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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

RoHS指令附属書IIIの適用除外用途の見直し調査(パック22)の最終報告書の概要

2022年02月18日更新

RoHS指令附属書IIIの6(c)や7(a)等、電気電子製品に幅広く利用されている適用除外用途の見直し調査(パック22)については、読者の皆様の関心も高く、多くの質問を頂いておりました。

当初予定されていたスケジュールから遅れていましたが、2022年1月にパック22の最終報告書 1) が公表されました。今回はその概要をご紹介します。


1.パック22の対象

パック22の報告書では、RoHS指令附属書IIIの9つの適用除外用途(6(a)、6(a)-I、6(b)、6(b)-I、6(b)-II、6(c)、7(a)、7(c)-I、7(c)-II)を対象としており、それぞれの項目について見直し内容に関する提案が示されています。


2.各適用除外用途の見直し提案内容

各適用除外用途について「用途表現」および「製品カテゴリー」、「有効期限」についてみていきます。


【6(a)関連:鋼材中の鉛】

•6(a):現状のまま ※製品カテゴリー8、9、11のみが対象

•6(a)-I:6(a)-Iと6(a)-IIに分割

現状6(a)と6(a)-Iで構成されています。 このうち6(a)は、用途表現は現状の記載のままとし、製品カテゴリーは2021年7月に有効期限が設定されていた製品カテゴリー8の「体外診断用医療機器を除く医療機器」、製品カテゴリー9の「産業用を除く監視および制御機器」が除かれました。


一方、6(a)-Iについては、現状「機械加工用途の鋼材」と「ホットディップ溶融亜鉛めっき鋼材」がまとめて記載されていますが、今回の提案では2つに分割されています。 「機械加工用途の鋼材」は6(a)-Iとしてすべての製品カテゴリーの有効期限は2024年7月21日と短く設定され、「ホットディップ溶融亜鉛めっき鋼材」は6(a)-IIとしてすべての製品カテゴリーの有効期限は2026年7月21日に設定されています。


【6(b)関連:アルミニウム合金中の鉛】

•6(b):現状のまま ※製品カテゴリー8、9、11のみが対象

•6(b)-I:6(b)-Iと6(a)-IIIに分割

•6(b)-II:6(b)-IIと6(a)-IVに分割

現状6(b)と6(b)-I、6(b)-IIで構成されています。 このうち6(b)は、用途表現は現状の記載のままとし、製品カテゴリーは2021年7月に有効期限が設定されていた製品カテゴリー8の「体外診断用医療機器を除く医療機器」、製品カテゴリー9の「産業用を除く監視および制御機器」が除かれました。


6(b)-Iについては、6(b)-Iと6(b)-IIIの2つに分割されています。 6(b)-Iは現状の用途表現のままですが、すべての製品カテゴリーの有効期限は「決定後12カ月」となっています。 また新たに追加された6(b)-IIIは、用途をアルミニウム鋳物に限定した上で、最大許容濃度も従来の0.4wt%から0.3wt%に変更され、すべての製品カテゴリーの有効期限は2026年7月21日に設定されています。


また、6(b)-IIも、6(b)-IIと6(b)-IVの2つに分割されています。6(b)-IIは現状の用途表現のままですが、すべての製品カテゴリーの有効期限は「決定後18カ月」となっています。 また新たに追加された6(b)-IVは、用途表現が「製品カテゴリー1(大型家電)のガスバルブ」に限定され、有効期限も2024年12月31日と短く設定されています。


【6(c):銅合金中の鉛】

•6(c):現状のまま5年間延長

6(c)については、用途表現は現状のままで、すべての製品カテゴリーの有効期限は2026年7月21日に設定されています。


【7(a):高融点はんだ中の鉛】

•7(a):2つに分割し、1つは用途表現を詳細化し、1つは現状のままで3年間延長

7(a)については、用途表現は現状のままで、すべての製品カテゴリーの有効期限は2024年7月21日と短く設定されています。 あわせて高融点はんだの用途をI~VIIの7種の用途に限定し、すべての製品カテゴリーの有効期限を2026年7月21日までとする項目も提案されています。


このように7(a)を分割し、新たに7(a)をI~VIIの7種の用途に限定した新項目を提案しています。 しかしながら、今回の調査では、限られた調査期間でI~VIIの用途以外のすべての用途を網羅していない可能性があること、また更新申請者等が新項目の提案に反対していることにも言及しており、その点も踏まえて欧州委員会が最終的に判断することになります。


【7(c)関連:ガラスまたはセラミック中の鉛】

•7(c)-I:7(c)-Iと7(c)-V、7(c)-VIの3つに分割

•7(c)-II:現状のまま5年間延長

7(c)-Iについては、7(c)-Iと7(c)-V、7(c)-VIの3つに分割されています。 7(c)-Iは現状の用途表現のままですが、すべての製品カテゴリーの有効期限は2024年7月21日と短く設定されています。 新設される7(c)-Vはガラス中の鉛について、7(c)-VIはセラミック中の鉛を対象としていますが、いずれも用途表現が限定された内容に変更されており、すべての製品カテゴリーの有効期限は2026年7月21日に設定されています。


一方、7(c)-IIについては、用途表現は現状のままで、すべての製品カテゴリーの有効期限は2026年7月21日に設定されています。


3.最後に

パック22の調査報告書では、現状のまま5年間延長する適用除外用途(6(c)や7(c)-II)もあるものの、その他の適用除外用途については、現状の内容を12~18カ月で廃止、もしくは現状のまま3年間延長することで利害関係者による更なる更新申請が可能な期間を設けた上で、適用除外用途の範囲を限定する内容が提案されています。


現時点では、あくまで欧州委員会の委託会社による調査報告書の段階であり、今後この報告書を受けて、欧州委員会がRoHS指令附属書IIIの改正法案を策定することになりますので、まだ確定したわけではありません。 ただし、RoHS指令附属書IIIの6および7の適用除外用途については、多くの電気電子製品で活用されているため、自社製品の活用状況を把握した上で、活用している適用除外用途の提案内容を確認しておくことが必要であると考えます。


(井上 晋一)


1) パック22報告書

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