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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q603.UAEに輸出した場合のECASマークの貼付について

2021年09月27日更新

【質問】

当社は通信機器の製造をしております。 このたび、アラビアの商社から引き合いが来ています。 UAE RoHSに対応してECASマークを貼付すればよいのでしょうか。

 

【回答】

UAE(アラブ首長国連邦)では、2017年4月28日にUAE RoHS法として、UAE Regulation to Control Hazardous Materials in Electrical and Electronic Devices(決議 10/2017)が施行されています。

※本法令(アラビア語、ただし、附属書の一部は英語)は以下のURLからダウンロードできます。


https://moiat.gov.ae/-/media/site/moiat/document/uae-regulation-to-control-hazardous-materials-in-electrical-and-electronic-devices.ashx


対象製品および対象物質

UAE RoHS法の対象となる電気電子機器は、第1条に定められていますが、附属書(1)にリストされた電気電子機器で、交流 1000ボルト以下、直流1500ボルト以下で作動するように設計されているものです。 以下の11の製品のカテゴリーがあります。

1. 大型家庭用製品

2. 小型家庭用製品

3. ITおよび通信機器

4. 消費者用機器

5. 照明装置

6. 電動工具

7. 玩具、レジャー及びスポーツ用品

8. 医療用機器

9. 監視及び制御機器

10. 自動販売機

11. 上記のカテゴリーに含まれない、または第1条の定義に該当するその他の電気電子機器


UAE RoHS法が対象とする有害物質は、EU RoHS指令と同じ10物質群で、附属書(2)に記載されています。 最大許容濃度も同じEU RoHS法と同じであり、カドミウムのみ0.1重量%、鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDE、DEHP、BBP、DBP、DIBPは、0.01重量%です。


また、第2条には適用除外についての規定があり、附属書(3)と附属書(4)(医療用機器、監視及び制御機器)に適用除外の物質・用途が記載されています。


適用時期

カテゴリー8、9を除く製品に関しては、10物質すべてに対してすでにUAE RoHSによる使用制限が適用されています。 カテゴリー8、9に関しては、カドミウム、鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDEの6種類に対してすでに適用が始まっていますが、DEHP、BBP、DBP、DIBPの4種類に対しては、2022年1月1日から適用される予定です。


適合性評価

第5条に適合性評価および適合性証明書の付与に関して、以下を順守する必要があると定められています。

1.適合性評価機関による適合性評価のための手続き

2.適合性検証フォームAによる申請

3.UAE RoHS法の定める技術仕様、条件、仕様書を満たすこと

4. 製造者による以下の文書

・製品の一般的な説明

・製品設計の詳細な説明(製造に使用された部品と材料のリストを含む)

・UAE RoHS法の要件を満たすために製品に適用される承認済み規格のリスト

・製品の検査・選定報告書

・製品がUAE RoHS法に準拠していることを証明する文書

・当局が必要であると見なす適合性評価に関連するその他の文書、情報


また、適用しなければならない強制規格については、附属書(6)に以下の通り記載されています。


1.UAE版 IEC 62321(電気・電子製品 – 6種類の規制物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の濃度定量)

2.UAE版 IEC62474(電気・電子業界およびその製品に関するマテリアルデクラレーション)

3.UAE版 IEC/TR 62476(電気・電子製品における物質使用制限に関する製品評価の手引き)

4.UAE版 EN 50581(有害物質の制限に関する電気電子製品の評価のための技術文書)


ECASマーク

EU RoHSの場合、一般的な電気電子機器に関しては、自ら適合性評価を実施し、技術文書や適合宣言書を作成した上で、自己宣言によりCEマークを貼付することができます。 UAE RoHSの場合は、ECASマーク貼付のためには、前述の第5条で定められている通り、適合性評価機関による適合性評価を受けた上で、ECASマーク貼付の認証を得なければなりません。


ECASは、Emirates Conformity Assessment Scheme(エミレーツ適合性評価スキーム)の略で、ESMA(Emirated Authority for Standardition and Metrology(アラブ首長国連邦基準化計測庁))が評価・認証を実施していました。 ESMAは2020年7月に、新設された産業・先端技術省(Ministry of Industry and Advanced Technology (MoIAT))に統合され、ESMAが行っていた適合性サービス、規格、計測、認証などはすべてMoIATに移管されています。


ECASの認証を受けるためには、申請者はMoIATに対してフォームAを用いて適合性評価の手続きを行います。 適合性の検証および認証が終わると、適合性証明書が申請者に発行され、製造者はECAS認証を受けた製品にECASマークを付けることができるようになります。 ECASによる証明書は1年間有効です。


規制対象製品に関するECASに準拠した適合性証明書発行のための電子サービス(有償)がMoIATのサイトから提供されています。


https://moiat.gov.ae/en/services/issue-conformity-certificates-for-regulated-products


なお、UAE RoHSの適合性証明としては、ECASマークに加えて、EQM(エミレーツ品質マーク (Emirates Quality Mark))によるプログラムもあります。 EQMもMoIATが評価・認証を実施しています。 EQMによる証明書は3年間有効です。


EQMの使用許可証発行(製品が承認された標準仕様に適合していること、設備がEQMシステムの要件を満たしていることを確認した上で、EQMを3年間使用するライセンスを発行すること)のための電子サービス(有償)がMoIATのサイトから提供されています。


https://moiat.gov.ae/en/services/issue-license-to-use-the-emirates-quality-mark


<参考資料>

・一般社団法人東京環境経営研究所, 製造・輸出 国別でわかる!化学物質規制ガイド 2021年改訂版, 第一法規, 2020年, pp.162-163

https://j-net21.smrj.go.jp/qa/development/Q1355.html

https://www.tkk-lab.jp/post/rohs20191207



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