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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q613.TSCA PBT 5物質の非含有証明方法について

2021年12月10日更新

【質問】

プラスチック製の子供向けの車のおもちゃを製造しています。アメリカの輸出先よりTSCA PBT 5物質の非含有証明を求められました。材料メーカーに確認したところ意図的含有は無いが、非意図的含有ゼロの証明は難しいと言われました。実際、どのように対処すれば良いのでしょうか。

 

【回答】

ご質問のTSCA PBT 5物質は、2021年に有害規制物質法(TSCA)の第6条に基づき官報公示された最終規則(1)により規制される以下の5つの物質を指すものとして回答します。


・デカブロモジフェニルエーテル:DecaBDE(CAS番号1163-19-5)

・リン酸トリアリールイソプロピル化物:PIP (3:1)(CAS番号68937-41-7)

・2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール:2,4,6-TTBP(CAS番号732-26-3)

・ペルクロロブタ-1,3-ジエン:HCBD(CAS番号87-68-3)

・ペンタクロロベンゼンチオール:PCTP(CAS番号133-49-3)


上記の5物質のうち2,4,6-TTBPとPCTPには、それぞれ規定濃度の設定があるため、規定濃度以下となることを機器分析などで確認することにより、規則を遵守していることを示し、顧客からの非含有証明要求へ対応することが可能と考えられます。


一方で、他の3物質(DecaBDE, PIP (3:1), HCBD)については、規則に規定濃度の設定がありません。 ご質問にある通り、厳密な非意図的含有ゼロの証明は難しいものと考えられます。貴社の対応においては、意図的含有がないことを示した上で顧客からの非含有証明に対応することが現実的と思われます。


そのためには、「機器分析」や「意図的に対象物質を含有しないことを示す手順書や基準」などで問い合わせを受けた際に説明できる「証拠書類」や「管理状態」を収集する仕組みを構築して保証する必要があります。


◆機器による分析

TSCA PBT 5物質については、含有に関する分析を受託する機関がいくつか確認できます。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)、液体ガスクロマトグラフ質量分析計(LC/MS)などを用いた分析です。 それぞれの物質で定量下限値が存在するため、分析結果は含有ゼロの証明とはなりませんが、検出限界値以下として、非含有証明について説明するうえでの証拠書類として活用することが可能と考えられます。


◆対象物質を含有しないことを仕組みで保証する手順書や基準の整備

PBT 5物質のような規制物質に関する非含有証明に対し、「設計時に対象物質の含有について基準を設定する」「工程内でコンタミなどが混入しない手順」など仕組みにより管理状態で保証していくことが考えられます。


対象物質の含有に関する基準設定については、例えば、RoHS(Ⅱ)指令における整合規格となるEN IEC 63000:2018の引用規格であるIEC 62474データベースのDSL(Declarable Substance List)の記載(2)に基づくことなどが考えられます。 DSLは電気電子部品に適用される法規制に適用される物質を収載基準としていますが、アメリカも含む世界的な法規制物質に対応した内容となります。


製造工程内の手順や材料メーカーの管理状態については、経済産業省が発行している「製品含有化学物質管理ガイド」(3)などを参考とできます。


また、情報伝達ツールとして「ChemSHERPA」を導入することも有効な方法の一つとなります。


管理状態を保証する仕組みは必ずしも新たに構築する必要がなく、例えば、貴社にISO9001などの品質マネジメントシステムが存在する場合、これらの基準や手順を組み入れていくことで対応が可能となります。


仕組みにより有害化学物質の非含有証明をする場合、最終責任者は「品質管理の最高責任者となります。 ただし、仕組みの構築は会社全体で行うことになりますので、仕組みによる化学物質管理について、自社の経営陣の理解を深めていくことも重要と考えられます。


(1)


(2)


(3)

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