当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

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Q614.物流関連のモジュール製品のHACCP対応について

2022年01月14日更新

【質問】

当社は物流関連のモジュール製品を製造しています。 今回、食料品の物流関連の顧客より引き合いがあり、HACCP対応を求められました。RoHS/REACHについては遵守しています。 RoHS/REACHに対応していることで、HACCPにも対応できているか教えて下さい。


【回答】

1.HACCPとは

HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、食品業界における製品の安全性を確保するための衛生管理の手法です。 HACCPでは、例えば、食中毒を引き起こす菌による汚染や、異物混入などの危害(ハザード)リスクを分析した上で、原材料の入荷から製品の出荷までの全工程において、ハザードの要因を除去もしくは低減できるようコントロールして管理します。HACCPは、もともと国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格委員会(コーデックス委員会、Codex Alimentarius Commission)から発表されたもの1)です。 日本においては、平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部改正により、すべての食品等事業者を対象として、これまでの主に微生物等を対象とする一般的衛生管理に加え、物理的あるいは化学的危害要因も含めたHACCPに沿った衛生管理が制度化され、令和3年6月1日に完全施行されました。


2.HACCPに沿った衛生管理

厚生労働省のHACCPの制度化に関する資料2)では、HACCPに沿った衛生管理に関する基準として以下の8つが挙げられています。


(1) 危害要因の分析

(2) 重要管理点の決定

(3) 管理基準の設定

(4) モニタリング方法の設定

(5) 改善措置の設定

(6) 検証方法の設定

(7) 記録の作成

(8) 小規模営業者等への弾力的運用


このうち(1)~(7)はコーデックス委員会によるHACCPの7原則に対応しています。

HACCPでは、原材料の入荷から製造した食料品の出荷までの全体にわたり、衛生管理において何が危害の要因になるのか、重要な管理ポイントを含めて計画を策定し、その計画をモニタリング、記録し、工程管理を行うことが求められます。


令和3年6月1日より、すべての食品等事業者(食品の製造・加工、調理、販売等)が衛生管理計画を作成することが求められるようになりました。

大規模事業所、と殺場(と殺場設置者、と殺場管理者、と畜業者)、食鳥処理場(食鳥処理業者)に対してはHACCPに基づく衛生管理が義務付けられ、小規模な営業者等に対してはHACCPの考え方を取り入れた衛生管理が義務付けられました。 HACCPに基づく衛生管理のための業種別の手引書3) 、また、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための業種別の手引書4) が厚生労働省のサイトからダウンロードできます。


3.物流関連のモジュール製品のHACCPへの対応について

HACCPは、指定された有害物質の非含有を要求する化学物質管理法令ではなく、食品等事業者に対して、自社製品および加工品の安全性を確保するための工程管理の仕組みの整備を要求するものです。 つまり、HACCPに直接対応しなければならないのは、物流関連のモジュール製品を製造している当社ではなく、その顧客である食料品を取り扱う事業者側となります。 しかしながら、当社製品が、食品または添加物の製造・加工・調理・運搬・貯蔵・販売といった工程において、食品衛生上の危害を発生させ得る要因(危害要因)になり得る場合は、何らかの対応が食品等事業者である顧客より求められるでしょう。 例えば、以下のケースが考えられます。


A: 顧客は当社製品を食品が直接接触する方法で使用する

例. 食品をカット、ミンチする機械

B: 顧客は当社製品を食品が直接接触しない方法で使用する

例. 包装後の製品の移動コンベア

C: 顧客は当社製品を工場の環境・インフラ設備として使用する

例. 除湿装置


まず、Aの場合は、当社製品が、「冷凍食品製造事業者向けHACCPに基づく衛生管理のための手引書5) 」に施設・設備について実施すべき事項として挙げられている以下の対応ができる必要があります。


【機械、器具及び搬送設備全般】

・分解して容易に清掃、洗浄、消毒のできる構造である。

・メンテナンス(始業時点検、終業時点検を含む)のし易い構造である。


【機械、器具及び搬送設備の食品に接触する面】

・平滑である。

・耐腐食性かつ不浸透性である。

・傷のつきにくい金属や合成樹脂等からなる。

・耐水・耐油性、耐寒・耐熱性、耐酸・耐アルカリ性である。

・塗装を施していないものである。

・磨耗しにくい構造である。


次にBについては、通常では食品に接触することはありませんが、異常時に接触する可能性を考えて、HACCP対応、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)、ポジティブリスト制度に適合した樹脂の採用など、すなわちAと同様の対応が必要となります。 Cについては、工場を汚染するリスク管理が必要となります。


4.ポジティブリスト制度とは

食品衛生法等の一部改正により、食品用器具・容器包装にポジティブリスト制度が導入され、令和2年6月1日に施行されました6)。 ポジティブリスト制度とは、合成樹脂を対象とし、食品用器具と容器包装には安全性を評価した物質のみが使用できるという制度で、原材料だけでなく、製造設備等からの有害物質の非意図的含有を防止することを目的としています。 つまり、食品等事業者に使用される製品に対しては、異常時も含め、食品接触面の合成樹脂には、ポジティブリストに収載されている物質のみが使用されていることを保証することが要求されるでしょう。(ポジティブリストは厚生労働省のサイト6) からダウンロードすることができます。) 当社は、食品用器具・容器包装を製造している事業者ではありませんが、当社製品が異常時も含め食品に接触する可能性がある場合は、製品に使用されている合成樹脂の製造者に対して、その合成樹脂がポジティブリスト制度に適合していることを確認する必要があるでしょう。 ただし、経過措置として、施行日(令和2年6月1日)より前から国内で流通していた器具・容器包装を構成する物質(合成樹脂の原材料となる基ポリマーと添加剤等)に関して、令和7年5月末までは、施行日より前に製造等の実績のある器具・容器包装に使用されていた物質に対し使用されていた範囲内で使用する場合は、ポジティブリスト適合7) とみなされます。


5.まとめ

EUに輸出する場合はRoHS/REACHの適合証明は非常に重要ですが、日本国内の食品等事業者に納入する場合はそれほどの意味はありません。 しかしながら、RoHS/REACHへの適合を仕組みで保証する考え方は、HACCPやポジティブリストへの対応でも重要です。つまり、国内の食品等事業者への当社製品の納入において、RoHS/REACH遵守だけでは、HACCPに対応していることにはなりませんがRoHS/REACHのためのマネジメントの仕組みはHACCPやポジティブリストへの対応にも利用できます。


【参考URL】

1)厚生労働省の「HACCP(ハサップ)」に関するWebサイト

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html


2)「HACCP(ハサップ)に沿った 衛生管理の制度化」

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000662484.pdf


3) 厚生労働省 「HACCPに基づく衛生管理のための手引書」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00002.html


4) 厚生労働省 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html


5) 一般社団法人 日本冷凍食品協会 「冷凍食品製造事業者向け

HACCPに基づく衛生管理のための手引書」(p.28)

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000808133.pdf


6) 厚生労働省「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05148.html


7) 厚生労働省「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について」

https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000635338.pdf


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