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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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欧州のSafety Gateとその最近の動向について

2023年04月28日更新

はじめに

欧州で運営されているSafety Gateとは、EUおよびEEAの計30加盟国における安全でない非食品の消費者向け製品に対する警告情報を各国に迅速に伝達するシステムで、こうした欧州単一市場における情報共有化により、そのリスクに対する抑制措置を効果的に行える様にすることを目的としています。


その運用状況が毎年公表されていますが、本年3月にその年次報告書2022年版が欧州委員会(European Commission:EC)により公表されました。1)


またその法的根拠となっていた一般製品安全性指令 2001/95/EC(General Product Safety Directive:GPSD)2) が近々改正される動きにあります。


本稿では、それらの概要について解説します。


1.GPSDとSafety Gate

欧州における一般消費者向け製品の安全性向上を図るための法令は1992年に制定された指令 92/59/EECがあり、その前文において「製品の安全性を効果的に管理するには、その安全性に関する緊急事態における迅速な情報交換システムを国および共同体(当時のEEC・欧州経済共同体)で設定する必要がある」と述べられ、第7~12条においてその仕組みが規定されています。3)


その後指令 92/59/EECの内容を強化した形でGPSDが制定、2002年1月に施行され、92/59/EECは2004年1月に廃止されました。

GPSDは7章24条4附属書より成りますが、その目的は上市する製品の安全性を保障することとしています。(第1条)


そして第2条では「安全な製品」とは、通常のまたは合理的に予見可能な使用条件の下において、いかなるリスクも示さない、あるいは製品の使用に伴う最小限のリスクのみを示し、そのリスクは許容可能であり、高いレベルで人の安全及び健康の保護と両立すると考えられる様な製品と定義しており、またこうした要件に適合しない製品を「危険な製品」としています。


また第3条では製造者に対し、安全な製品のみを上市することを義務付けています。

前記の指令92/59/EECにおいて織り込まれた製品の安全性に関する緊急事態における迅速な情報交換システムについては、GPSDではその第12条において、以下の様な内容が義務として規定されています。このシステムは当局、消費者、産業界等により運用されているその他のシステム間との自動的な情報交換を可能とする等の改善が進められ、近年ではSafety Gateと呼ばれる様になりました:


(i)加盟国は、自国内で重大なリスクを理由として、製品の販売又は使用を差止め、制限、あるいは特定の条件を課す様な措置の執行、あるいはそれら措置の推奨や事業者・流通業者との同意を決定した場合には、直ちにそれらを警告情報として欧州緊急情報システム(Rapid Exchange of Information System:RAPEX)を通じてECに通知する。

(ii)ECは、この警告通知を受領した場合、それが所定の要件を満たしているかを確認し、他の加盟国に転送する。他の加盟国は、それに対するフォローアップとして、必要な自国の国内措置や関連情報を直ちにECに通報する。


そして附属書Ⅱでは第12条に基づく通知に含めるべき情報が示されている他、ECは、RAPEXの管理に関するガイドラインを策定し、定期的に更新するとしています。 このガイドラインは公表されていますが、これには通知のプロセス、基準、リスクをもたらす製品に対する措置等について注意すべきポイントが示されています。4)


毎日平均50件の警告情報やフォローアップがRAPEXにより伝達されており、これらは週報としても取り纏められてウエッブ上に公表されています。5)


2. Safety Gate年次報告書2022年版

今回公表されたSafety Gate年次報告書2022年版では、以下の様な状況が報告されています:

(i)2022年の警告件数は2,117件であり、その前の5年間とほぼ同レベルであった。

(ii)国別では感染症の影響による自動車販売売上減とリンクして、ドイツおよびポルトガルでの警告数減少が多い一方で、従来より通知件数の少なかったオーストリア、チェコ、ラトビアおよびノルウエーでは倍増している。

(iii)警告のカテゴリー別では、従来1位であった自動車関連が上記の販売台数減とリンクして割合を減じ16%となり、替わって玩具類が首位で全体の23%を占めた。

また化粧品や衣類が共に約10%に増加したのが注目されるが、これは最近使用禁止措置のとられたBMHCA(butylphenyl methylpropional)等を含有した香水やクリーム等の化粧品に対する警告増を反映したものと考えられる。

(iv)上記の状況を反映し、リスクの種類では化学品が35%で首位となり、昨年まで1位であった自動車に関連して発生する怪我は25%で2位となっている。

(v)フォローアップ件数は3,932件であり、前年4,930件より大きく減少した。カテゴリーとして最大の割合を占めるのは自動車関連の80%であり、この傾向は前年と変わらない。

(vi)危険な製品の原産国は中国および香港が50%、EUおよびEEAが22%となっているが、原産国不明の製品も11%を占めている。こうした国境を越えて流入する製品の安全性確保のためのEU以外の国々との国際的な協力が取り組まれている。6)

(vii)ECはオンライン販売製品の安全性向上を図るため、2018年にProduct Safety Pledgeという主要なオンライン販売業者に対し、RAPEXその他によるリコール製品、危険製品の情報の収集や適切な行動をとることを含め、全12箇条より成る契約を求めることにより、自主的に製品の安全性向上への取組みを促す活動を開始している。7) 2021年12月~2022年5月の半年間では、11の契約業者によって2,315件の加盟国政府による通知に基づき、安全でないとしてリストされた製品の98%にあたる159,784件が2日以内に市場より撤去された。こうした成果を踏まえ、本制度は当局と契約業者の双方により組織的に活用されることにより、両者の協力を図るための重要な手段となったとしている。


3.GPSDからGPSRへ

GPSDは施行以来20年超を経過しましたが、その間、消費者製品市場は大きく変化し、現行法での対応では困難な点が出てきました。


特に以下の2つの課題は重要です:

(i)新興技術が導入された製品への対応:例えばAIの様に学習機能を備えているデバイスを組み込んだもの、あるいはソフトウエアの更新を伴う製品等では、使用に伴い、当初は無かったリスクが増大していく可能性があり、従来とは異なった安全性向上対策が必要である。

(ii)オンライン販売製品の安全性確保:オンライン販売は消費者に利便性をもたらす反面、有効な市場監視手段が未確立で、製品安全性の保障が不十分な状況である。当市場において遵守すべき義務等を明確化し、安全性の一層の向上が必要である。


このため数年来GPSDの改正に向けた検討が重ねられてきましたが、2022年11月に欧州議会と欧州評議会との間で、同指令にとって替わる一般製品安全性規則(General Product Safety Regulation:GPSR)の提案に向けた合意がなされました。8)


これには消費者保護を新たなデジタル技術にまで拡大し、製品のリコール時に提供可能な救済策の拡大等の消費者の権利強化が織り込まれ、上記課題に対しても法的対応が図られることになっています。


おわりに

Safety Gateは市場で検出された危険な製品に関して、当局、業界、消費者間で迅速に情報交換することにより、消費者へのリスクを効率的に低減化していくシステムです。

製品の安全性に対する考え方は社会の動向に大きな影響を受け、取組むべき課題も変化していきますが、今後ともより質的に高度かつ高効率なシステムを目指して進展していくことは相違の無いところです。 特に現在、様々な製品が国境を越えて流通し、増々拡大していく状況下では、EU以外の国々もその動向には注意していく必要があります。


参考URL


2)consolidated text







以上


(福井 徹)


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