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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

東アジアのRoHS関連規制の動向

執筆者の写真: tkk-labtkk-lab

2024年11月01日更新

EUから始まったRoHS指令は、世界中の国々に拡大し、すでに運用されています。各国のRoHS関連規制は、基本的な内容はEUを踏襲した形ですが、対象製品や制限対象物質や規制内容に各国で差異がある状況です。

そこで、東アジアの中国、韓国、台湾について、最近の動きを整理します。


1.中国:制限対象物質の追加

中国ではRoHS関連規制として、「電器電子製品有害物質使用制限管理弁法(以下、中国RoHS)」1)が運用されています。鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)および「国家が規定するその他の有害物質(現状は未指定)」を対象に、ほぼすべての電気電子製品を対象とした含有表示(ステップ1)と、冷蔵庫やパソコン等12製品群を対象とした含有制限(ステップ2)といった義務が課されています。

このうち、制限対象物質に関連して、2024年6月に国家標準「電子電気製品における使用制限物質の限度量要求(GB/T 26572)」が改正2)、3)され、4種のフタル酸エステル類(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が最大許容濃度0.1wt%として制限対象物質に追加されました。

GB/T 26572の改正は2026年1月1日から適用することになっていますので、この適用日に向けて、フタル酸エステル類の追加に関連する告示や他の国家標準・業界標準類の改正が進められていくものと想定されます。

4種のフタル酸エステル類の追加は、EU RoHS指令にあわせた形であるため、EU RoHS指令に対応し、すでに非含有であれば追加的な製品対応は不要と想定されますが、含有表示に関しては、適用除外用途の使用状況や含有表の見直し等、今後の告示や標準類の改正にあわせて対応が必要となることが想定されます。


2.韓国:対象製品の拡大

韓国ではRoHS関連規制として、「電気・電子製品および自動車の資源循環に関する法律」(以下。韓国RoHS・WEEE・ELV)」4)が運用されており、EUのRoHS指令、WEEE指令、ELV指令をまとめた法律と言えます。

RoHSに関連する事項としては、2021年7月から4種のフタル酸エステル類が含有制限に追加され、EU同様に10物質が制限対象物質となっています。一方対象製品については、個々の製品群を指定する形式がとられており、これまで49製品種が対象製品として指定され、含有制限が課されていました。

2024年9月に韓国RoHS・WEEE・ELV施行令および施行規則の改正案が公表5)、6)されました。本改正案では、リサイクル技術や市場の発展によって、市販されているほぼすべての電気電子製品のリサイクルが可能となったことを理由に、RoHSに関連する事項としては、これまでの対象製品群を指定する形式をやめ、大型固定設備等の一部の対象外製品を除き、直流1,500Vまたは交流1,000Vまでのすべての電気電子製品を対象製品とする内容となっています。

これにより、従来EU RoHS指令では対象であったものの、韓国では対象外であった電気電子製品もEU同様に対象となることが予定されています。

とはいえ、今回の対象製品の拡大は、EU RoHS指令にあわせた形になっていることから、従来からEU RoHS指令に対応し、すでに10物質が非含有であれば追加的な製品対応は不要と想定されます。


3.台湾:対象製品の拡大

台湾ではRoHS指令に相当する個別の法律はありませんが、製品安全や検査・認証取得等を定めた「商品検験法」7)の枠組みの中で運用されています。

商品検験法では製品種に応じて、順守すべき台湾規格(CN規格)やその順守に関する検査や認証方法が指定されますが、この順守すべきCN規格に「CNS 15663第5条(含有表示)」が指定されていれば、台湾版RoHSの対象となります。CNS 15663第5条は含有制限を課しているわけでではなく、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の6物質の含有表示を求める内容となっています。

対象製品については、適宜拡大が図られており、2024年7月にはリチウム蓄電池機器の商品検査要件案8)、8月には電力変換システム(PCS)の商品検査要件案9)が公表され、その中で「CNS 15663第5条(含含有表示)」が指定されていました。

なお、商品検験法を所管している掲載部標準検験局(BSMI)では、検査・認証方法別の電気電子対象製品リストが公表10)されており、その中で「RoHS表示」としてCNS 15663第5条(含含有表示)」が指定されていれば、含有表示が必要であると判断できます。


4.最後に

今回は、東アジア各国のRoHS関連規制の最近の動きを整理しました。中国の制限対象物質の追加や、韓国の対象製品の拡大の動きは、おおもとのEU RoHS指令を追いかける形で進んでおり、やはりEU RoHS指令の動きが世界のRoHS関連規制に大きな影響を与えていると言えます。

おおもとのEU RoHS指令については、長期にわたって、テトラブロモビスフェノ-ルA(TBBPA)の制限対象物質への追加や有効期限が過ぎてしまっている適用除外用途の見直し等が進められており、次のステップである改正案の公表が注目されているところですが、現時点においては、いまだこれらの改正案は確認できていません。特にRoHS指令制定時から附属書IIIに収載されている合金中の鉛等の適用除外用途については、多くの電気電子製品で利用されていることから、有効期限に関してご質問をいただくことが多くあります。改正案が公表されれば、制限対象物質の追加時期や適用除外用途の次期有効期限等がある程度見えてくるものと想定されます。


(井上 晋一)


1) 中国政府 中国RoHS

2) 国家市場監督管理総局 公告(2024年第14号)

3) 中国電子技術標準化研究院(CESI) ニュースリリース

4) 韓国法規制データベース 韓国RoHS・WEEE・ELV

5) 韓国官報 韓国RoHS・WEEE・ELV施行令の一部改正案(環境部公告第2024-605号)

6) 韓国官報 韓国RoHS・WEEE・ELV施行規則の一部改正案(環境部公告第2024-604号)

7) 台湾法規制データベース 商品検験法

8) 台湾官報 リチウム蓄電池機器の商品検査要件案

9) 台湾官報 PCSの商品検査要件案

10) BSMI 電子製品類品目明細表


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