2021年06月12日更新
1月8日付の本コラムで、RoHS指令附属書IIIの一部適用除外用途見直しに関する調査プロジェクト(以降:Pack22)の動向を紹介しています。これらの規定は多くのメーカの関心が強いところであり、その後の動向を紹介します。
1. 意見募集の動向
欧州委員会が委託した調査会社(Oeko-Institut e.V.)により、Pack22の意見募集は2020年12月23日から開始され、2021年3月3日に終了しました。1)
今回の意見募集は附属書III(適用除外用途)のうちの以下9項目が対象です。
(1)6(a):機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中に合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛(2020年1月に提出された2件の更新申請)
(2)6(a)-I:機械加工用途の鋼材中の合金元素として含まれる0.35wt%までの鉛とホットディップ溶融亜鉛めっき鋼中に含まれる0.2wt%までの鉛(6(a)と同様)
(3)6(b):アルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛
(4)6(b)-I:鉛含有アルミニウムスクラップのリサイクルに由来するアルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛(6(b)と同様)
(5)6(b)-II:機械加工用途のアルミニウムに合金元素として含まれる0.4wt%までの鉛
(6)6(c):銅合金中の4wt%までの鉛
(7)7(a):高融点はんだ中の鉛(鉛系合金に含まれる85wt%以上の鉛)
(8)7(c)-I:コンデンサ中の誘電セラミック以外のガラスまたはセラミック中に鉛を含む電気電子部品(圧電素子等)およびガラスまたはセラミックの化合物中に鉛を含む電気電子部品(9)7(c)-II:定格電圧AC 125VまたはDC 250V以上用のコンデンサ中の誘電セラミック中の鉛
今回の意見募集で、それぞれ以下の件数の意見が提出されました。
・6(a):6(a)-I:合計10件
・6(b):6(b)-I:合計 8件
・6(b)-II: 合計10件
・6(c): 合計12件
・7(a): 合計 7件
・7(c)-I: 合計 6件
・7(c)-II: 合計 3件
主な内容を纏めると以下の通りです。
1)更新賛成意見
・(6(a)/6(a)-I、6(b)-II、6(c))時計のムーブメントに使用しており、代替品が見つかったとしても、数年から数十年単位の評価期間が必要となる。
・(6(a)/6(a)-I)切削工具に使用しているが、切削速度向上と工具寿命を保証する代替品は存在しない。
・(6(a)/6(a)-I)半導体製造装置(および関連装置)で使用されている部品の入手に影響を与え、または最低でも機器の再設計を余儀なくされる。
・(6(a)/6(a)-I)試験・測定器に使用しており、その製品の複雑さや、一般製品と異なり長い製品寿命(平均10年)を持つことから、代替品の評価が容易ではない。
・(6(c))救命および延命医療機器に使用しており、公衆衛生に悪影響を及ぼす。
・(7(a))実現可能な鉛フリーの技術は確立されておらず、また、鉛の排除または置換が技術的に実現可能である材料や、信頼性を確保できる代替材料は見つかっていない。(日本電気電子産業協会)
・(7(a))パワースイッチングデバイスに使用しており、高い品質と信頼性が求められる中、現在では鉛フリーの代替策は見つかっておらず、たとえ代替の可能性があっても、最終顧客/OEM先との調整のもと、材料の開発、評価、製造工程及び製品の認定、信頼性試験が必要となり、更なる時間が必要である。
2)更新否定意見
・(6a, 6a-I, 6b, 6b-I, 6b-II, 6c)REACH規則付属書XVIIの項目63によると、製品または触れることが可能な部品に含まれる鉛の濃度が0.05重量%以上であり、通常の使用条件または合理的に予見可能な使用条件において子供が口に入れる可能性がある場合は、一般市場に供給される製品に使用してはならない(例外あり)、とされている。(スウェーデン化学物質庁(KEMI))
・(6(a), 6(a)-I, 6(b), 6(b)-I, 6(b)-II, 6(c), 7(a))RoHS指令の前文19には「特定の材料や部品に対する適用除外は、電子機器に含まれる有害物質の段階的な廃止を達成するために、範囲と期間を限定すべきである。」とされている。(ノルウェー)
・(6(c))鉛含有量0.1wt%以下の銅合金が開発され、現在、さまざまな産業分野で使用されており、適用除外用途から外すべきである。
2. 今後の動き
提出された意見は、EU CIRCABCのWebサイト2)に掲載するとされています(ただし、現時点では未掲載)。
追加情報の必要性や技術的な議論の必要性が確認された問題については、意見提出者と更なる協議を行うとしています。
このPack22は2020年10月28日に開始され、2021年8月27日までの10ヶ月間の予定で実施されています。その後、最終報告書が欧州委員会に提出され、欧州委員会で報告書の内容を踏まえた検討や法制化手続きが開始されることになります。
Pack22の終了は、附属書III(適用除外用途)6(a)等の適用除外用途の現状の有効期限である2021年7月21日よりも後になっており、しばらくは現状の適用除外用途規定がそのまま継続すると予想されます。
3. 関連情報:以降のPackの動向
現在、Pack22に引き続き、Pack23とPack24が進められており、それぞれの動向は以下の通りです。過去のPack情報を含めて、EUのWebサイトで閲覧できます。3)
(1)Pack23
Pack23は、附属書III 4(f)、8(b)、8(b)-I、9(a)-II、13(a)、13(b)、13(b)-I、13(b)-II、13(b)-III、15、15(a)項の適用除外用途の見直しに関する調査プロジェクトです。Bio Innovation Service社により意見募集が3月18日から開始されていましたが、5月27日に終了しています。4)
(2)Pack24
Pack24は、附属書III 5(b)、 18(b)、 18(b)-I、 24、29、32、34項と、附属書IV 34項の適用除外用途の見直しに関する調査プロジェクトです。Pack22と同じ調査機関であるOeko-Institut e.V.社により、意見募集が3月30日から開始されています。終了は6月8日です。5)
(中山 政明)
引用
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画面で次のメニューをクリック。Browse categories > European Commission > Environment > RoHS Evaluations > 画面左の"Library"をクリック。
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