当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q599.グリーン調達基準書の改定(ハロゲンフリー対応追加)対応について

2021年06月04日更新

【質問】

顧客からグリーン調達基準書の改定版が送られてきました。 改定項目にハロゲンフリーがありますが、顧客の説明も曖昧です。 どのように対応すべきかを教えてください。

【回答】

ハロゲンとは元素周期表の17族に属する元素の総称で、具体的にはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)の5つの元素が「ハロゲン族元素」で、これらを含む化合物がハロゲン化合物です。

ハロゲン化合物は、電子機器に使用されるケーブル類の外被材や絶縁材や筐体、プリント基板のモールド等に使用されているプラスチック類の難燃剤として添加されることが多く、臭素系難燃剤や塩素系難燃剤が代表格です。


1.法規制の状況

難燃性プラスチックの代表的なものには、臭素系難燃剤を添加したプラスチックや、「塩ビ」と呼ばれる塩化ビニル樹脂があります。 それらに含まれる臭素系難燃剤の一部には焼却の際に有毒なダイオキシンを生成するものがあるため、大手のセットメーカー等ではグリーン調達の一環としてハロゲンフリーを要求する流れが大きくなりつつあります。 しかし、現状では「ハロゲンフリー」という言葉の定義は明確には決まっていない状況で、ハロゲンフリーの規格を定めている法規則は見当たりません。


ただし、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤については、新たな規制の動きがあります。 それがErP指令(欧州委員会のエコデザイン指令 (2005/32/EC))です。


ErP指令は、製品別のエコデザイン要件として、従来はエネルギー消費量等に関する要件が定められていましたが、2019年12月に6種の製品種(冷蔵機器、照明機器、ディスプレイ、家庭用食器洗浄器、家庭用洗濯機・洗濯乾燥機、商品販売・展示用冷蔵機器)のエコデザイン要件を定めた委員会規則がEU(欧州委員会)官報で公示され、新たに資源効率等に関する要件が追加されました。 その要件の一つに「筐体やスタンドへのハロゲン系難燃剤の使用禁止」があります。 2021年3月1日から適用されていますので、対象となる機器をEU域内で上市される場合には要件に対応する必要があります。 詳細は当サイトコラム等1)2)をご参照ください。


2.業界団体のハロゲンフリー規格

上述の通りハロゲンフリーに世界共通の定義はなく、メーカによって定義や基準値などが異なる場合があるのが現状です。 ただし、プリント基板等のハロゲンフリー規格については、いくつかの業界団体等が業界基準として定めています。


(1)JPCA(一般社団法人日本電子回路工業会)

JPCAは電子回路工業および関連産業の統計調査事業や標準化事業などを行っている団体です。JPCAではハロゲンフリープリント基盤の規格として種類別にPCA-ES01~ES063)という規格で定められています。

(2)IEC(国際電気標準会議)

IECは電気工学、電子工学、および関連した技術を扱う国際的な標準化団体です。IEC 61249-2-21 (プリント基板と他の相互接続構造体材料のハロゲンフリーの規格)でハロゲンフリープリント基板の規格を定めています。


(3)IPC (米国電子回路協会)

IPCは、電子機器と部品の組立要件と製造要件の標準化を目的とする事業者団体です。 IPC 4101B(主に電気および電子回路の硬質または多層プリントボードに使用されるベース材料の規格)でハロゲンフリープリント基板の規格を定めています。


いずれもハロゲンフリーとみなされる閾値として以下の含有限界濃度を定めています。 電気電子業界でハロゲンフリーという場合には臭素と塩素の2種類の元素の非含有を指していることが一般的のようです。


塩素(Cl)含有率:0.09wt%(900ppm)以下

臭素(Br)含有率:0.09wt%(900ppm)以下

塩素(Cl)及び臭素(Br)含有率総量:0.15wt%(1500ppm)以下


プリント基板を製造する業界では、従来はRoHS指令への対応でPBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)といったRoHSで規制されたハロゲン系難燃剤を含まないモールド樹脂を使用していましたが、現状では更に環境影響が少ないハロゲンフリー樹脂への代替えが進んでいるようです。


以上の通りハロゲンフリーの定義については世界共通の基準は定まっていないなかで、一部の製品カテゴリーには使用禁止を義務付ける法規制が施行されている状況であり、今後は更に使用制限の流れが広がる可能性は否定できません。 ご質問にありますハロゲンフリーの定義が曖昧な取引先においては、自社としての管理基準を決定する根拠が見当たらず決めかねている可能性が考えられます。


また近年では問題となるハロゲン元素を含まない難燃剤の代替品が上市されています。 今後のハロゲンフリー化の動きが広がる可能性を考えれば、早期に代替品への移行されることが貴社にとって望ましい対応であると考えます。

 

参考資料

1)当サイト2019年12月26日付けコラム

RoHS指令の制限対象候補物質の検討状況(その2)

https://www.tkk-lab.jp/post/rohs20191226


2)中小企業基盤整備機構運営サイト(Jnet21)FAQ

ErP指令でディスプレイに使用が禁止された「ハロゲン化難燃剤」の対象物質を教えてください

https://j-net21.smrj.go.jp/qa/development/Q1378.html


3)JPCA-ES01~ES06(ハロゲンフリープリント基板規格)(一般社団法人日本電子回路工業会)

https://jpca.jp/standards/

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