top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

タイの有害物質法および有害物質リスト5.6最新情報

2022年09月26日更新

1.タイの有害物質法

タイにおける化学物質規制の法令としては、有害物質法(Hazardous Substances Act B.E., 2535)(1992年に制定、2001年、2008年、2019年に改正)(*1, *2) がよく知られています。 この法令の第6条では、有害物質委員会を設置すること、第7条では、有害物質委員会が、有害物質管理に関する政策の立案・措置・計画、有害物質の登録に関する助言など、有害物質規制に関する権限および義務を有することが定められています。 第18条では、以下の4種類の有害物質のカテゴリーが定められています。


・第1種:生産・輸出入・所有は届出のみ必要

・第2種:生産・輸出入・所有には届出・登録が必要

・第3種:生産・輸出入・所有には届出・登録・許可が必要

・第4種:生産・輸出入・所有の禁止(研究目的で使用するために担当省庁の書面による許可がある場合を除く)


第1種から第4種までのカテゴリーについては、次に説明する有害物質リスト上で確認できます。


2.タイの有害物質リスト

有害物質の分類を規定している第18条では、工業大臣(Minister of Industry)は委員会の勧告を受け、人間、動植物、環境に有害な物質の名前・性質・分類を公表し、そのような有害物質の管理を行う機関を公表する権限を有していると定められています。 これに基づき、工業省(Ministry of Industry, MOI)から有害物質リストが公表 (*3) されています。 有害物質リストには、物質やCAS番号といった情報に加え、有害物質のカテゴリー(第1種から第4種)が掲載されています。


また、有害物質はその使用目的により、異なる6つの機関により管理されています。 工業用の有害物質はリスト5とし、工業局(Department of Industrial Works, DIW)が管理し、以下のサブリストが含まれています。


・5.1 規制物質

・5.2 化学廃棄物

・5.3 使用済み電気・電子機器

・5.4 その他

・5.5 化学兵器

・5.6 有害物質リストに収載されていないが、有害な性質のいずれか(爆発性、引火性、酸化性・過酸化性、毒性、変異原性、腐食性、刺激性、発がん性、生殖毒性、環境有害性物質)を有する物質


リスト5.6は、2016年に工業省通知「有害物質リスト No.2, B.E.2558(2015)」(*4 ) により定められました。


3.リスト5.6の有害物質通知スキームの改正

2022年4月19日付の「リスト5.6の有害物質の製造または輸入の申告に関する工業省の通知(B.E. 2565 (2022))」が2022年6月27日に官報により告示されました (*5)。 この通知は官報での告示から90日後に有効になり、これまで実施されていたリスト5.6物質の申告方法は廃止されます。 今回の通知により、有害物質の製造者または、有害物質および有害物質を含む混合物の輸入者は、すべての製品において、その物質の総量が1トンを超える場合には、この通知に添付されているWoOr./OrKo. 32 フォームに従って情報を申告しなければなりません。 有害物質の総量は、1月1日から12月31日までの1年間で計算され、WoOr./OrKo. 32フォームにより翌年の6月30日までに報告することになります。 今回の通知により、これまでは製品単位で行われていた申告が、物質または混合物中の物質の総量という物質単位での申告に変更されました。


4.タイの化学物質規制の今後について

タイでは、既存化学物質インベントリーが初めて2020年6月22日に発表されました(*6, *7)。 このインベントリーには、1995年から2017年の間にタイに存在した有害物質が収載され、既存化学物質の名前、分子式、化学物質のタイプ、CAS RN、工業局により指定された化学物質コードにより検索できます。 また、既存化学物質は以下の4つのグループに分けられています。


・LCC (Low Concerned Chemicals: 低懸念化学物質)

・GC (General Chemicals: 一般化学物質)

・CoC (Chemicals of Concern: 懸念化学物質)

・CHC (Chemicals of High Concern: 高懸念化学物質)


タイの化学物質規制は、ハザードベースからリスクベースへの移行が進められていますが、上記の新しいグループ分けも、今後、化学物質がリスクベースにより管理されるということが反映されています。


また、タイでは、現在の有害物質法を中心とした法規制では、化学物質の一元的な管理が難しいことから、有害物質法に置き換わる新しい法令、化学物質法の立案が進んでいます。 公衆衛生省食品医薬品局(FDA)より、2019年4月に草案の第1版が、2019年10月に第2版が、2021年1月に第4版 (*8) が発表されています。 新しい化学物質法の草案の第34条では、化学物質は、人間の健康と環境へのリスクの評価に基づき分類され、リスト1:低リスクの化学物質、リスト2:高リスクの化学物質、リスト3:非常に高いリスクがあり禁止される化学物質として分類されます。 また、国際的な動向に従って、化学物質法では、化学物質は輸入および生産から輸出、再輸入、再輸出、所有、販売、輸送、使用、処理、廃棄、再利用までのライフサイクルでの管理が目指されることになります。


(岡本 麻代)


引用

*1タイ有害物質法(タイ語版)


*2 タイ有害物質法(非公式英語版)


*3 有害物質リスト


*4 有害物質リスト No.2, B.E.2558


*5 工業省の発表: リスト 5.6 に基づく有害物質の製造または輸入に関する事実の通知


*6 工業省の発表: タイの既存化学物質インベントリー


*7 タイの既存化学物質インベントリー


*8 化学物質法 草案 第4版

閲覧数:11,485回

最新記事

すべて表示

「1物質1評価」の化学物質評価に伴う新たな立法案について

2024年01月26日更新 2023年12月7日、欧州委員会は、迅速かつ簡素で透明性の高いプロセスを目指す「1物質1評価」の化学物質評価の仕組みとして、3つの立法案を提案しました。 1) この3つの立法案のうちのひとつは、RoHS指令2011/65/EU 2)の改正案となるため、化学物質管理に関わる多くの方にとって、興味深い内容になっていると考えられます。 今回のコラムでは、この提案の経緯と各立法

GPSDからGPSRへ 消費者保護強化の潮流 (その2)

2023年12月25日更新 2023年5月23日のOJ(Official Journal of the European Union 官報)で告示されたGPSR(General Product Safety REGULATION (EU) 2023/988)(*1)は、EUの消費者政策が垣間みられます。 第1回「消費者保護法強化の動向の解説」(2023年12月1日掲載コラム)(*2)に続けて、今回

GPSDからGPSRへ 消費者保護強化の潮流 (その1)

2023年12月01日更新 一般製品安全指令((EC)2001/95 General Product Safety Directive: GPSD)が、2023年5月23日に一般製品安全規則((EU)2023/988 General Product Safety Regulation: :GPSR)に置き換える告示がされました。 指令から規則への変更以上に、企業への要求が変わってきており、今後のE

bottom of page