2022年04月01日更新
【質問】
弊社は国内の卸店、商社、小売店やネットで工業用油用洗剤を販売しています。販売時には原則として、JIS Z 7253に基づくSDSを添付し、ホームページでも公開しております。 構成成分は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや界面活性剤などの水溶液ですが、成分濃度は営業秘密で非公開としています。 顧客からEUの商社に4kg缶を10本ほどサンプル出荷するので、EU向けのSDSが要求されました。
日本のSDSとEUのSDSの違いを教えてください。
【回答】
EUにおけるSDS提供の義務については、REACH規則((EC) No. 1907/2006)の第31条から第36条(「サプライチェーンにおける情報」)に定められています。 SDSを提供しなければならない物質または混合物は以下のいずれかの条件に当てはまるものです。(REACH規則 第31条第1項)
(a) CLP規則に基づく危険有害性の分類基準を満たしている物質もしくは混合物
(b) REACH規則の付属書XIIIに記載の基準に基づき、PBT(難分解性、生体蓄積性、毒性)、または、vPvB(極めて高い難分解性、生体蓄積性)とされる物質
(c) (a)(b)以外の理由で、REACH第59条(1)に従って設定されたリスト(CLS)に含まれる物質
また、混合物がCLP規則に従って危険有害であると分類されない場合でも、以下の物質が含まれている場合には、受領者の要請に応じて、供給者はSDSを提供しなければなりません。(REACH規則第31条第3項)
(a) 個々の濃度が、気体ではない混合物の場合は1重量%以上、気体の混合物の場合は0.2体積%以上であり、人の健康または環境に害を及ぼす物質が少なくとも1つ以上
(b) 気体ではない混合物に関して、個々の濃度が0.1%以上であり、以下のカテゴリーに当てはまる物質が少なくとも1つ以上
・発がん性物質カテゴリー2
・生殖毒性カテゴリー1A, 1B, 2
・皮膚感作性カテゴリー1
・呼吸器感作性カテゴリー1
・授乳を介して影響がある物質
・付属書XIIIに定められた基準に基づいたPBT
・付属書XIIIに定められた基準に基づいたvPvB
・(a)に記載された理由(人の健康または環境に害を及ぼす)以外の理由により、第59条(1)に従って設定されたリスト(CLS)に収載されている物質
(c) EU域内における職場でのばく露限界値が存在する物質
そして、REACH規則第31条第4項には、一般消費者向けに提供または販売される危険有害な物質または混合物は、人の健康、安全、環境の保護についての必要な措置を講じることができるような十分な情報が提供されている場合には、川下使用者または販売者からの要請がない限り、SDSを作成する必要がないと定められています。
また、SDSに記載すべき内容は、REACH規則の第31条と附属書IIに説明されていますが、JIS Z 7253:2019と同様にGHSに準拠した以下の16項目があります。
1. Identification of the substance and of the company/undertaking (物質または混合物および会社情報)
2. Hazards identification (危険有害性の要約)
3. Composition/information on ingredients (組成および成分情報)
4. First-aid measures (応急措置)
5. Fire-fighting measures (火災時の措置)
6. Accidental release measures (漏出時の措置)
7. Handling and storage (取扱いおよび保管上の注意)
8. Exposure controls/personal protection (ばく露防止および保護措置)
9. Physical and chemical properties (物理的および化学的性質)
10. Stability and reactivity (安定性および反応性)
11. Toxicological information (有害性情報)
12. Ecological information (環境影響情報)
13. Disposal considerations (廃棄上の注意)
14. Transport information (輸送上の注意)
15. Regulatory information (適用法令)
16. Other information (その他の情報)
上記の各項目に記載すべき具体的な内容については附属書II(SDSの作成に関する要求事項)に細かく解説されています。物質または混合物の分類やラベルに関するものはCLP規則((EC) No 1272/2008)による規定が適用されます。
日本でもEUでも、SDSに関する規定はGHSに則っていますので、形式的には類似した内容になりますが、日本とは異なる点や注意すべき点などを以下に説明します。
(1) SDSに使用される言語
EUにおいては、物質または混合物が上市される加盟国の公用語でSDSを作成しなければなりません。具体的な言語については、ECHAのWebサイトに公表されています。
(2) 適用法令
SDSの第15項で記載されるべき適用法令は、当然ながらEUに適用されるものを記載しなければなりません。
(3) 混合物の成分
CLP規則で危険有害であると分類される物質、職場でのばく露限界値が設定されている物質、PBT物質、vPvB物質、CLS物質、内分泌かく乱物質などに関しては、以下の条件で、濃度または濃度範囲を記載しなければなりません。
(a)技術的に可能な場合、質量または体積の降順の正確なパーセンテージ
