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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q644.Propositon65に対する成形品の対応について

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 2022年12月22日
  • 読了時間: 4分

2022年12月23日更新

【質問】

Propositon65 について、成形品として対応すべきことはありますでしょうか?

【回答】

カリフォルニア州Proposition65、正式名称「1986年安全飲料水および有害物質施行法」(以下Prop65)(1)は、カリフォルニア州の市民および飲料水資源を、がんや生殖異常などを引き起こす化学物質から保護することを目的に1986年11月に住民投票で制定されたカリフォルニア州法で、成形品も対象となります。 以下に成形品としての対応について説明します。


Prop65はリスト化された化学物質を含む製品の製造や販売を禁止もしくは規制するものではなく、リストに記載された化学物質を含む製品について、カリフォルニア州住民が詳細な情報を得た上での意思決定を行うことが出来る警告を行うことを要求事項としています。 警告を提供する責任は主に製造業者にあります。製造業者は、製品に警告ラベルを貼付するか、あるいは、販売業者、輸入業者、または小売業者に、製品が警告を必要とするリストされた化学物質にさらされる可能性があることを通知し、警告標識またはその他の警告資料を提供するかを選択できます。 製造業者は、消費者が明確で合理的な警告を受け取ることが出来るならば、小売業者と書面による契約を締結して、この責任の割り当てを変更することもできます(2)。


セーフハーバーレベルと呼ばれるばく露量ががんの重大なリスクをもたらさないレベル(NSRL:70年間このレベルで化学物質にばく露した人ががんを発症する確率が10万分の1であること)、もしくは先天異常やその他生殖障害を引き起こすことが見つかるレベルよりも著しく低い場合(MADL:影響が見られない最大無作用量(NOEL)の1000分の1)には、その製品はProp65による警告表示や廃棄禁止の適用除外となります。 Prop65では濃度ではなくばく露量が基準となりますので、消費者が自社の製品をどのように使用していて、どのように化学物質にばく露するかを検討し、セーフハーバーレベル以下であるかどうかを自社で判断する必要があります。 ここが成形品の対応で一番肝要です。 例えば、子供用の製品の場合には、子供が口に入れるなどの場合を想定する必要があります。


対象となる化学物質はOEHHA(カリフォルニア州環境保護庁)により公開されている”The Proposition 65 List”(3)に約1000物質が収載されています。 ”The List”の項目には「物質名」、「毒性の型」、「リストメカニズム(NSRLあるいはMADLの設定根拠)」、「CAS No」、「収載日」、「NSRL or MADL(ug/day)」があります。 この中にNSRL、MADLが記載されていますが、全ての化学物質に対して設定されているわけではありません。 セーフハーバーレベルが設定されていない化学物質の場合は、予想されるばく露量ががんまたは生殖障害の重大なリスクを引き起こさないことを示すことができない限り警告を行う必要があります。


警告の表示は2016年の新OEHHA規則に基づき、「明確で妥当な警告」として、標準形もしくは消費者向けの場合には短縮形で印字することが求められ、標準形では“can expose you”(あなたは~にばく露する可能性があります)という文言および最低でも一つの収載された化学物質名を含む必要があります。 また、当該化学物質の健康への影響とそれらへのばく露を削減または排除する方法に関する追加情報を提供するOEHHAのウエブサイトを表示する必要があります。 さらに、「警告」の文字と同じ大きさ以上で警告記号を含める必要があります。 詳しくは参考リンク(2)を参照してください。


Prop65に違反していると見なされた場合には地方検事、市検事および個人が訴訟を起こすことが出来ます。 個人が訴訟を起こす場合には、最初に違反に対する60日の通告を外筒企業宛に送付し、同時に検事総長と適切な地方/市検事に同じ文書を送付しなければなりません。 賠償金目当ての訴訟も多く、この60日の通告総数は増加傾向にあります。 特にフタル酸エステル類や鉛に関しての訴訟が多く、これらの物質が製品に含まれる場合には特に注意が必要です。 正確な情報と警告を提供しなかった場合の費用は1日あたり最大2500USDとなります。


(1)プロポジション65原文


(2)プロポジション65新警告表示


(3)プロポジション65の対象物質リスト *対象物質検索可能サイト


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