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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

韓国 産業安全保健法等で改正されたGHS制度の最近の情報から

2021月05月07日更新

2019年に韓国の産業安全保健法1)(以下;「産安法」)は改正され、化学物質安全シート(以下、従来韓国では「MSDS」と略されているようですので、MSDSとします)にかかわる改正も行われました。 この概要については本コラムでもご紹介してきましたが、2021年1月16日の施行前に、関連する法規制が改正され、整備されました。


本コラムでは、これまでご紹介した内容と重複するところがありますが、改めて韓国におけるGHS制度の留意事項を、産安法等の改正内容を中心にご紹介します。


Ⅰ.産安法等の改正に推移

産安法等の改正の推移をまとめますと次の通りです。

・2019年 1月15日;改正産安法の公布

・2019年12月24日;産安法施行令2)の改正

・2019年12月26日:産安法施行規則3)の改正

・2020年11月12日;雇用労働部告示第2020‐130号4)(「化学物質の分類・表示および化学物質安全シートに関する基準」の一部改正)


他方、「化学物質の登録、評価等に関する法律(以下、K-REACH5))は、産安法等に合わせて必要な改正が行われていますが、最近のK-REACHの情報提供に関わる改正としては下記が挙げられます。

・2020年12月17日;K-REACH施行規則6)別表7の改正

・2021年2月22日;国立環境科学院告示第2021-18号7)(「化学物質の分類及び表示等に関する規定」に一部改正)


Ⅱ.産安法規定のMSDSの作成と提出について

産安法では、告示のGHS分類基準に適合する化学物質、その混合物についてMSDSを作成が規定されています(MSDS対象物質)。 新たにMSDSを雇用労働部(産業安全保健公団;KOSHA)への提出する規定が設けられ、2021年1月16日から施行されました(産安法第110条)。


提出は製造・輸入する前に行う必要がありますが、本規定の施行日、すなわち2021年1月16日時点で既に製造・輸入している場合には、下記の猶予期間が設けられています(産安法施行規則2)第157条、雇用労働部令第272号(2019年12月26日公布)附則第9条)。


① 年間製造量が1,000トン以上:2022年1月16日

② 年間製造量が100トン以上:2023年1月16日

③ 年間製造量が10トン以上:2024年1月16日

④ 年間製造量が1トン以上:2025年1月16日

⑤ 年間製造量が1トン未満:2026年1月16日

  

提出は、新たに設けられた「MSDSシステム」を通して、電子的に提出することが出来ます。

MSDSの提出では、「3項.構成成分の名称及び含有量」については注意が必要です。 MSDSに記載されていない成分(危険・有害性でない成分)についての情報も提出しなければなりません。


また、提出時に番号が付与されます。この番号は譲渡先に提供するMSDSに記載する必要があります(産安法施行規則第160条)。


なお、K-REACHでは、譲渡先には下記の物質の安全情報を提供することを規定しています(K-REACH第29条、K-REACH施行規則第35条)。

・登録または申告した物質の登録番号やCAS番号等の固有番号

・登録猶予期間中の未登録の既存化学物質で有害化学物質

ただし、産安法MSDSに登録または申告した物質の登録番号やCAS番号等の固有番号を記載した場合は、提供する安全情報を簡略化できます。



Ⅲ.成分情報のCBIについて

MSDSで成分情報をCBIにしたい場合は、申請し承認されるとCBIすることができます(産安法112条、産安法施行規則第161~163条、告示第2020‐130号17、18条)。


CBIにできる対象は、物質名と含有量です。申請に当たっては、下記の情報の提出が必要です。

・MSDS

・CBIのための証明できる資料

‐非公知性、秘密管理性及び経済的有用性に関する資料

・CBIにするための代替資料

‐代替名称:「資料保護申請の作成方法及び保護資料管理方法等に関する規定」による総称名

‐代替含有量:含有量が25%未満の場合は±10%の範囲、5%以上の場合は±20%の範囲

・CBIにする物質の危険・害性情報

・危険・有害性に分類されない物質の名称と含有量

・その他、別途定める情報


ただし、下記の物質はCBIにすることが出来ません。

・製造禁止物質(産安法施行令第87条)

・認可対象物質(産安法施行令第88条)

・管理対象有害物質(労働安全衛生基準に関する規則8)第420条)

・作業環境測定対象有害因子(産安法施行規則別表21)

・特殊健康診断対象有害因子(産安法施行規則別表22)

・K-REACH施行規則第35条第2項ただし書きで定める物質



Ⅳ.産安法の韓国外製造者が任命する代理人制度(産安法第113条産安法施行規則166条)

韓国外製造者は、前記Ⅱ、Ⅲで説明しましたMSDSの作成や提出に関する業務を韓国輸出先に代わって韓国内の代理人を任命し行うことが出来ます。K-REACHの代理人制度に似ていますが、代理人選任の申告は管轄の雇用労働署に提出するが異なっています。


また、代理人は輸入者に代わってKOSHAにMSDSを提出した場合は、MSDSや選任申告書の写し、遂行業務の結果を輸入者に提供する必要があります。

なお、K-REACHの代理人の申告は、地方環境官署長、国立環境科学院長や公団の理事長に提出することになっています(K-REACH第38条、施行規則第49条)。



Ⅴ.GHS分類基準について

韓国GHS分類基準の詳細は、産安法では「化学物質の分類・表示および物質安全保健資料に関する基準」(以下「産安法GHS」と略します)、K-REACHでは「化学物質の分類及び表示等に関する規定」(以下、「K-REACH GHS」と略します)で定められています。 これらの分類基準では国連GHSの第6版で採用されました物理化学的危険性の「鈍化性爆発物」は採用されていません。 また、国連GHSで許容されている範囲内で独自の分類を採用しています。


産安法GHSでは、例えば、国連GHSでは「可燃性ガス」の「区分1A」中にあります「自然発火ガス」が、産安法で独立した区分として規定されています。また、健康有害性では、国連GHSの「呼吸器感作性または皮膚感作性」を別々の有害性として「呼吸器感作性」と「皮膚感作性」と分割しています。

K-REACH GHSはEUのCLP規則に類似した分類基準を採用しています。産安法GHS分類基準と異なるところがありますが、産安法GHSに準ずればよいと考えます。


参考情報

4)


(林  譲)


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