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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

欧州環境・公衆衛生・食品安全委員会が改正エコデザイン規則(案)を採択した

2023年07月26日更新

欧州環境・公衆衛生・食品安全委員会(ENVI)委員会は、改正エコデザイン規則(ESPR、COM(2022) 142 final)(案)を採択しました1)。 以降に主な内容を説明します。


1. 採択の経緯

2022年3月30日、欧州委員会は、持続可能な製品に対するエコデザイン要求事項を設定するための一般的枠組みを確立し、エネルギー関連製品のみに焦点を当てた現行のエコデザイン指令を廃止するための規則(ESPR)案を提出していました。 その内容として、EU域内の製品を、そのライフサイクル全体を通じて、より環境に優しく、循環的で、エネルギー効率の高いものにするものです。改正されるESPRは、域内市場のほぼすべての製品(食品、飼料、医薬品、生体を除く)に適用されることとなります。 このESPRは、循環経済パッケージ(新サーキュラーエコノミーアクションプラン)の一部であり、持続可能な繊維製品に関するEU戦略や、グリーン転換に向けた消費者のエンパワーメントに関する提案も含まれています。


今回、2023年6月15日にENVIは、賛成68票、反対12票、棄権8票で、このESPR案を採択しました。


ESPRは、従来のエコデザイン指令:ErP (energy-related products)指令(2009/125/EC)(2009年11月20日発効)をベースにし、幅広い製品にエコデザインの考え方を適用し、広範な対象製品に要件を設定することにより、環境影響への対処を目指すものです。 従来は「指令(EU加盟国間での規制内容の統一(調整)を目的とする法令)」であったものが「規則(EU加盟国の法令を統一するために制定される法令)」となったことが注目されます。


任命された報道官の報告書2)では次のように評価しています。 「私たちの地球、健康、経済にとって非常に有害な「取って、作って、捨てる」モデルを終わらせる時が来た。この法律は、新製品がすべての人に利益をもたらし、地球の境界を尊重し、環境を保護する方法で設計されることを保証する。持続可能な製品は、消費者が買い物をする際に、エネルギーを節約し、修理を容易にし、賢い環境選択をすることを可能にし、長期的には消費者自身の節約にも貢献することになるでしょう。」


2.主な内容

ESPRの柱は以下の3項目です。


1) 製品を長持ちさせ、修理やアップグレード、リサイクルを容易にする。

2)売れ残った繊維製品や電気・電子機器の廃棄を禁止する。

3) 欧州委員会は、鉄鋼、繊維製品、家具、タイヤ、化学物質などに対するエコデザイン要件を優先する。


以降、それぞれを個別に見ていきます。


2.1製品寿命の延長

ESPRは、製品寿命の延長と消費者への情報提供で、修理やアップグレード、リサイクルを容易にすることを目的としています。


つまり、製造者は設計上の特徴によって製品の寿命を制限してはならず、ソフトウェアの更新、消耗品、スペアパーツ、付属品を適切な期間利用できるようにしなければなりません。 また、製品は修理が容易でなければならず、消費者は修理ガイドラインにアクセスできなければなりません。


消費者への情報提供として、製品は、正確で最新の情報を記載した「製品パスポート(DPP:Digital Product Passport)」を添付した場合のみ販売できます。このDPPがあれば、消費者や企業は製品を購入する際に十分な情報を得た上で選択できるようになり、修理やリサイクルが容易になり、購入する製品が環境に与える影響についての透明性が高まることが期待できます。 欧州委員会は将来的に、消費者がオンラインプラットフォームを通じてDPPを比較できるようになることを構想しています。


2.2売れ残った繊維製品や電気・電子機器の廃棄禁止

売れ残った製品を廃棄する事業者は、製品の種類またはカテゴリーごとに区別された、1年間に廃棄される製品の数とその理由を報告しなければなりません。 欧州委員会は、この情報をもとに、廃棄を禁止すべき製品を特定することを求めています。 さらに報告書は、法律発効から1年後に、売れ残った繊維製品、履物、電気・電子機器の廃棄を具体的に禁止するよう求めています。


なお、採択時には、売れ残った消費者製品の破棄に関する章が大幅に改正されています。 売れ残った衣料用付属品の破棄を直接禁止するもので、中堅企業にはESPR発行後4年間の免除、中小・零細企業には一般的な免除を設けています。 この措置は、生産されたものの使用されることのなかった衣料品やアクセサリーが環境に与える影響を軽減しようとするもので、特にオンライン販売が急成長していることから、その効果が期待されています。


2.3優先品目

欧州委員会が新規則発効後3カ月以内に採択する2024年から2027年にかけての最初の作業計画において、いくつかの製品群を優先的に取り扱うことを求めています。 優先品目には、鉄、鉄鋼、アルミニウム、繊維製品(特に衣料品と履物)、家具(マットレスを含む)、タイヤ、洗剤、塗料、潤滑油、化学薬品、エネルギー関連製品(実施措置の改訂または新規定義が必要)、ICT製品およびその他の電子機器が含まれています。


2.4その他、当初案からの変更点

採択前の理事会の審議において、自動車の環境への影響に特定の法律が対処しているため、当初提案されたESPR案の対象となる商品群から自動車が除外されました。


また、エコデザイン要求事項を定める委任法の対象となる特定の製品について、市場監視当局が実施すべき最小限の検査回数を定める委任法を採択する権限を与える規定も削除されました。


3.今後の予定

このESPR案は、2023年7月の本会議で採択される予定であり、法案の最終的な形に関するEU各国政府との交渉に移ることになります。


ESPRの委任法の発効後、適用開始までに最低18ヶ月の移行期間を設けており、事業者には、新たな要求事項に適応するための猶予期間が与えられる予定です。 また、加盟国には、市場監視や罰金に関するものを含め、必要な国内法を立法化するための2年間が与えられる予定です。


(中山 政明)


引用

1) エコデザイン:持続可能な製品を標準にするEUの新ルール


2) アレッサンドラ・モレッティ報告書

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