top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q609.EUとイギリスに防臭剤をそれぞれ輸出した場合の申請方法について

2021年10月01日更新

【質問】

防臭剤をEUに輸出したいと考えています。 イギリスとEUでは別々に申請する必要があるのでしょうか。 概略の申請費用も教えてください。

 

【回答】

1.用語の定義について

防臭剤などの定義を、厚生労働省は「安全確保マニュアル作成の手引き」(*1)の一つの「家庭用芳香・消臭・脱臭・防臭剤安全確保マニュアル作成の手引き」(*2)で次としています。


・芳香剤:空間に芳香を付与するもの

・消臭剤:臭気を化学的又は感覚的作用等で除去又は緩和するもの

・脱臭剤:臭気を物理的作用等で除去又は緩和するもの

・防臭剤:他の物質を添加して臭気の発生や発散を防ぐもの


厚生労働省の定義の「防臭剤」は、強い香り成分で元の臭いをマスクするものです。 この場合は、その香り成分が1トン以上であれば、REACH規則の登録対象となります。


例えば、汗の成分を分解する細菌を殺菌する防臭剤の場合は、厚生労働省でいう「消臭剤」になります。 EUではBPR(殺生物製品の市場における利用及び使用に関する欧州議会及び理事会規則(EU)No.528/2012)(*3)の「消毒剤」(Disinfectants)に相当して、規制対象となる可能性があります。


輸出するときのInvoiceでは用語により規制が変る場合があります。


2. BPRの消毒剤に相当する場合

消毒剤の場合は、BPRに適合させなくてはなりません。


UKは2021年1月1日(EU時間)にEUから完全離脱をしました。 従って、UKとEUは別の国・地域で、それぞれの国・地域の定める法規制を遵守する必要があります。


UKは1973年にEC(当時)に加盟し、以降50年近くEU法を国内法化していましたので、すべて1月1日にUK独自の国内法は制定できなく、多くはパッチ当て的な修正法(*4)で運用しています。


2020年12月31日までは、EU法による国内法で運用し、以降は順次新国内法を制定するとし、その間はEU法の部分修正をした国内法で運用します。

しかし、2021年1月1日以降は、EUの法改正は直接反映しませんので、徐々に乖離していきます。


EU BPR及びイギリス(以下UK) BPRの要求に適合させなくてはなりません。 なお、UKはGB(Great Britain)(*5)と北アイルランド(NI)(EU法を適用)(*6)で法規制が異なりますので留意しなくてはなりません。


EU BPRとGB BPRの基本構成は同じですが、主管部署がECHAとHSE(Health and Safety Executive)が異なることや、活性物質リストや95条リストの収載物質が乖離していく可能性があります。

GB BPRのガイドのページ(*7)で確認する必要があります。


3.費用について

EU及びGBに登録(承認、認可)する必要があります。

費用は活性物質の承認から行うのか、95条リスト(活性物質のサプライヤリスト)の収載物質による製品製造の認可だけを行うのか、ケースによって異なります。


EUの場合は、料金規則((EU)No.564/2013)(*8)があります。


GBの場合はHSEのWeb(*9)で公開しています。


4.その他

EU及びGBに申請する場合は、試験データなどを取り揃えて、代理人により手続きをします。


代理人は、貴社保有データのギャップ調査をして、不足するデータの準備を要求します。 この貴社保有データ以外の必要データで費用が発生します。


代理人の費用も掛かりますので、複数の代理人による相見積もりをとることが肝要です。


引用

*1:http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/katei/kateiindex.html

*2:http://www.houkou.gr.jp/criterion/pdf/manyuaru02.pdf

*3:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32012R0528

*4:https://www.hse.gov.uk/biocides/brexit.htm

*5:https://www.legislation.gov.uk/uksi/2001/880/contents/made

*6:https://www.hse.gov.uk/biocides/northern-ireland.htm

*7:https://www.hse.gov.uk/biocides/index.htm

*8:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A32013R0564

*9:https://www.hse.gov.uk/biocides/fees.htm

閲覧数:433回

最新記事

すべて表示

2023年09月22日更新 【質問】 塗料へ保存中にカビの発生を防ぐための抗菌剤(活性物質)を使用します。 対象の塗料に添加する抗菌剤は欧州BPRにおいて未認可で、最終製品である塗膜にも残渣として微量に残留します。 このような場合どのような扱いになるでしょうか。 【回答】 ご質問のように塗料の保存性を高めるために抗菌剤(活性物質を)添加している場合、その塗料は「処理された成形品」として欧州殺生物性

2023年09月01日更新 【質問】 安衛法第31条の2において注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大としてSDS等による通知の義務対象物の製造・取扱設備も対象とあります。 冷却油や潤滑油を使用している工作機械も対象になるのでしょうか? 【回答】 令和4年2月24日に「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について(基発0224第1号)(*1)」という通達が公表されまし

2023年08月24日更新 【質問】 ストックホルム条約の締約国会議にて同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された物質は、その後どのくらいで化審法での規制がはじまるのでしょうか? 【回答】 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants:以下POPs条約)の締約国会議にて、同条約の附属

bottom of page