top of page

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q629.カリフォルニア州経由で複数の州に製品を販売する場合の包装材に関する基準について

【質問】

カリフォルニア州を経由して複数の州に製品を販売します。包装材の基準は州ごとに違いがあるでしょうか。

 

【回答】

アメリカの法律には連邦法と州法があります。 包装材の規制についてはその内容により連邦法が主に適用される場合と州法が適用される場合があります。 連邦法が存在していても独自の州法により連邦法よりも厳しい規制が掛けられる場合もありますので、最終的には販売する各州の規制を確認する必要があります。


包装材の規制については、食品用包装材は主に連邦法、一般用は州法で規制されます。 食品用は、米国では食品と医薬品の安全は連邦保健福祉省(United States Department of Health and Human Services:HHS)が管理しており、連邦法である連邦食品・医薬品および化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic ACT:FD&C法)1)が適用されます。 FD&C法409条では「食品を製造、梱包、包装、輸送または保持するために使用される材料の成分として使用される物質」を食品接触物質(Food Contact Substance: FCS)と規定しています。 HHSの下部組織で医薬品や食品などの安全性・有効性の確保、公衆衛生への対応等を行っている食品医薬局(Food and Drug Administration : FDA)では、FCSを食品添加物として取り扱い、間接添加物(Indirect additive)と呼んでいます。連邦規則集(Code of Federal Regulation)21条 Food and Drug 2)の Part170~199には食品添加物の定義、安全性評価、承認申請、食品添加物リスト等の具体的な規則が定められています。 この中で、食品添加物の定義として「容器および包装の製造に使用される材料は、それが成分になること、または容器に詰められた食品の特性に直接的または間接的に影響を与えることが合理的に予想される場合、定義の対象となります」とされており、食品包装材等も食品添加剤として扱われることが示されています。 このように食品用包装材は連邦法により規制されますが、州法で独自の規則を設けている州もあります。 例えばカリフォルニア州ではProposition65でビスフェノールA(BPA)の規制が強化されており、使用する場合には警告文を表示する必要があります3)。 また、ワシントン州やメイン州ではPFASを規制する州法(ワシントン州では製造・販売・流通を、メイン州では販売を禁止)が成立しています4)5)。


その他の一般向け包装材については州法により規制されます。食品用包装材は、その中に含まれる有害物質が食品に移行し、直接口にすることによる健康被害を防ぐことが目的であるのに対して、一般包装材は廃棄による環境汚染を防ぐことが目的となり、規制内容も異なってきます。 その内容が州ごとにばらばらでは混乱を生じますので、基準の統一化を目的として、包装材規制のひな形法として「Model Toxics in Packaging Legislation」が作成されました。 現在このひな形法に基づいて州法を制定しているのは19州あります。 その内容としては、Sec.4で「製造業者、供給業者、または販売業者は、製造または流通中に非意図的に存在する量を超える鉛、カドミウム、水銀、または六価クロムが意図的に含有した包装材または包装材構成部材を販売または販売促進の目的で提供することはできない。 包装材中または包装材構成部材に非意図的に存在する鉛、カドミウム、水銀、または六価クロムの濃度レベルの合計は、100 ppm(0.01%)を超えてはならない。」となっています。 また、2021年2月の改正版6)ではフタル酸エステルおよびPFASが追加されました。 非意図的な含有の場合、フタル酸エステル類はその合計値で100ppmを超えてはならず、PFASについては、全ての条件で含有を認めていません。このひな形法の更新内容を州法に採用するかは各州の判断に委ねられており、販売予定地域の州法の改正動向を確認することが重要となります。

このひな形法のサイトでは、ひな形法に基づいて包装法を制定している主な州の州法を紹介していますので参考にすることができます7)。


(参考リンク)

1)連邦食品、医薬品および化粧品法(FD&C法)Federal Food, Drug, and Cosmetic Act

https://www.fda.gov/RegulatoryInformation/LawsEnforcedbyFDA/FederalFoodDrugandCosmeticActFDCAct/default.htm


2)連邦規則集(Code of Federal Regulation)21条 Food and Drug

https://www.ecfr.gov/current/title-21/chapter-I/subchapter-B


3)OEHHA Bisphenol A (BPA)

https://www.p65warnings.ca.gov/chemicals/bisphenol-bpa


4)ワシントン州の特定食品包装の規制法

Title 70A ENVIRONMENTAL HEALTH AND SAFETY

https://app.leg.wa.gov/rcw/default.aspx?cite=70A.222.070


5)メイン州の包装中の有毒化学物質をさらに削減することにより環境と公衆衛生を保護する法律

An Act To Protect the Environment and Public Health by Further Reducing Toxic Chemicals in Packaging

https://www.mainelegislature.org/legis/bills/display_ps.asp?ld=1433&PID=1456&snum=129


6)包装法における毒性モデル規制

Model Toxics in Packaging Legislation

https://toxicsinpackaging.org/model-legislation/model/


7)包装法モデル規制に基づく各州の州法

https://toxicsinpackaging.org/state-laws/state-laws/

閲覧数:1,295回

最新記事

すべて表示

2023年09月22日更新 【質問】 塗料へ保存中にカビの発生を防ぐための抗菌剤(活性物質)を使用します。 対象の塗料に添加する抗菌剤は欧州BPRにおいて未認可で、最終製品である塗膜にも残渣として微量に残留します。 このような場合どのような扱いになるでしょうか。 【回答】 ご質問のように塗料の保存性を高めるために抗菌剤(活性物質を)添加している場合、その塗料は「処理された成形品」として欧州殺生物性

2023年09月01日更新 【質問】 安衛法第31条の2において注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大としてSDS等による通知の義務対象物の製造・取扱設備も対象とあります。 冷却油や潤滑油を使用している工作機械も対象になるのでしょうか? 【回答】 令和4年2月24日に「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行について(基発0224第1号)(*1)」という通達が公表されまし

2023年08月24日更新 【質問】 ストックホルム条約の締約国会議にて同条約の附属書A(廃絶)に追加することが決定された物質は、その後どのくらいで化審法での規制がはじまるのでしょうか? 【回答】 残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants:以下POPs条約)の締約国会議にて、同条約の附属

bottom of page