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当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。

法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家の判断によるなど、最終的な判断は読者の責任で行ってください。

  • 執筆者の写真tkk-lab

Q631.金属を加工した成形品に関するEUのREACH規則の義務について

2022年08月05日更新

【質問】

当社は金属を加工した成形品メーカーで、意図的放出物質も含有していません。 EUのREACH規則の義務はないと思っています。 間違いないでしょうか。

 

【回答】

意図的含有がない金属製品においては、特定の記録保存などの義務はないものの法令遵守の確認結果の証拠を記録することが望ましいとされています。


成形品ガイド(第4版)の4.1節「整形品から意図的に放出される物質」(1)では、成形品から物質の放出が意図的に行われ、放出した物質が成形品の副次的機能を満たす場合、その成形品は「意図的放出がある」とみなされると記載されています。

また成形品中に含まれる物質、混合物が「意図的放出」に該当するか否かについては、成形品の物質を特定するためにR EA C H規則7条、33条(2)による成形品中の物質の義務特定のための一般プロセスに記載されています。

ただし、意図的放出のない非含有証明も自主的な管理を求められます。


・証拠(証明書)の必要性

成形品の供給者が物質、混合物の使用者である可能性があるため、R E A CH規則36条に基づき少なくとも10年間は入手可能なエビデンスを集め、保存する必要があります。

年間1トン以下の輸出の製品においても、非含有、不使用の確認結果の証拠を保存することを強く推奨しています。


・意図的放出がない場合の義務について

意図的放出物質がない場合、登録の必要はありません、しかし、届出、情報伝達の対応は必要となります。


(1) 事業者あたりの製造・輸入量合計が年間1トンを超える

(2) C L S濃度が0.1wt%を越える

成形品中のC L Sが上記の条件を満たし、用途が登録されていない場合はREA C H規則7条に基づきE C H Aへ登録する必要があります。


CLSとは

CLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation)は、認可候補物質で、認可物質は認可を受けた者が認可を受けた条件でしか使えない、一般的には使用禁止物質の候補物質です。


(2)のC L S濃度が0.1wt%を越える場合は、R E A CH規則33条に基づき情報伝達を行うことが必要となります。


また、金属原料の加工のみではなく表面処理やグリスなどその他の材料を用いて加工、製造を行っている場合はR E A CH規則7条、33条に基づき成型品中にC L Sが0.1wt%含有していないかサプライチェーンへ確認を行い、情報伝達への対応が必要となります。


ご質問の回答としましては、金属を加工した成形品メーカーであり、意図的放出がないものにおいては、登録義務は生じないもののRE A C H規則への情報伝達は必要となります。

また、成形品にC L Sが0.1wt%以上含有していた場合は製造、輸出量が年間1トン未満の場合でもS C I Pへの登録を行うことが必要となります。


引用元

(1) 成形品に含まれる物質に関する要求事項のガイダンス(2017年6月 バージョン4.0)

https://echa.europa.eu/documents/10162/2324906/articles_en.pdf


(2) REACH規則((EC) No 1907/2006) 改正反映版

http://data.europa.eu/eli/reg/2006/1907/2022-05-01

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