの輸出手続き一般の注意事項についてはJETROのサイト(*1)が参考になりますが、本サイトへのご質問ということで、ベトナムの有害化学物質の輸入に関する法規制を説明し、輸出者として対応すべき内容についてご説明します。 ベトナムの化学物質に関する基本的な法律は、2007年に公布された「化学品法」The Low 06/2007/QH12(*2)です。 所管は商工省(MOIT:Ministry of Industry and Trade)で、その下部組織として化学品庁(Vinachemia:Vietnam Chemical Agency)が設立され、実際の化学物質管理の整備、実施、監視を行っています。 化学品法公布以降、具体的な実施、管理のために様々な政令、省令が出されていましたが、2017年にそれらが整理され、「化学品法の条項の実施に関する詳細な規則と指針」 政令113/2017/ND-CP(*3)、および、「化学品法および政令113/2017/ND-CPの条項実施ガイドライン」省令32/2017/TT-BCT(*4)にまとめられました。政令113/2017/ND-CPでは、第1条に規制の範囲として「化学品の生産と取引における安全性を確保するための一般的な要件」となっており、第3条では「化学品取引には、収益性を目的として市場に化学物質を供給するための化学品の取引、輸出入が含まれます」となっています。 したがって、この規制への対応を行う主体は輸入業者であり、輸出業者である貴社はベトナムの輸入業者が手続きに必要とする情報を提供することが必要となります。 ただし、サンプル品や展示用製品は上記第3条の「収益性を目的として」に該当しないため対象外となります。ご質問の事例の場合、見本の10本については対応は不要ですが、その後の100本/月の輸出の際には対応が必要ということになります。


それでは、ベトナムにおける化学物質に対する規制内容や手続きについて見ていきましょう。 化学品法における有害化学物質リストは、以下のように政令113/2017/ND-CPの附属書に収載されています。 ここで「取引」とは上述したように輸出入を含みます。

 

・生産・取引に条件のある化学物質(附属書1)

・生産・取引に制約のある化学物質(附属書2)

・禁止化学物質(附属書3)

・事故防止・対応計画を要する有害化学物質(附属書4)

・申告を要する化学物質(附属書5)


そしてカテゴリーごとに申請、資格証明書、許可証、認可等の要求事項が規定されています。 また、その具体的な実施手続きについては省令32/2017/TT-BCTで規定されています。

輸入業者はまずその物質が規制対象物質であるかどうかを確認する必要があります。 貴社は、製品に含有されている化学物質情報を輸入業者に提供し、上記有害化学物質リストに収載されている物質に該当する場合には、輸入業者はその要求事項に対応する必要があります。

次に、輸入業者は貴社の情報に基づいて、新規化学物質が使用されているかを確認します。 ベトナムでは化学物質のデータベース(*5)が構築済で、17万を超える物質について、CAS番号、物質名、適用される附属書番号等が登録されています。この中に含まれない化学物質を使用している場合は、新規化学物質として登録しなければなりません。新規化学物質については、以下の情報も必要ですので、貴社はこれらの情報を提供する必要があります。


・化学品の危険有害性情報(化学品の危険有害性情報)

・法的枠組みのばく露情報

・企業情報(輸入、輸出、使用、製品、保管・・・)(各製造・取引場所の情報)

・化学物質事故情報(事故の影響予測)

・化学物質事件対応能力情報


また、化学物質の分類・表示に関しても上記政令113/2017/ND-CP、省令32/2017/TT-BCTで規定されており、有害化学物質にはSDSの提供が義務付けられています。 ベトナムではすでにGHSが導入されており、分類はGHS改訂第2版(2007年公表)に従います。化学物質の表示は省令32/2017/TT-BCTの附属書8のガイダンスに従います。

 

以上説明しましたように、ベトナムの化学物質規制に対応する主体は輸入業者であり、輸出業者である貴社はベトナムの法令による要求事項を理解の上、現地の輸入業者に適宜必要な情報を提供することになります。 輸入業者とよく連携して、円滑に製品が輸出できるように情報伝達を行ってください。 なお、政令113/2017/ND-CPおよび省令32/2017/TT-BCTは2022年末を目標に改訂作業が進められていますので、動向に注意が必要です(*6)。


(参考リンク)

(*1)JETRO「ベトナムへ輸出(制度・手続きを知る)」

https://www.jetro.go.jp/worldtop/asia/vn/export/e-proc/


(*2)ベトナム化品法

https://chemicaldata.gov.vn/data/vanban/luat_hoa__chat_(3).pdf


(*3)「化学品法の条項の実施に関する詳細な規則と指針」 政令113/2017/ND-CP

https://chemicaldata.gov.vn/data/vanban/nghi-dinh-113-2017-nd-cp(1).pdf


(*4)「化学品法および政令113/2017/ND-CPの条項実施ガイドライン」省令32/2017/TT-BCT

https://chemicaldata.gov.vn/data/vanban/32_2017_tt-bct.pdf


(*5)ベトナム化学物質データベース

https://chemicaldata.gov.vn/cms.xc


(*6)省令32/2017/TT-BCT改定案のWTO通知

https://members.wto.org/crnattachments/2022/TBT/VNM/modification/22_3915_00_x.pdf

閲覧数:456回

最新記事

すべて表示

2022年09月30日更新 【質問】 REACH規則の制限Entry 68(パーフルオロカルボン酸(PFCA)とその関連物質)において、炭素数8以下(C≦8)は制限されないということでしょうか。 【回答】 現在のREACH規則(2022年5月1日版)で、制限Entry 68(パーフルオロカルボン酸(PFCA)とその関連物質)は、炭素数C9-C14が規制対象です。炭素数8以下(C≦8)は、REACH

2022年09月30日更新 【質問】 デザイン性の高い高級筆記具(単色のボールペン)をEUに輸出します。 REACH規則の成形品の義務を教えてください。 なお、インクは大手文房具メーカーのボールペンインクと同じ物を購入しています。 【回答】 REACH規則での成形品に関して、ECHA発行の「REACH規則における成形品中の物質に関する要求事項に関する手引書」(以下「手引書」)に解説があります1)。

2022年09月22日更新 【質問】 事務用品のメーカーです。パンデミックの長期化から顧客が触れる部位を抗菌処理し、アメリカに販売する場合の対応を教えてください。 【回答】 御社の抗菌加工された事務用品は環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)に抗菌性農薬を使用した成形品として登録申請をして承認される必要があると考えられます。 米国では抗菌加工された成形