(b)技術的に可能な場合、質量または体積の降順のパーセンテージの範囲
濃度範囲を使用する場合に、混合物全体としての影響がわからない場合は、健康および環境に関する有害性は、各成分の最高濃度の影響を記述します。 混合物全体としての影響が入手可能な場合には、この情報から決定される分類を第2項に記載します。 また、CLP規則の第24条に従って代替化学名の使用が許可されている場合には、その名称を使用することができます。
(4) 営業秘密の取り扱い
SDSに記載が義務付けられた情報は機密情報として主張することはできません。ただし、GHSの附属書4(安全データシート (SDS) 作成指針)のA4.3.3項には、「成分に関する情報について、営業秘密情報(CBI)についての所管官庁の規則が製品特定の規則に優先される。該当する場合には成分に関する営業秘密情報が省略されていることを示すこと」と記載されています。
(5) ばく露シナリオ
REACH規則第14条第1項に定められていますが、年間10トンを超えて上市する場合は、化学物質安全性報告書(CSR)を作成する必要があります。 作成したCSRにばく露シナリオが含まれる場合は、そのばく露シナリオをSDSに添付しなければなりません(SDSの第16項(その他の情報)に記述)。 ばく露シナリオに関する要件はREACH規則 附属書 Iに定められています。
(6) UFIの記載
包装されていない混合物や、工業地で使用される混合物でラベルや包装にUFIが表示されていないものに関しては、SDSにUFIを記載しなければなりません。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
UFIとは、CLP規則で定められているunique formula idenifierという16桁のコードで、危険有害な混合物を含む製品に対して発行されるものです。 危険有害性があると分類された製品に関して、2025年までに、ラベルへのUFIの記載が義務化されています。
(7) 有害性情報として内分泌かく乱(ED)特性の記載が求められています。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
(8) 物質または混合物の情報として、特定濃度限界値(SCL)、M-ファクター、急性毒性推定値(ATE)がある場合は記載すべきとされています。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
ECHA(欧州化学品庁)より、”Guidance on the comilation of safety data sheet” というSDSに関する詳細な手引書が出されていますので、参考になるでしょう。
参考URL
・REACH規則((EC) No 1907/2006) 改正反映版
EUにおけるSDS提供の義務については、REACH規則((EC) No. 1907/2006)の第31条から第36条(「サプライチェーンにおける情報」)に定められています。SDSを提供しなければならない物質または混合物は以下のいずれかの条件に当てはまるものです。(REACH規則 第31条第1項)
(a) CLP規則に基づく危険有害性の分類基準を満たしている物質もしくは混合物
(b) REACH規則の付属書XIIIに記載の基準に基づき、PBT(難分解性、生体蓄積性、毒性)、または、vPvB(極めて高い難分解性、生体蓄積性)とされる物質
(c) (a)(b)以外の理由で、REACH第59条(1)に従って設定されたリスト(CLS)に含まれる物質
また、混合物がCLP規則に従って危険有害であると分類されない場合でも、以下の物質が含まれている場合には、受領者の要請に応じて、供給者はSDSを提供しなければなりません。(REACH規則第31条第3項)
(a) 個々の濃度が、気体ではない混合物の場合は1重量%以上、気体の混合物の場合は0.2体積%以上であり、人の健康または環境に害を及ぼす物質が少なくとも1つ以上
(b) 気体ではない混合物に関して、個々の濃度が0.1%以上であり、以下のカテゴリーに当てはまる物質が少なくとも1つ以上
・発がん性物質カテゴリー2
・生殖毒性カテゴリー1A, 1B, 2
・皮膚感作性カテゴリー1
・呼吸器感作性カテゴリー1
・授乳を介して影響がある物質
・付属書XIIIに定められた基準に基づいたPBT
・付属書XIIIに定められた基準に基づいたvPvB
・(a)に記載された理由(人の健康または環境に害を及ぼす)以外の理由により、第59条(1)に従って設定されたリスト(CLS)に収載されている物質
(c) EU域内における職場でのばく露限界値が存在する物質
そして、REACH規則第31条第4項には、一般消費者向けに提供または販売される危険有害な物質または混合物は、人の健康、安全、環境の保護についての必要な措置を講じることができるような十分な情報が提供されている場合には、川下使用者または販売者からの要請がない限り、SDSを作成する必要がないと定められています。
また、SDSに記載すべき内容は、REACH規則の第31条と附属書IIに説明されていますが、JIS Z 7253:2019と同様にGHSに準拠した以下の16項目があります。
1. Identification of the substance and of the company/undertaking (物質または混合物および会社情報)
2. Hazards identification (危険有害性の要約)
3. Composition/information on ingredients (組成および成分情報)
4. First-aid measures (応急措置)
5. Fire-fighting measures (火災時の措置)
6. Accidental release measures (漏出時の措置)
