2024年07月12日更新
【質問】
アメリカに顧客の市場評価のための試験販売で、数100kgのTSCAインベントリに収載されていない化学品を輸出する計画があります。TSCAの対応を教えてください。
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【回答】
米国でTSCAインベントリに収載されていない新規化学物質を製造・輸入する際に、PMN(製造前届出:Pre-Manufacture Notification)が必要ですが、試験販売の場合、PMNは免除されます(Test marketing exemption)。ただし、製造、輸入の45日前までに免除届をEPA(米国環境保護庁:U.S.Environmental Protection Agency)に申請し、許可を受ける必要があります。以下に詳細を説明します。
TSCAの下位規定である、CFR (the Code of Federal Regulations:連邦規則集)Title40 ChapterⅠSubchapter R Part720 1) に、PMNについての規定があり、そのSubpart B §720.30(Chemicals not subject to notification requirements)2) にPMN対象外物質に関して規定されています。§720.30の(d)項に「§720.38に基づく試験販売目的のみで製造される新規化学物質」もPMN対象外と記載されています。
§720.38(Exemption for test marketing)3) の(a)項に、試験販売の場合、EPAに申請しその化学物質がヒトの健康や環境に危険をもたらさないことが認められれば、PMNが免除されると記載されています。また、(b)項には免除申請で下記の情報を提供する必要があると規定されています。
(1)化学物質のヒトの健康や環境への影響に関するデータ(物理/化学特性)
(2)試験販売の最大製造量
(3)試験販売の期間中に化学物質を提供する最大人数
(4)化学物質にばく露する可能性のある最大人数
(5)試験販売の期間、本格的な商業生産や研究開発との区別方法など
(6)料金支払い番号
(7)既に作成済みの安全データシート(ドラフト含む)
(d)項には、EPAが申請を受け取ってから45日以内に承認するか否認するかを決定するとされています。このため製造、輸入の45日前までに申請する必要があります。また、(f)項には申請手数料について規定しています。
審査後の対応や管理については§720.78 4) の(c)項に、試験販売用途でPMN免状を受けた場合、申請書類とEPAによって示された制限に関する文書を、最後の製造後5年間保持しなければならない、と規定されています。
以上、試験販売のPMN免除について述べましたが、他にPMNの対象外になるのは、§720.3(e)で定義される化学物質でない物質、§720.3(u)で定義される混合物、研究開発目的での製造などがあります。その中で、研究開発目的により少量のみ製造・輸入される新規化学物質は、§720.36 (Exemption for research and development)5) に定められた管理をすることでPMN免除が認められています。
【参考資料】
1) e-CFR Part720
2) e-CFR §720.30
3) e-CFR §720.38
4) e-CFR §720.78
5) e-CFR §720.36
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