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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q627.特殊な岩石を使用した土壌改良剤のEUへの輸出について

2022年06月10日更新

【質問】

特殊な岩石を採掘し、粉体にして土壌改良剤として国内販売をしています。 EUに輸出することができるでしょうか。

 

【回答】

 EUでの土壌改良剤の製造、輸入等の取り決めは、REGULATION (EU) 2019/1009 1) (以下「本規則」と表記)に定められています。本規則では、EUにおける「肥料(Fertilising product)」への要求事項、及び製造者、輸入者等の義務が規定されています。

本規則においての「肥料(Fertilising product)」は、植物等への栄養効果を向上させるために使用される製品と定義づけされ、肥料、土壌改良剤、増殖培地、阻害剤等が含まれます。

以下に、本規則での貴社製品(岩石を粉体にした土壌改良剤)に関連する土壌改良剤(特に無機土壌改良剤)に関しての取り決めについて概説します。


【土壌改良剤に対する要求事項】

本規則での「肥料(Fertilising product)」に対する要求事項は第4条に規定され、附属書Ⅰに各カテゴリ(Product Function Categories:PFCs)別の要求事項が記載されています。土壌改良剤はカテゴリ3(PFC3)に分類され、「それが添加される土壌の物理的又は化学的特性、構造又は生物学的活性を維持、改善又は保護する機能を有するものでなければならない」とされています。


また、有機土壌改良剤と無機土壌改良剤に分けて個々に含有物質の制限があり、無機土壌改良剤は以下の物質について制限値を超えて含有してはならないと規定されています。

・カドミウム:製品1㎏当たり1.5㎎の乾燥物

・六価クロム:製品1㎏当たり2㎎の乾燥物

・水銀 :製品1㎏当たり1㎎の乾燥物

・ニッケル:製品1㎏当たり100㎎の乾燥物

・鉛:製品1㎏当たり120㎎の乾燥物

・無機ヒ素:製品1㎏当たり40㎎の乾燥物

・銅:製品1㎏当たり300㎎の乾燥物

・亜鉛:製品1㎏当たり800㎎の乾燥物


【製造者、輸入者の義務】

EUで「肥料(Fertilising product)」を製造、輸入する事業者の義務は、本規則の第6条と第8条に規定されています。 製造者は、第15条及び附属書Ⅳで定められた適合性評価手順に従って実施する必要があり、輸入者は製造者が実施したことを確認する必要があります。 ここには、技術文書の作成、製造プロセスの監視、CEマーキング貼付け、EU適合宣言書の作成、等が定められています。


また、製造者が製品の包装に識別可能な製品番号やロット番号、登録商標、住所を記載すること(包装が無い場合は必要な情報が製品に添付された文書で提供されること)が義務づけられています。 製品表示の要件(Labelling requirements)は附属書Ⅲに詳細が記載されています。


【石灰材料に対する要求事項】

前項までに、本規則での土壌改良剤(特に無機土壌改良剤)に対する要求事項、製造者・輸入者の義務について述べました。石灰材料(土壌の酸性度を中和する)に対する要求事項についても附属書Ⅰのカテゴリ2(PFC2)に規定があり、下記の物質について含有量の制限があります。 貴社の製品が石灰材料に該当する場合は、こちらをご参照ください。

・カドミウム:製品1㎏当たり2㎎の乾燥物

・六価クロム:製品1㎏当たり2㎎の乾燥物

・水銀 :製品1㎏当たり1㎎の乾燥物

・ニッケル:製品1㎏当たり90㎎の乾燥物

・鉛:製品1㎏当たり120㎎の乾燥物

・ヒ素:製品1㎏当たり40㎎の乾燥物

・銅:製品1㎏当たり300㎎の乾燥物

・亜鉛:製品1㎏当たり800㎎の乾燥物


【REACH規則】

天然に存在する物質(天然状態の化学元素や化合物)もREACH規則の対象となりますので、規則に準拠する必要があります。 許可や制限の対象物質が含まれていないか等の確認をして下さい。 但し、附属書Ⅴの7には化学構造が変化していない自然界に存在する物質(鉱物、鉱石、鉱石凝縮物、等)は第二条7(b)による登録義務の免除となる、との規定もあります。


1)REGULATION (EU) 2019/1009

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