7. Handling and storage (取扱いおよび保管上の注意)
8. Exposure controls/personal protection (ばく露防止および保護措置)
9. Physical and chemical properties (物理的および化学的性質)
10. Stability and reactivity (安定性および反応性)
11. Toxicological information (有害性情報)
12. Ecological information (環境影響情報)
13. Disposal considerations (廃棄上の注意)
14. Transport information (輸送上の注意)
15. Regulatory information (適用法令)
16. Other information (その他の情報)
上記の各項目に記載すべき具体的な内容については附属書II(SDSの作成に関する要求事項)に細かく解説されています。物質または混合物の分類やラベルに関するものはCLP規則((EC) No 1272/2008)による規定が適用されます。
日本でもEUでも、SDSに関する規定はGHSに則っていますので、形式的には類似した内容になりますが、日本とは異なる点や注意すべき点などを以下に説明します。
(1) SDSに使用される言語
EUにおいては、物質または混合物が上市される加盟国の公用語でSDSを作成しなければなりません。具体的な言語については、ECHAのWebサイトに公表されています。
(2) 適用法令
SDSの第15項で記載されるべき適用法令は、当然ながらEUに適用されるものを記載しなければなりません。
(3) 混合物の成分
CLP規則で危険有害であると分類される物質、職場でのばく露限界値が設定されている物質、PBT物質、vPvB物質、CLS物質、内分泌かく乱物質などに関しては、以下の条件で、濃度または濃度範囲を記載しなければなりません。
(a)技術的に可能な場合、質量または体積の降順の正確なパーセンテージ
(b)技術的に可能な場合、質量または体積の降順のパーセンテージの範囲
濃度範囲を使用する場合に、混合物全体としての影響がわからない場合は、健康および環境に関する有害性は、各成分の最高濃度の影響を記述します。混合物全体としての影響が入手可能な場合には、この情報から決定される分類を第2項に記載します。また、CLP規則の第24条に従って代替化学名の使用が許可されている場合には、その名称を使用することができます。
(4) 営業秘密の取り扱い
SDSに記載が義務付けられた情報は機密情報として主張することはできません。ただし、GHSの附属書4(安全データシート (SDS) 作成指針)のA4.3.3項には、「成分に関する情報について、営業秘密情報(CBI)についての所管官庁の規則が製品特定の規則に優先される。該当する場合には成分に関する営業秘密情報が省略されていることを示すこと」と記載されています。
(5) ばく露シナリオ
REACH規則第14条第1項に定められていますが、年間10トンを超えて上市する場合は、化学物質安全性報告書(CSR)を作成する必要があります。作成したCSRにばく露シナリオが含まれる場合は、そのばく露シナリオをSDSに添付しなければなりません(SDSの第16項(その他の情報)に記述)。ばく露シナリオに関する要件はREACH規則 附属書 Iに定められています。
(6) UFIの記載
包装されていない混合物や、工業地で使用される混合物でラベルや包装にUFIが表示されていないものに関しては、SDSにUFIを記載しなければなりません。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
UFIとは、CLP規則で定められているunique formula idenifierという16桁のコードで、危険有害な混合物を含む製品に対して発行されるものです。危険有害性があると分類された製品に関して、2025年までに、ラベルへのUFIの記載が義務化されています。
(7) 有害性情報として内分泌かく乱(ED)特性の記載が求められています。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
(8) 物質または混合物の情報として、特定濃度限界値(SCL)、M-ファクター、急性毒性推定値(ATE)がある場合は記載すべきとされています。(2021年1月1日施行の(EU) No 2020/878による附属書IIの改訂)
ECHA(欧州化学品庁)より、”Guidance on the comilation of safety data sheet” というSDSに関する詳細な手引書が出されていますので、参考になるでしょう。
参考URL
・REACH規則((EC) No 1907/2006) 改正反映版
・CLP規則((EC) No 1272/2008) 改正反映版
・環境省, 国連GHS文書
・ECHA, ラベルおよびSDSに使用しなければならない言語
・SDSの作成手引書 ”Guidance on the comilation of safety data sheet” (Version 4.0, December 2020)
・CLP規則((EC) No 1272/2008) 改正反映版
・環境省, 国連GHS文書
・ECHA, ラベルおよびSDSに使用しなければならない言語
・SDSの作成手引書 ”Guidance on the comilation of safety data sheet” (Version 4.0, December 2020)
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