2023年04月28日更新
【質問】
接着剤に0.1%を超えるCLSを含有するが、接着された部品全体としては0.1%を超えない場合に、CLSでは、報告の義務はあるのでしょうか? 上記の場合、REACH AnnexXVIIの物質であれば、制限の対象になるのでしょうか?
【回答】
ご質問の成形品中のCLS濃度は接着された部品を分母として算出され、0.1%を超えない場合には報告義務はありません。
また、REACH AnnexXVIIに収載された物質の場合、物質ごとに用途や濃度などの制限条件が定められています。その条件に適合する場合には、制限の対象となります。
REACH規則において、成形品は、製造中に化学的組成よりも大きくその機能を決定する特別な形状、表面、またはデザインが与えられた製品と定義されています。 成形品中のCLSの濃度は、この定義に従った成形品ごとに算出します。 情報伝達義務の判断は0.1wt%の分母となる成形品の解釈が重要となります。
この成形品の解釈およびそのCLSの濃度の算出方法については、ECHAから発行されている「REACH規則における成形品中の物質に関する要求事項に関する手引書」(以下「手引書」)の3.2.3.1項に、単一な製品から複数の部品を組み合わせて加工した複合製品(Complex Object)も含め解説があります 1)。
例えば、CLSを含有する接着剤で2つの部品を接着した接合部品では、この接合部品を成形品として解釈します。 この場合、(部品+接着剤)の合計が成形品の質量となり、これを分母として接着剤中のCLSの質量からCLSの濃度を算出します。 ご質問の場合、この成形品を分母としてCLSの濃度の算出結果が0.1wt%を超えないため、情報伝達義務に該当しません。
REACH規則の「制限」に関して、第67条で規定され、附属書XVII「製造、上市および特定の危険物質、混合物、成形品の使用に関する制限」に対象物質が収載されています2)。 物質ごとに対象、用途、濃度などの使用条件が規定されています。該当する物質がこの規定された条件に合致する場合には対象となります。
ご質問のケースをCLSのフタル酸エステル類で考えてみます。
附属書XVII のNo.51には4種のフタル酸エステル(DEHP、DBP、BBP、DIBP)は、単独または任意の組み合わせで、子供用玩具・育児用品(以下、成形品とします)中の可塑化材料(plasticised material)に0.1重量%以上含有する成形品の上市を禁止しています。 可塑化材料とは、No.51の5(a)で定義された均質材料(homogeneous materials)で、PVCやポリウレタンなどの樹脂、コーティング、接着剤などが記載されています。これらの均質材料は、全体的に組成が均一な材料もしくは機械的操作により分離できない材料などであり、RoHS指令の場合と同じく、複数の均質材料で構成される成形品については均質材料ごとに適合性を確認する必要があると考えられます。 すなわち、成形品に使用された接着剤はこの可塑化材料に該当し、接着剤を分母として濃度を算出して適合性を確認することが必要になります。
従って、報告義務が無い成形品であっても、前記のフタル酸エステル類を0.1wt%を超えて含有する接着剤で接合した成形品は制限の対象になると考えられます。
1) Guidance on requirements for substances in articles
2) Substances restricted under REACH
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