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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q607.塗料や接着剤を使用している製品の化審法適用対象について

2021年09月03日更新

【質問】

当社は産業用機器のメーカーで、製品には塗料や接着剤が使用されていますが、当社は化審法の対象となるのでしょうか。 それとも材料メーカーが対象となるのでしょうか。

 

【回答】

◆化審法の義務

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(以下、化審法)(1)の適用範囲は次のようになっており、貴社のように製品に塗料や接着剤を使用する場合、適用対象外になると考えられます。


化審法は登録した化学物質を既存物質として、「一般化学物質」「優先評価化学物質」「監視化学物質」「第一種特定化学物質」「第二種特定化学物質」に区分して規制を行います。

 「使用」に関連する事項を抽出すると以下になります。


(1)一般化学物質(第8条)

対象は、「年間1t以上製造し、または輸入した者」です。

(2) 優先評価化学物質(第9条~)

対象は、「年間1t以上製造し、または輸入した者」です。

(3) 監視化学物質(第13条~)

年間1kg以上製造し、または輸入した者

(4)「第一種特定化学物質」(第25条~)

第一種特定化学物質に関しては化審法第25条で「何人も、次に掲げる要件に適合するものとして第一種特定化学物質ごとに政令で定める用途以外の用途に第一種特定化学物質を使用してはならない。」とされています。

「使用」の解釈は、経済産業省の「逐条解説」(2)に説明があります。


本条で規制されるのは、「第一種特定化学物質の使用」行為であって、第一種特定化学物質が使用されている「製品の使用」は規制されていない。この場合、「第一種特定化学物質の使用」とは、第一種特定化学物質を機械、機器その他の製品に組み込んだり、混入したりするような場合をいい、第一種特定化学物質が既に組み込まれ、又は混入された製品を使用することは、第一種特定化学物質が使用されている「製品の使用」であって、「第一種特定化学物質の使用」にはあたらない。 (部分抽出)


(5)第二種特定化学物質(第35条~)

対象は、「業として第二種特定化学物質が使用されている製品を取り扱う者」です。


◆義務の整理

各条項からは、基本的に化学物質を製造または輸入した者が対象となるため、化審法の適用対象者は、塗料や接着剤の製造先もしくはそれらを構成する合成樹脂や可塑剤、溶剤などを製造・輸入する原材料メーカーとなります。


 製品の防錆のために市販塗料による塗装や製品組み立て時に市販されている接着剤の使用等は、「第一種特定化学物質」であっても、作業者には直接的には規制されません。


化審法は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止することを目的として制定されている法律です。


◆まとめ

 貴社のような使用方法で使用している塗料や接着剤に関しては、化審法の対象外と思われます。

ただ、貴社の顧客満足度や安心、安全の保証などの企業責任を踏まえた場合、その動向により影響を受ける可能性がある情報は把握しておく必要があります。例えば、令和3年10月22日から施行されるPFOA及びその塩や今後規制されるPFOA関連物質の含有については、供給者へ確認を行うなど、化審法で規定する有害物質への対応状況を把握しておくことをお勧めします。


また、「第一種特定化学物質」に指定されている化学物質の含有は製造・輸入が禁止されますので、「第一種特定化学物質」の指定動向などは使用している塗料や接着剤の供給に影響を与える可能性があります。 貴社においては、使用している塗料や接着剤に関して、自社への影響を検討するために、どのような化学物質を含有しているかSDSなどで把握しておく必要があると思われます。


(1) https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_r02040110_1.pdf


(2) https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_exposition.pdf



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