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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

RoHS指令附属書IVの動向

  • 執筆者の写真: tkk-lab
    tkk-lab
  • 2021年8月8日
  • 読了時間: 6分

RoHS指令附属書IV(カテゴリー8(医療機器)、カテゴリー9(監視制御機器)に特有の第4条(1)の制限から適用除外される用途)について、45~47項の3件の追加があり、附属書 IV を改正する欧州委員会委任指令(案)がWTO/TBTに通報されましたので、その内容を紹介します。なお、45項はPack17で検討された「新規要求 2019-1」であり、46項はPack17で検討された「新規要求 2019-2」に該当します。 また、47項はPack17で検討された31a項の変更について、現在31a項で適用除外とされている他の物質の再延長を避けるため、31a項から分離して新たな項としたものです。


1. 45項

付属書IVに以下が45項として新規追加されます。 「人体液および/または透析液中に存在するイオン性物質のポイントオブケア分析(POC:(患者の目前や在宅で行われる分析検査))に適用されるイオン選択性電極中のビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP)。 ただし、本指令の採択から7年後(2028年6月28日)に失効する。」1)


以下、この決定に至る経緯を説明します。 欧州委員会は、2018年7月17日に上記の適用除外の申請書を受け取り、調査を開始し2020年に終了ました。 その後、8週間のオンラインステークホルダーコンサルテーションを実施し、1件の寄稿がありました。


その後、欧州委員会は2021年2月23日に、これらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。 その報告書の内容には、以下の点が強調されています。


1)DEHPは、体液や透析液に含まれるイオン性物質を実用的かつ迅速に「ポイントオブケア分析」できる分析装置のイオン選択電極に使用されている。


2)DEHPを代替することは技術的に可能であるが、現在の代替品は性能が悪く、特に社会経済的に悪影響を及ぼす可能性がある。


3) 適用除外を認めない場合、イオン選択電極に依存する約500トンのポイントオブケア分析装置が早期に廃棄されることになる。使用済みのイオン選択電極は医療廃棄物であり、最終的には焼却処分されるため、DEHPを市場に出さないことによる環境上のメリットは比較的限定的である。DEHPは材料サイクルに戻されることはない。


4)適用除外を認めない場合、ポイントオブケア分析装置を廃棄しなければならないため、医療機関に大きい経済的・組織的負担を強いることになる。


5)全体として、イオン選択電極のDEHPを代替することによる環境および健康への負の影響の合計は、利益の合計を上回る可能性が高い。


なお、ポイントオブケア分析装置の平均寿命と、非DEHP市場への切り替えに必要と考えられる時間を考慮して、適用除外の有効期間は7年間とされました。


2. 46項

付属書IVに以下が46項として新規追加されます。 「MRIの検出器コイルのプラスチック部品に含まれるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)。 ただし、2024年1月1日に失効する。」2)


以下、この決定に至る経緯を説明します。 欧州委員会は、2018年9月12日に上記の適用除外の申請書を受け取り、調査を開始しました。 これとは別に欧州委員会は、2019年10月2日にMRIの検出器コイルのプラスチック部品におけるDEHPの使用を新たに適用除外とするための同様の申請を受け取りました。 これら2つの要請が類似しており、代替品の入手可能性や社会経済的側面に関する追加情報が必要だったため、欧州委員会は2019年11月に詳細な調査を開始し、2020年6月に終了しました。 その後、8週間のオンラインステークホルダーコンサルテーションを実施し、寄稿はありませんでしたが、情報収集の一環として申請者以外のMRIメーカーにインタビューを行いました。


その後、欧州委員会は2021年2月23日に、これらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。 その報告書の内容には、以下の点が強調されています。


1)最初の要求は、MRI検出器コイルのPVCケーブルのストレインリリーフへのDEHPの使用に関するものであった。2番目の要求は、MRI検出器コイルのプラスチック部品に使用されているフレキシブルポリマーへのDEHPの使用に関するものであり、対象範囲が広い。評価の結果、両者とも適用除外とすることが適切であることがわかった。


2)MRIの検出器コイルは、少なくとも1社のメーカーがDEHPを使用しないMRI部品を提供しているが、他の多くのメーカーでは開発が進んでいない。


3)適切かつ広範な利用可能性を確保するために、代替品の開発には時間が必要である。


4)適切な代替技術や代替品が十分にない現状では、適用除外を認めないと、オリジナルのMRIコイルに依存している医療サービスの供給不足を招く可能性がある。


なお、、代替品開発を妨げるものではないと考えられるため、適用除外として申請された2024年1月1日まで除外期間を認めるべきであるとされました。


3. 47項

付属書IVに以下が47項として新規追加されます。 「医療機器(体外診断用医療機器を含む)およびその付属品の修理または改修のために回収され、再利用されるスペアパーツに含まれる、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)およびフタル酸ジイソブチル(DIBP)。ただし、再利用は監査可能な企業間返品システム内で行われ、各スペアパーツの再利用は顧客に通知されることを条件とする。ただし、本指令の採択から7年後(2028年6月28日)に失効する。」3)


DEHP、BBP、DBP、DIBPは、欧州委員会委任指令(EU)2015/863によって附属書IIの制限物質リストに追加されており、2021年7月22日から同指令の対象となる医療機器での使用が禁止されます。 今回の決定により、上記のスペアパーツに関しては、条件付きで適用除外されることとなります。


以下、この決定に至る経緯を説明します。 欧州委員会は、2018年7月17日に上記の適用除外の申請書を受け取り、調査を開始し2020年に終了ました。 その後、8週間のオンラインステークホルダーコンサルテーションを実施し、1件の寄稿がありました。


その後、欧州委員会は2021年2月23日に、これらに関連する活動結果を理事会と欧州議会に技術的・科学的評価報告書として通知しました。 その報告書の内容には、以下の点が強調されています。


1)DEHP、BBP、DBP、DIBPは、体外診断用医療機器を含む医療機器の装備(ケーブル絶縁体、ゴムシールなど)の柔軟性などの特性を改善するために、ポリマー、接着剤、シーラント、塗料、ラッカーなどの添加剤として使用されている。


2)医療機器の回収されたスペアパーツの市場は世界的なものであり、スペアパーツは改修やさらなる流通のために世界中で集められている。そのため、スペアパーツを原産地市場別に区別し、非破壊的にフタル酸エステル類の濃度を測定することは不可能である。さらに、既存のスペアパーツの規定は、医療機器の回収されたスペアパーツの世界的な流通をカバーしていない。


3)制限されたフタル酸エステル類の代替は、科学的にも技術的にも実行可能であると評価されている。しかし、既存のスペアパーツを再利用するのではなく、これらの物質を含まない新しいパーツを製造することは、二酸化炭素を排出し、重金属を市場に投入し、危険物や非危険物の廃棄物の早すぎる発生につながると考えられる。


4)総合的に見て、スペアパーツに含まれるDEHP、BBP、DBP、DIBP を代替することによる環境、健康、消費者安全への悪影響は、総合的な利益を上回る可能性が高い。


なお、適用除外期間7年間としても代替品開発に必要な技術革新を妨げるものではないと考えられることと、MRI機器の寿命が長いことから現行品スペアパーツも相当期間必要であることから、適用除外の有効期間は7年間とされました。


(中山 政明)


引用

1)


2)


3)

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