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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

Q712.マイクロプラスチック規則での合成ポリマー微粒子の情報提供義務の適用業者について

執筆者の写真: tkk-labtkk-lab

2025年02月19日更新

【質問】

マイクロプラスチック規則(EU) 2023/2055では合成ポリマー微粒子の製造業者は毎年ECHAに規定の情報を提供しなければならないとされていますが、日本の製造者にも適用されるのでしょうか。

_________________________________________


【回答】

この「マイクロプラスチック規則(EU) 2023/2055」1)はREACH規則付属書XVII(制限」エントリーNo.78を改定するものであり、基本的にREACH規則です。以降、REACH規則附属書XVIIエントリー78を前提に記載します。第1項で「1.合成ポリマー微粒子(synthetic polymer microparticles)(マイクロプラスチック)が、求められる特性を付与するために存在する場合は、0.01重量%以上の濃度の混合物として、物質単体として市場に出してはならない。」と規定されていますが、例外規定として第4項に「(a)合成ポリマー微粒子は、それ自体または混合物として、工業用現場で使用される用途の市販には適用されない。」と規定されています。このように工場での使用は除外されていますが、第11項で欧州化学品庁(ECHA)への報告が規定(後述)されています。

しかし、この規定はEU域内の企業に対してであり、REACH規則の「CHAPTER 2  Article 3  Definitions(用語の定義)」において、「Manufacturer: means any natural or legal person established within the Community who manufactures a substance within the Community(製造業者とは、欧州共同体内で物質を製造する、欧州共同体内に設立された自然人または法人をいう。)」とあるように、EU域外(日本含む)に事業所を持つ製造者には直接適用されません。

とはいえ、サプライチェーンの商取引としての視点で考えた場合、EU域内の川下ユーザー(この場合はマイクロプラスチックを使用する企業:以下同様)ではわからない情報は、サプライチェーンを遡って、EU域外製造者にもビジネス上の要請として情報提供が求められることが想定されますので、貴社はEU域外製造者ではあるものの、EU域内企業から当該項目の情報提供が求められると考えておいた方が良いでしょう。


なお、第11項では、以下が規定されています。

11項 2026年以降、工業用地でプラスチック製造の原料として使用されるペレット、フレーク、粉末の形態の合成ポリマー微粒子の製造業者及び工業用の川下ユーザー、及び2027年以降、工業用地で合成ポリマー微粒子を使用する合成ポリマー微粒子のその他の製造者及びその他の工業用の川下ユーザーは、毎年5月31日までに以下の情報をECHAに提出しなければならない:

(a) 前暦年の合成ポリマー微粒子の用途の説明;

(b) 合成ポリマー微粒子の使用ごとに、使用されたポリマーの特定に関する一般的情報;

(c) 合成ポリマー微粒子の用途ごとに、前年度に環境に放出された合成ポリマー微粒子の推定量。

(d) 合成ポリマー微粒子の用途ごとに,第4項の(a)に規定された適用除外への言及。

したがって、貴社は、EU域内企業の要請に基づき、上記情報をECHAに提出するために必要な情報を提供することになります。

合成ポリマー微粒子は多用途・多面で使用されており、制限は難しい面があります。一方で、合成ポリマー微粒子による環境汚染、食物連鎖、人の摂取が懸念されます。分解される、固定化されるなどで、上記連鎖に影響しない場合は免除されます。さらに、工場で使用する(industrial sites)場合は、管理されるので、免除になるものの、前途のように報告義務が課されています。

なお、合成ポリマー微粒子はポリマーですから、REACH規則の登録要件はなく、したがって評価もされません。



1) マイクロプラスチック規則(EU) 2023/2055

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